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愛憎芸 #42 『ペンネームのこと』

 日記のワークショップ(期間は終わっているがほとんど全員が今も日記を書いている)で何人かが名前について語っている。実名も筆名も問わず。Cさんの日記の中でこの筆名を褒めてもらっていて嬉しかった。わたし自身も2024年になってようやくこの名前が馴染んできたところ。この「瀧本緑」というペンネームが定まったのは2021年の終わりだったと思う。瀧本美織とハードライム踏めると気づいたのはかなり最近。


 わたしは2017年にはnoteへの投稿を始めていたので、定まったペンネームがないまま4年くらい文章を書いていたことになる。高校からの定番あだ名から仮に「gam」と名乗っていたけれどこれはペンネームじゃないな、と明確に思っていた。とにかくまあペンネームが欲しかった。欲しくて、血迷って「超ド級ノベル」みたいな名前にしようとしたことがあった。やめてよかった。


 ああもっと遡れるな。中学生のときfc2小説で小説を書いていた、ポケモンファンの交流サイト「ポケ書」のポケボードでもポケモン二次創作の小説を書いていた。そうわたしは実は二次創作出身なんですほとんど。リレー小説楽しかったな。あのとき、最初は小学校のときに名乗っていた「九十川努男」を名乗ってた。fc2はほとんどそうだった気がする。でもポケ書のほうで「あんびしゃん」という当時好きだった格言"Boys Be Ambitious"にあやかったハンドルネームを名乗りはじめ、そこで中学生だったわたしは大学生のユーザーに「あんびくん」と呼ばれたりしていた。今思い出した。高校野球が忙しすぎて、大学生までは文章を書いていなかったのでそこからしばらくペンネームとは無縁の生活を送ったことになる。


 たいした紆余曲折があったわけではないが、2021年に「瀧本緑」に決めた。ペンネームを決めるときに困ったのは苗字だった。文壇(に立ってるつもりはないが)の外に出ても、名前というのは意味をもってつけられるものだと思うが、苗字というものは遠い過去の成り行きでできあがるものだと思うので、ペンネームとするとなると困る。過去、ないし。とりあえず語感がよいものにしたいとは思っていた。


 ほな、拝借だった。「瀧本」はわたしが一番好きな映画である『四月の永い夢』(中川龍太郎監督、2018年)の主人公「滝本初海」からもらった苗字である。瀧はそのままだとなんかな、と思ってピエール瀧のほうの「瀧」にした。そもそもこの「初海」という名前が「小夏」と同じくらいいい名前だと思うのだが、この映画における初海、というか朝倉あきさんの澄んだたたずまいと中川監督が切り取る映像が心に残り続けていて、やっぱり自分が最終的にたどり着きたい表現というのはこの映画のようなものと思っている。毎年4月には必ず見るようにしていて、国立の桜もできる限り見に行く。今年も行かねば。フィルム買わないと。

 というわけで、苗字にとても愛着がある。その愛着に比べると、名前の「緑」は緑色が好きなこと、Cさんの仰るとおりエバーグリーンからきているというくらいのもの。書き続けたい、という思いから来ているのみ。語感もいいですし。


 この名前を使い始めてから今まで、改名を検討したことが一度もなかった一方で、この名前で呼ばれることはほとんどなかった。Hに「滝川緑のほうも~」とよく間違われたりしたくらいなもので。愛憎芸の回数を重ねはじめた昨年くらいからnoteの方で知り合いができるようになり、その人たちは当然「瀧本さん」と呼ぶ。WSも本名ではなく瀧本で参加したのでみなさんは瀧本さんとか緑さんと呼んでくれる。瀧本緑である実感を今までになく得られているここ4ヶ月くらい、なのである。


 新人賞に応募するときは本名かな、と思っていた時期もあった。Hは「本名で出た方がきみや!ってなるからうれしい」と言ってくれてたけれど今は瀧本緑で出したい。書くときのわたしは本名ではなく瀧本緑になっていて、瀧本緑でないと書けない文章がたくさんある気がする。小説、そろそろ手をつけましょうね...


 瀧本緑はビジネスメールを書けない。本名の彼はビジネスメールを書くし、最近は商談なんかもやるらしい。自分が二人いる。それもありだな、と思う。


 5月の文フリ東京に、日記のワークショップのみんなで出ます。WSの間の3ヶ月ではなく、その後の3ヶ月の日記をもとに今作っています。まだその際中です。それまでのことを何も知らなかった人々の3ヶ月に、日記に書いてあることに関してなら誰よりも詳しくなるという希有な経験をしました。毎日書いたので、書かなければ向き合わなくて良かった感情もたくさんあったかもしれないと思っています。書くことはときに辛い、を実感したけれど今まで経験したこともないような文字数を書いて、あんまりモノを続けられない自分もみんなにつられて今日も書いている、わたしだけでもそんな思いをしていてそれが15人分あるという欲張りセットな本ですが楽しみにしていただきたいです!文フリ2回目なのに出店者だ!楽しみ!


■MAGANINE:BUTLOVESONLY Vol.8

というわけで文フリ東京、出ます。

■映画『落下の解剖学』

 加藤拓也の会話劇を何倍もどぎつくしたみたいなすごい脚本とそれに負けないいい映像。最初の10分なぜか寝てしまったけど、のこりの2時間20分は齧り付いて観ました。

■山口慎太朗『デリケート』(小説)

 日記にも書きましたが。大好きな作品。映画館を舞台に繰り広げられる群像劇、の中で時々繰り出される美工藤さんの現実離れしたアクションが愛おしい。美工藤さんって苗字がいい。一本の映画を観た後のようで、なんだろう、ずっと読んでたいな〜と思う作品でした。

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