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あのとき、森が揺れていたような…、

BGM用 YouTubeの画面が映し出す、
森の樹々の映像から、
なんだか風が吹いたような気がして、
すっかり忘れていたあの空気を想い出した。

過ぎ去った過去は、消えたのではなく、
バラバラな粒子となって、
どこかで風に舞っているのかも知れない。

あれは、中学生の頃だったかなぁ、

ある日、登校すると、
美術の教科書に載っている様々な絵画が、
長い廊下にたくさん貼り出されていて、
100枚ぐらいあっただろうか…、
朧げにしか覚えていない。

そのたくさんの絵の中で、
どの絵が良いと思うか?を、
学生たちみんなで投票した。

それを企画したのは美術の先生、
名前は忘れてしまいましたーーー、
スミマセン。

印象に残っているのは、
学生たちからは、
あまり人気があったとは言えない、
ほぼ坊主頭の先生の姿。
でも多分、良い先生。

逆に人気があった絵は、
本物に見まごう写実的な森の絵。
ある意味、とてもわかりやすい絵が、
抽象画の票を押さえて圧倒的に人気があった。


先生は何を知りたかったのだろう?

・思春期の感性?
・その時代の学生たちの、美意識?
・数学や英語もいいけれど、
 美術にも興味を持ってもらいたかった?
・学生たちと繋がりたかった?
・何かを掴もうとしていた?
・理解しようと感性の数値化を試みた?
・もしかして、「いいね」の先駆け?


一番人気だった本物の様に描かれた森の絵、
その木の枝は、

まるで風に揺れている様にも見え、
学生たちは時代の風に揺れている様にも見え、

思春期のアンバランスの中で揺れ、
学生と教師の関係も揺れ、

あのとき、
先生も、学生も、あの樹も、時代も、
みんなそこにいたけれど、
ただ風に揺れているだけだった様な…。

答え?

答えなんて……、

あの時だって、誰も語らなかった。



私の記憶の枝も、
あれから過ごしてきた様々な風に揺れ、

今となっては、
記憶なのか、それとも気配なのか、
境目が、おぼろ……、

頭の中で森が風に揺れるだけ。

記憶の粒子は風の中で漂っているのか

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