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人生NO.1ラブコメ◇猟奇的な彼女

韓国で2001年、日本で2003年公開とのことで、学生当時に映画館で見て以来、たまに無性に見たくなる。今日はそんな”彼女”への愛を語ります。

公式HPを貼り付けようとしたら、韓国のサイト?なのか埋め込みできませんでした。読み込むのも時間がかかるので、代わりにyahoo映画↓


韓流好きではないけど

私は韓流好きなどではなく、ドラマ含め、まともに見た韓流は本作の一応続編である「僕の彼女を紹介します」ほか、タイトルも忘れたホラー映画2,3本くらい。好きな恋愛映画はほぼアメリカ作品の中、なぜかこれがマイベストだ。ことあるごとにレンタルし、最近になって今さらながらディレクターズカット版のDVDを購入した。オンラインでもいいんだけれど、棚に置きたかった。

あらすじを1文で言うと、
優しい男子学生”僕”が、狂暴で飲んだくれでワガママ、でも憎めないキュートな”彼女”と出会い、振り回され、紆余曲折経てハッピーエンド。
ストーリ的に驚くようなものでもなく、実際にありそうななさそうな話で、これだけ書くと凡庸にも思える。そんな中、私の好きポイントは下記の通り。

①チョン・ジヒョンがかわいい
②監督が楽しんでいる
③恋愛色が薄め

理由①チョン・ジヒョンがかわいい

ジヒョンがキレイなのは確かなのだけれど、大勢いる女優さんの中で顔の造形はとびぬけているわけではないと思う。が、演技力なのか素なのか、とにかく魅力的、かわいい。前提として品の良さを感じるし、それなりの常識も備えていそう。その上で──だとしても、狂暴でワガママなのに憎めない。ちょっとした表情やしぐさにあざとさがない。言葉と行動がまんま一致しているようだ。いろんなドラマや映画を見てきて思うのが、やはり演技を超えて、俳優そのものの個性や考えって隠しきれないもの。爽やかで嫌味のない天真爛漫な”彼女”は、もはやジヒョン以外に考えられないほどハマリ役。

ずいぶん経ってからだが、ジヒョンの動画を探しまくってCMやらバラエティーでの演技や振る舞いを見あさった。すると思った通り、若い頃の彼女は飾り気がなく、自然体に見えた。歳を重ねてからも魅力的には違いないけれど、当時はもっとそれが全面に出ていた。

理由②監督が楽しんでいる

ディレクターズカット版を見て分かったのだが、NG集を見ると本当に監督であるクァク・ジェヨンが楽しそう。”僕”ことチャ・テヒョンとNGシーンについて笑いながら語っているのが印象深い。よく分からない後のボツシーンを何度も撮ったり、低予算なのにそこにお金かけるの? と言う周りの反対を押し切って撮影したシーンのほか、注意深くなければ気づかないような小ネタを仕込んだりと、遊び心のある無駄が多い。

業界のことは知らないけれど、たぶん映画の総指揮者である監督がそんな感じだから、出演者やスタッフも楽しめたのではないだろうか。NGシーンでテヒョンがおちゃらける様子もあって、リラックスしているのが分かる。「だからなのか」と妙に納得した。理由が分からないのに何度でも見たくなる作品って、こういうのが裏にあると思う。

なお、15年後に続編「もっと猟奇的な彼女」(2016年韓国公開)が作られている。当時すごく気になったので、どこかの韓国ニュースでチェックした。うろ覚えだが、本作は前作の大ヒット便乗した形で、大人の事情により監督も主演女優もチェンジ。唯一、続投したテヒョン(僕)のコメントを見ると、できるだけポジティブな言葉を選んではいるものの、「あまり乗り気じゃないのかな」と感じた記憶がある。

映画は続編ということで、”僕”が当時の”彼女”と別れるシーンから始まる。”彼女”とはつまりジヒョンのことだが、映画では後ろ姿で演者は別人だ。前作のいい感じのラストを一瞬で全否定するようなのが残念だった。大人の事情か知らないけど、リスペクトしているならもう少し自然な流れにしてほしかった。ここまで書いておいて、実は私が見たのは予告のみ。全編見ればまた違ったのかもしれないが、予告で見たいと思えなかったので仕方ない。
①にも関係するが、やはりジヒョンという看板、そしてクァク・ジェヨン監督あっての”僕”と”彼女”なのだ。

理由③恋愛色が薄め

恋愛映画で薄めってなんやねん、という感じだが、終始爽やかで、いい意味で色気がないというか。愛だの恋だの駆け引きだの、そういうのもいいけれど、この映画はとくに前半は直接的なことはない。

最初に”僕”が”彼女”の見た目に惹かれるものの、その後の彼女のふるまいを見てゲンナリする。彼女は僕に好きだとか一切言わないが、ことあるごとに呼びつけ、告白も何もしていないのに、前から付き合っている彼女であるかのような要求をしてくる。そういった行動には理由があったことが後で分かるのだが、恋愛映画特有の恋の悩みだとか、「どうしてもあなたに会いたいの」みたいな湿っぽい情景は皆無。

後半は多少恋愛色が強くなるが、それも友達同士のじゃれ合いのようにカラっとしている。バラの花を手渡すだとか、なぜかお見合いに相席するとか、ベタにも思える展開も、必要以上に会話のやりとりはなく、周囲の環境に合わせて2人の表情や行動で見せてくれるのがいい。すべて間接的な愛情表現。
奔放な彼女とともに数々のエピソードを重ねるうちに変化してゆく僕の思い、明らかになってゆく彼女の悲しい過去や思い、そして時期が来て別れて再開するまでの間──。偶然にしてはできすぎやろ、というエピソードもちょこちょこあるが、見ている最中にそういうツッコミも浮かばないのは、やはり監督の力もあるのだろう。何より、この「偶然」については最後の最後、シメで重要な一言を放っているので、観客も「これでいいのだ(+映画だし)」と思える。

プラトニックだからこそ伝わるものもあり、ドキドキすることもある。それがいい感じに演出されていた。実はこれこそが本当の色気なのかもしれない。

本作みたいな雰囲気の映画は男性ウケは良くないのでは、と思っていたので、監督が男性というのが少しうれしい。ちなみに、原作は韓国のネット小説で大ヒットを飛ばしたものだそう。日本で言う「電車男」と同じパターンだ。なにやら意図的に作られたヒットのニオイもするけれど、そんなことはこの際どうでもいい。本作が原作以上の魅力を生み出したのは間違いないのだから。

色気薄めの乱暴な彼女と僕のやり取りを、私が飽きることなく一気に見ることができたのは、これら3つの要因が合わさったことによる。オープンマインドな欧米に対し、隣国であり同じアジア系として、恥の文化だとかも近いのかもしれない。ビジュアルも近いし、途中で出てくる時代劇っぽいシーンも日本と似ているのも親しみやすさが増したのだろう。

終わりに

さて、ディレクターズカット版には、本編とは別にDVDがもう一枚付いている。メインは撮影の様子を、もう1台のカメラで撮ったものを本編と同じくらいの時間収録している。長すぎるので少ししか見ていない。正直、あまり興味はないけれど、また新しい発見があるかもしれないので、そのうちに見てみようと思う。

理由<おまけ>自分と経験と被る

公開当時、私には友達以上恋人未満みたいな、まさに”僕”のような同級生がいた。私の都合で呼び出してはドライブに連れて行ってもらい、飲みたいときには付き合わせた。私は酒癖が悪く、そういう女を嫌う人も多いであろう中、呆れつつも見守ってくれた。さすがに暴力は振らなかったけど。
彼はあくまで友達でしかなかった。学生生活の中で他に付き合った人もいたが、別れては彼に連絡をとった。離れもしないけれど、近づきすぎもしない。彼といるのは居心地がよかった。傍から見れば付き合っているも同然だったかもしれないが、形としては最後まで彼氏彼女になることはなく、卒業すると連絡も取らなくなった。本当は好きだった。そんな関係性がこの映画に少し重なる。


こんな映画レビューも書きました。"彼女"とは対局にある女の話です。

もうちょっと成熟したバージョンの強い女の話はこちら。




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