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古厩智之監督『まぶだち』(2001)【映画監督の初期作品】【動画未配信の映画】

  古厩智之監督と言えば、『ロボコン』始め、青春映画の達人と言っていい程、ほとんどの作品で観客の満足感が高く、安心して楽しめますし、見終わったあとに、爽快な気分やエネルギーを与えてくれます。

 そんな作風の古厩監督が、以前、『のぼる小寺さん』のcinemoreのインタビューの中で、近藤が握手をしなかったことに関して、冗談めかして、「同調圧力への抵抗」と答えた後に、「自我の芽生え」と付け加えていました。


これを見て思い出したのが、古厩監督作品の前述の特徴と異なり、終始不安定感に覆われている青春映画『まぶだち』(2001)です。


当時、映画館で初めて観たのですが、古厩監督の故郷長野県で撮影されたようで、その自然の美しさの中に実際いるような感覚になったのを覚えています。cinemoreのインタビューの中に、間や長回しの指摘もありましたが、この作品にも共通しており、個人的には、時が長く感じられた学生時代をうまく表現しているのではないかと思っています。


  この映画は、思春期の不安定の中にある、もう二度と戻ってこないかけがえのない瞬間や、大人(社会)への移行(服従)を強いられることに対する葛藤が、リアルに描かれています。

  サダトモの「クズでいいです」の発言から始まって、橋から飛び降りる周二の行動への展開は、友情だけでは守れない、同調圧力への抵抗や自我の芽生えへの古厩監督の鋭い表現だったのではないかと思います。

  この作品は、個人的に古厩監督の最高傑作だと思っているのですが、残念ながらVHSしか流通していないようで、また現在のところ動画配信もされていないようです。いろいろ理由があるのかもしれませんが、間違いなく名作なので、リバイバル上映など、多くの人に見てもらるようにしてほしいと思います。


【映画監督の初期作品】実力派監督の初期作品の中から、個人的に大好きなものを取り上げでいます。

  【動画未配信の映画】TSUTAYA渋谷のシネマコレクション(VHSコーナー)にあるような、動画配信がほとんどされていない名作の中から、個人的に大好きなものを取り上げています。

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