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【特選映画】Amazon primeで楽しむドイツ映画①

※この記事の情報は、2021年6月現在のものです。ただ、ここに紹介する映画は、定期的にprime会員特典になるものを中心に取り上げました。

フランス映画祭、イタリア映画祭、ラテンビート映画祭(スペイン)、トウキョウノースライツフェスティバル(スウェーデン、デンマークなど)、フィンランド映画祭など、毎年のようにヨーロッパ主要各国の映画祭が国内で開催されていますが、ドイツ・ベルギー・オランダなどの映画は、少し日本での売り込みが少ないように感じます。ベルギーは、ダルデンヌ兄弟、オランダは、ポール・ヴァーホーヴェンなどの有名監督がいます。(現在、ポール・ヴァーホーヴェン監督のオランダ制作の『ブラックブック』が、prime会員特典で視聴できます。)

そして、特にドイツ映画は、戦前には、多くの記念碑的な作品を産み出し、戦後も、ニュー・ジャーマン・シネマの隆盛があり、ヴィム・ヴェンダース監督やウォルフガング・ペーターゼン監督などを輩出しています。ただ、90年代に入ると、もちろん優れた作品は、日本でもいくつか公開されていますが、やはりヨーロッパ映画の中では、存在感が薄くなっているような気がします。

この記事では、ドイツ映画史を簡単に遡りながら、アマゾンプライムで見れるおすすめ作品をいくつか挙げたいと思います。


ドイツ映画史

映画のサイレント映画期には、『カリガリ博士』(1920)や『メトロポリタン』(1927)などのホラー映画(サイコスリラー)やSF映画(ディストピア)の原型とも言える金字塔的な作品がドイツから多く生まれました。

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『カリガリ博士』については、現在、プライム会員特典で視聴できます。やはり、初期の映画というのもあって画質が悪く内容が映像だけだと分かりにくいところがありますが、ドイツ表現主義の代表的な作品でもあり、またサイコスリラーの原型と呼ばれるだけあって、観る側を不安にさせる効果を充分に感じることができます。また、脚本が優れていて、サイレント映画なので、逆に活字によるナレーションがあり、充分内容を把握することができます。クリス・マイケル『ラ・ジュテ』(1962)の音声によるナレーションのような雰囲気が少し感じられます。オチは、『未来世紀ブラジル』や『ジョーカー』などと、同じもので、当時は特に画期的なものだったと想像します。

そして、戦後は、ヌーヴェルヴァーグの影響を受けた、ニュー・ジャーマン・シネマ と呼ばれるアートフィルム志向のドイツ映画の隆盛期が訪れます。『フィツカラルド』(1982)などのヴェルナー・ヘルツォーク監督、『ブリキの太鼓』(1981)などのフォルカー・シュレンドルフ監督、 『ベルリン 天使の詩』(1987)などのヴィム・ヴェンダース監督などが次々に登場しました 。フォルカー・シュレンドルフ監督(『レジェンド・オブ・リタ』など)やヴィム・ヴェンダース監督(『誰のせいでもない』など)の2000年以降の映画は、プライム会員特典によく追加されています。

そして、東西ドイツ統一の激動期を経て、90年代に入ると、ニュー・ジャーマン・シネマは、次第に勢いを失っていきます。それでも、90年代後半には、ループ型映画の傑作、トム・ティクヴァ監督の『ラン・ローラ・ラン』(1998)や日本で未だにリメイクも多い『ノッキン・ヘブンズ・ドア』(1997)は、日本のミニシアターでも、大ヒットしました。


2000年以降のおすすめドイツ映画

ここからは、2000年以降のAmazon prime videoのプライム会員特典で見れるおすすめドイツ映画を特に3本を挙げたいとおもいます。2000年以降のドイツ映画で特に世界的に評価が高い作品は、ドイツの20世紀の負の歴史を扱ったものが多い傾向にあります。それは、現代ドイツにとって、未だに、その歴史が精神的に大きな影響を及ぼしている現実があるのは明らかで、ここで取り上げ3本もそれらを反映した作品になっています。

『グッバイ、レーニン!』(2003) ヴォルフガング・ベッカー監督

  本作は、ベルリンの壁崩壊、東西ドイツ統一に翻弄される東ドイツ家族を描いた、ドイツ本国で記録的ヒットとなったコメディー作品です。現代史に関心を持つのに最適な作品のひとつと言えます。また、息子が母親のために奔走する家族の物語でもあり、しっかり感動できる良作です。その息子を演じていたのが、ダニエル・ブリュールで、最近もNetflixドラマシリーズ『エイリアニスト』などで活躍しています。Amazon primeでは、他に『コッホ先生と僕らの革命』(2017)がプライム会員特典で見ることができます。タイトルはダニエル・ブリュールの『ベルリン、僕らの革命』に寄せていますが、内容は生徒と教師の感動作です。『いまを生きる』のドイツ版と宣伝を打っていますが、こちらも、ドイツサッカーの父、コンラート・コッホの史実を扱った作品です。ダニエル・ブリュールは、人間味のある役を演じると本当にそれがよく伝わってくる役者の一人だと改めて感じられる作品です。


『コーヒーをめぐる冒険』(2012)ヤン・オーレ・ゲルスター監督

 この作品は、モノクロ作品で、至るところに、映画愛に溢れた表現が、ちりばめられている作品です。こちらも広い意味で、ドイツ(ベルリンの街)の歴史を扱っている映画です。社会や社会の価値観に翻弄される人々を主人公は、冷めた目で見ながら、憂鬱な一日を過ごしています。そして、コーヒーをめぐる冒険の先で、翌朝、やっと飲むことができたコーヒーを片手に自分が抱いていた違和感が正しかったことを覚ります。この憂鬱な青年を憂鬱な瞳で見事に体現しているのが、トム・シリングです。トム・シリングは、その後も、『ピエロがお前を嘲笑う』(2014)『ある画家の数奇な運命』(2018)など、ドイツ映画の話題作で主演しています。トム・シリングが天才ハッカーの憂鬱な青年役を演じているスリラーサスペンス映画『ピエロがお前を嘲笑う』は、現在Amazonプライム会員特典で見ることができます。(Netflixでも視聴できます。)

下は、『コーヒーをめぐる冒険』の考察です。

『希望の灯り 』(2018) トーマス・ステューバー監督

  本作も、『グッバイ、レーニン!』と同様に東ドイツの人に焦点を当てた作品です。かつて、東ドイツの運送会社の倉庫だったスーパーマーケットを舞台にした作品です。資本主義を象徴するようなスーパーマーケットには、かつて運送会社のドライバーだったブルーノをはじめ東ドイツに置き去りにされた人々が働いています。そこに、社会的に疎外された主人公の青年クリスティアンが働きはじめ、次第にスーパーの中で、居場所を見つけています。そして、ブルーノは、クリスティアンに自分の居場所を譲ります。場所もストーリーも派手さはありませんが、本当に落ち着いた上質な作品で、特に、ラストの場面で、工場の中でクリスティアンたちが発見したさざ波は、東ドイツに置き忘れた大事なものを象徴するかのような素敵な一コマになっています。主人公のクリスティアンを演じているのは、フランツ・ロゴフスキで、『未来を乗り換えた男』(2018)、『水を抱く女』(2020)で、こちらもドイツ映画の話題作で主演しています。


『善き人のためのソナタ』(2006)フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク監督


そして、もう一つ外せない現代ドイツ映画は、フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク監督のドイツ映画『善き人のためのソナタ』です。特定の人物の実話ではありませんが、東ドイツ時代の何処かであったかもしれないと強く思わせるストーリーになっています。

 ストーリーを簡単に説明すると、東ベルリンの冷徹な国家保安局員であるヴィースラー大尉が、国家反逆罪の疑いのある劇作家ドライマンの監視を命じられるが、恋人で女優のクリスタらの会話を盗聴するうちに、次第に心の変化が生じ始めるというものです。

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