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「デジタル看護入門」第13回 〜人工呼吸器とICT〜

 前回は、呼吸の観察に関する医療機器を解説してきましたが、今回は、おそらく看護師さんが一番苦手とする医療機器である「人工呼吸器」です。なぜ苦手なのか、それは人工呼吸器の種類や機能がとても多く、さらにICT技術の進化により、どんどん人工呼吸器もバージョンアップされているからです。進化が遅い医療機器も紹介してきましたが、人工呼吸器に関しては、進化がとても速い医療機器のひとつです。

 人工呼吸器は、呼吸不全の患者さんへ使用されます。人工呼吸器を使用する目的は、呼吸の状態を改善することと、呼吸の負担を減らすことです。人工呼吸器には、胸郭外陰圧式と気道内陽圧式の2種類があり、現在、メジャーな人工呼吸器は気道内陽圧式になります。これは、文字通り、人工呼吸器から患者さんの口元に陽圧のガスを送り、この圧力によって肺を膨らませる方法です。

 前回、呼吸状態のみを観察できる医療機器は少ないとお話ししましたが、この人工呼吸器に関しては、全くの例外です。患者さんに、より適切な人工呼吸を行っていくには、まずその人工呼吸器の機器そのものが、しっかりと患者さんの呼吸状態を把握する必要があります。そして、その状態に合わせた人工呼吸を機器が行っていきます。

 たとえば、人工呼吸器は、「強制換気」という、換気量や圧力、呼吸回数などを人工呼吸器でセッティングして、呼吸を人工呼吸器におまかせするモードがあったり、「補助換気」という、患者さんの自発呼吸を保持しながら、人工呼吸で補っていくモードもあります。自発呼吸がない患者さんは「強制換気」から開始し、自発呼吸が出てきたら「補助換気」にモードをかえて、少しずつ、人工呼吸器からの離脱を目指していくときも、患者さんの呼吸状態を細かく人工呼吸器が把握し、それに合わせた人工呼吸を行っていきます。

 呼吸回数、1回換気量、肺活量、最大吸気圧など、おおよそ人間では正確に観察できない項目を機械で観察しながら、リアルタイムで適切な人工呼吸管理を行うことができる人工呼吸器は、より高性能に、よりコンパクトになっています。現在では、集中治療室だけでなく、在宅でも、人工呼吸器が使用できるようになりました。今後も最新のICT技術とともに、人工呼吸器もどんどん進化をしていくことでしょう。(看護師さんたち、頑張って!)

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