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花火を仰ぎ見てみたい

浮世絵に描かれた昔の花火は、
想像以上に空の一番高い所にあって、

人が作り出した「仰ぎ見る光るもの」
として、
驚きと尊敬を込めて、
見上げる花火だったのでは?

きっと、人々の心も、
花火と一緒に、
夜空の高い、高〜〜いところへ、
一緒に翔んで行ったのでしょう。

みんなが顔をあげ、
夜空の上の方の一点を探し、
光る同じものを見たのでしょう。

それより高いところには、
お月様とお星様しか、
いなかったことでしょう。


歌川広重 名所江戸百景 両国花火



4年ぶりの隅田川の花火大会、
押し寄せた100万人の人々は、
夜空に何を観たのでしょう?

何か仰ぎ見たのいものが、
そこにあったのでしょうか?

見たかったのものは、
・夏らしさでしょうか?
・日本らしさでしょうか?
・それとも、みなで夜空を見てみたかった、
 のでしょうか?


今は、
誰も人間が作った最も高くまで行ったもの、
としては、花火を見ていないのでしょう。

隅田川の河岸では大勢の人々が、
今か今かと、夜空を眺め、

おそらく「この辺りに」花火は上がるだろう…、
きっと見えるはずだろう…、
と、辺りをつけている様子。

でも、
おそらく想定していた高さよりも、
案外低い位置が花火の到達点で、

見物客の中には、
音はすれども姿が見えない、
「えっつ、どこ?」見えな〜い。
という声も上がっていたようです。

人々が、
息を止め、
夜空を見上げ、
心ひとつに仰ぎ見た、
あの感じは、
花火のように世界から消えてゆき、

想定していた高さに見えるのは
ヘリコプター、

横には、
まるで抱きつこうとする子猫を、
微笑ましく見下ろす飼い主のように、
すっくとそびえ立つスカイツリー。

今、上を探しても、
そこには花火は見えないのかもしれない…。

花火は、
心の中か、スマホの中で、光って消えるもの、
に姿を変えつつあるのかも知れない。

あるいは、
もっと高く上がる花火を作る人が、
出てくるかも知れない…。


そんな気持ちと、
寄ってくる夏の蚊を、
やんわりと振り払うように、
団扇で仰ぐ、
今宵の隅田川かなぁ。


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