予選プール最終戦に向けて

まずは、台風の被害に会われた方、心からお見舞い申し上げます。

ワールドラグビーは、難しい判断が迫られる中、批判は覚悟の上で、大会に携わるすべての人たちの安全を考慮した上で、昨日、今日と3試合を中止した。これは、ラグビー協議うんぬんではなく、人の生命を優先する、根本的な判断に、ラグビーという競技とそれに携わる人たちの素晴らしさを改めて感じた。

さて、今日が予選プール最終日。既に決勝トーナメント進出を決めたチームもある中、ざっくりであるが、チーム力について強さごとにまとめておきたい。

(最強グループ)ニュージーランド、南アフリカ、イングランド

(強いグループ)ウェールズ、オーストラリア、フランス、日本、アイルランド、スコットランド、アルゼンチン

(中堅グループ)フィジー、トンガ、イタリア、サモア、ジョージア

(発展途上グループ)ロシア、ウルグアイ、ナミビア、アメリカ、カナダ

今回のW杯は、強いチームと弱いチームがハッキリと分かりやすい結果になった。強い、というのはフィジカルだけでなく、チーム力がキーになっている。

現代ラグビーは、組織的な守備が出来れば出来るほど、どんなに強固な攻撃力をもってしても前に進めない。プールB初戦の南アやNZが典型的な例である。つまり、フォワードだけのフィジカル勝負に出ても、全く前に進めず、攻撃側が攻め疲れしてしまい、ハイパントなどのキックに切り替えて陣地をとるのが定石となっている。これはどのチームもやることで、ハイボールの取り合いで、再度攻撃できたらラッキー、といった戦術だ。

しかし、これは相手にボールを渡すことにもなり、ボールチェイスやその後の守備でボールを取り返すことが前提である。守備のどこかに弱点があって突破される、一度突破されたときの戻りが遅い、反則してしまう、などのミスをおかすと一気に自陣ゴール前まで攻め困れてしまう。発展途上グループ、中堅グループはここでやられてしまうため、自分のゴール前でひたすら守備をしないといけない、という展開になりがちだ。

次に、現代ラグビーの攻撃パターンの全てを高いレベルでできるかどうか。攻撃のパターンは次の通り。
1)密集でのフォワード戦
2)ハイパントでの空中戦
3)バックスでの走力戦

いたって普通と言えば普通だが、最近のバックスのアンブレラディフェンス(外から内に囲い混むような守備)が発達していて、実は外への展開をするのは相当困難になっている。強いプレッシャーのなかでも確実に大外までボールを運びきれるハンドリングスキルとパスの速さ、精度が問われる場面が多い。フィジーを除く中堅グループ、発展途上グループにはここが高いレベルでプレイできていないことが多く、相手ディフェンスを引き伸ばすことが出来ていない。さらには、ラグビーは後ろ向きにパスをするため、外まで回すと大きく陣地を失ってしまう。結果的に、攻撃したのに損をして、キックを蹴るしかなくなる。つまり、前に出れず、守備を続けざるを得なくなり、疲弊していく。

とはいえ、攻撃できるスペースは一番外のウイングの目の前しか空いてない。最強グループ、強いグループはこのスペースがあくまでも真ん中で地上戦をしたり、何回か左右に大きく振って、隙ができるのを待ち続ける。

さらに、長短のキックを交えたバリエーションを持っているかも重要な点だ。例えば、アイルランドのセクストン、様々なキックでの相手ディフェンスラインの背後にキックを蹴り混むため、守備陣形が崩れやすく、その次の攻撃で一気に攻め込める。しかし、セクストン抜きの日本戦ではフィジカル勝負に出たため攻撃が淡白になり、かつ、日本の強固な守備を破れなかったため、自滅してしまった。いずれにせよ、状況を打開できないときのバリエーションの多さは、攻め疲れを防ぎ、何らかの打開策を見出だすためにも必要となる。

そして、最強グループがさらに持ち合せているのが、偶発的な出来事に対する対応力である。例えば、ポロっと目の前にボールが転がって来たときに組織的に攻め込むリアクション、ハイボールをキャッチミスしたあとの回りのカバーやその反応、タックルミスしたあとのカバーリング、などなど偶発的に起きたことに対するリアクションの速さが尋常ではない。あれ?自分のプレーは間違ってないのに、と思ってる間にトライをとられている。との研ぎ澄まされた感覚が、この3か国はずば抜けている。

強いグループの中で、最強グループに入れるのではないかと期待しているのが日本だ。それが本当かどうか、今夜証明されることになるだろう。

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