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いまいちマイナー

小説修行の為に西へ西へと延暦寺を目指し、拳を鍛えるようと山籠もりを決行すること二か月。
丸太ん坊のような腕で樫の木を突いていると山の神が現れ

「多分だけど、小説の修行ってそういうことじゃないと思う」

と言われたのがきっかけで一般生活圏に戻って来た私こと、大枝です。

今回ちょっと思ったことがあったので何となく書くので、読者諸君はハナクソでもほじりながら、何ならスマホンやモニターにピッとくっつけちゃって「くっついちゃった!」とマギー審司のようにおどけてみたりしながら、読んで欲しい。

ところでみなさん、ビリー・コーガン率いるスマッシング・パンプキンズをご存知だろうか?
高め声のボーカルが禿げていて、ギターがジュディマリの人?と勘違いしがちだが別人で、ドラマーがめちゃくちゃ凄くて、ベースがやたら変わりがちな、あのスマッシング・パンプキンズである。

アルバムを出せばぶっとんだ曲数でお届けしたり(33曲とか)、打ち込みにチャレンジしつつも結局元のバンドスタイルに戻ったり、解散したかと思えば近年ちゃっかり復活していたり、何かと精力的なバンドとして有名だ。

80年代後半からメタルブームに中指を立てる暗い性格のバンド連中がふつふつと現れ、カート・コバーン率いるニルヴァーナを筆頭にグランジがメタルを圧倒してムーブメントを作り上げた(マスコミによって)のだが、そのムーブメントの中にいたバンドのひとつがスマッシング・パンプキンズだ。

カート・コバーンは自身の生涯や音楽界隈の先行きをずいぶん昔から予見していたようで、彼の言っていた通りグランジはその後やって来るヒップホップにムーブメントの座を譲り渡すことになる。
そして、カートはショットガンで頭を撃ち抜いた。グランジ、一貫の終わりである。

僕がバンドを始めた頃にはとっくにカート・コバーンは過去の人になっていて、日本ではAIR JAMの開催などで大盛り上がりしていたりした。
しかしながら当然のようにグランジに傾倒するバンドマンも多くて、ニルヴァーナのアルバムジャケットはファッションとしてTシャツになり、レッチリ(特にベーシストのフリー)に憧れを持つ者も多かった。

けれど、スマパン(スマッシング・パンプキンズ)が好きだ!というバンド仲間にあまり出会ったことがなかった。
サイアミーズ・ドリームのジャケットなんか当時の洋楽好きなら一度はレンタルショップで見たことあったと思うし(小さな女の子が頬を寄せ合っている微笑ましいジャケットだ)、音楽雑誌なんかにはしょっちゅうスマパンは登場していたはずなのに、何故かみんなスマパンを話題出すとリアクションがものすごーく、それこそサガミオリジナルの最高技術くらいに薄かったから不思議だった。

そんな風にちょっと悶々としていた高校時代、ドラゴンアッシュが「Grateful Days」を発表。
爆発的な売り上げを達成すると共に、僕にとっては物凄く嬉しい衝撃をもたらした。
イントロ頭のギターリフ。あのシンプルで美しいリフこそ、スマパンの曲からのサンプリングだったのだ。
元ネタとなった曲は「TODAY」という楽曲。みんなこぞって

「ドラゴンアッシュかっけぇよな」
「俺もケージェーになりてぇ!」
「やっぱラップ最強だよな」

なんて、うちの馬鹿高校男子は大盛り上がり。
馬鹿過ぎたのが悲しいかな、プール脇の水飲み場にはスプレーで

【DONGORA ASH】

とスペル大間違いの落書きがされる始末なのであった。
ドンゴラアッシュって何だよ。ゴンドラに乗ってラップすんのかよ。とか仲間うちで爆笑しつつ、僕はスマパンのことについて知っているかどうかをみんなに聞いてみた。
どっこい、みんな鳩が豆鉄砲を食らったあげくに生まれて初めて新宿に降り立った山育ちの田舎者のような顔つきで

「???????????」

と、返事をしていたのであった。
一応とても小さな布教活動をしたりもしたのだけれど、信者は一向に増えることがなかった。当時から僕の営業力が低いのも影響していたのだろう。

昨日、眠る前になんとなく聴きたくなってスマパンを聴きながら寝た。
特に好きなのは「SIVA」という曲で、ギターリフなんかはメタルムーブメントの香りを残しつつ、楽曲そのものはかなり独特の構成になっている。

※ドラムのジミー・チェンバリンは神様です


あらためてTODAYを聴いて、やっぱり名曲だよなぁと実感。


他にも名曲は沢山あるのだけれど、スマパンって曲の暖かさと冷たさが物凄く良いバランスで同居していると聴いていて感じるものがある。
ただ単に明るい・暗いのどちらか、という訳ではない部分がとにかく盛り上がりたい音楽仲間達には受け入れ難かったのかなぁなんて今さら思ったりもしていた。

ちなみに「TODAY」の出だしはこんな歌詞だ。

Today is the greatest
Day I’ve ever known

今日は今までにない最高な日だ。

と、言っているのだけれど、その後の歌詞を翻訳して行くと死に向かっているのだろうな、というのがなんとなく分かる。
曲はとても穏やかで暖かみさえ感じるのに、歌詞の内容はきっと死を選んだ人間の歌なのだ。
その冷たさや聴き手への裏切りみたいなものも魅力のひとつだなぁと僕は思っている。

もう生きることが嫌になるくらいの今日を過ごしてしまうと、人間というのはかえって諦めがついてしまうのかもしれない。
だって、みんながみんなそれをバネに出来るほど強くは出来ていないんだもの。

自死を肯定するつもりはないけれど、否定することもまた暴力的なのかもしれないと思いながら、スマパンをこれからもひっそり応援し続けようと思う大枝なのでした。

ちゃん、ちゃんっ!(小梅太夫)

スマパン復活前に組んでいた「ZWAN」というバンドの曲もとても良いので、ぜひ。


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