15.標準治療

 標準治療とは安全性と有効性が臨床試験等でしっかり証明された推奨レベルの最も高い最良の治療とされており、大半の病院の中で医師たちはこの基準を守り外れることをタブーとする体系の中で仕事をされています。そして多くの患者達も救われています。しかし医者達は何度となくこの標準治療だけでは助けることに限界があり、目の前で自分の患者の死を見守ることもあったであろうと思います。特にまだ未知の分野が広がる癌治療においては。「標準治療は終わり、もうあなたにはすることがないので次のホスピスへ」確かに命は限りがあります。いつかはそのような時期も訪れるでしょうが、今本当にやるべき術はないのでしょうか。標準治療というルールを前面に出し、無視することを決め込んではいないでしょうか。それとも当たり前のことを気づいてもいないのでしょうか。もちろん、全ての医師の方に当てはまるわけではないでしょうが、誰もが自らの保身に動く方が心地よいのでしょう。標準治療に基づく保険診療の制度の大切さも十分に理解しているつもりです。人間の身体、病、症状は一人ひとり違います。それこそ癌の発生原因に関わる細胞の数に匹敵するほどかもしれません。標準治療のみで対応するということではなく、目の前の患者を診て対応できる制度、医者であってほしいと医療の素人ながら願う日々です。

 6月に入るとA病院での採血の結果「PDL1免疫染色が100パーセント染まっているので、免疫チェックポイント阻害薬の使用と、またその効果も高い可能性がある」との報告を受けました。副作用の心配もありましたが目の前に来たやっとのチャンスです。チャレンジしかありません。
 一方では、今までは何のためらいもなく受けてきた腕への静脈注射が毎月の点滴のせいか腕肘が腫れ、痛み、水もたまり、整形外科を受診しました。「肘化膿性滑膜包炎」との診断です。これも免疫低下の要因かもしれません。また血管が細く、硬くなり点滴することがなかなか難しい状況となりました。また新たな問題を抱え込みました。この2年、初めての経験に耐え忍ぶことで右往左往です。副作用との闘いという新たな敵に対峙。そして私はこの鬼から逃げるのに必死。一緒に戦ってくれると思ったA病院の担当医師には信頼が半減となってしまいました。2017年7月末日、告知を受けてから2年を経過しました。

 私の住まいの近くに流れる川沿いには何キロも続く桜並木があります。またその川の支流、細い水路にも蛍が飛ぶようになりました。来年の桜、そして蛍の乱舞を見ることができるのでしょうか。

 

 

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