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中島らもに核心を突かれて悶絶する休日

 印刷屋というのはとにかくミスが付きものの商売で、
写植屋さんがミスしなければデザイナーがミスし、
デザイナーがミスしなければ製版屋さんがミスし、
製版屋さんがミスしなければ刷職人さんがミスし、
刷職人さんがミスしなければ製本屋さんがミスし、
製本屋さんのミスもなくてああ良かったと胸をなでおろしていると運送屋さんが配送ミスをし、
あわてて回収して届けると、「四日売り出しのマンションのチラシを五日に届けてどうするんじゃい!!」とどなられたりする。
 精神衛生にはあまりよくない。

『私のギモン』中島らもエッセイ・コレクション 小堀純 編より

中島らもさんが印刷会社の営業だった頃のことを書いているエッセイにこのくだりが出て来る。休日に気楽に読んでいたところにこの名調子で核心を突いてくる(というかえぐってくる)もんだから、ベッド上でのたうちまわった。

簡潔にして伝わりすぎる。
声に出して読みたい日本語。
いや、読みたくはない。


チームで他人と仕事をするというのは、まぁ本当にこんな調子じゃないですか。

私もついこの間、社内連携プロジェクトの旗振り役なんてものにアサインされて、偉い人が思いを語るところから最後に空中分解しかけるまでの一連の流れテンプレと戦ってました。

上流から下流まで、あらゆる打ち合わせでいちいち齟齬が発生していて、よくもここまで齟齬を作り出せるものだと逆に感心してしまったりした。

 社内連携プロジェクトなんてものはとにかく齟齬が付きもので、
部長がおかしなことを言わなくても課長が勘違いし、
課長が勘違いしなくてもチームリーダーが忖度し、
チームリーダーが忖度しなくてもオペレーターが曲解し、
オペレーターが曲解しなくてもチェック工程でミスし、
チェック工程のミスもなくてああ良かったと胸をなでおろしていると計画がそもそも変更になり、あわてて軌道修正して納品すると「なにこれ、誰がこんなもの作れって言った?」と刺されたりする。
 精神衛生にはあまりよくない。

タキツネ

ほんとにこんな感じですよね。
なんとかしたけど、なんとかなったのかはわからない。



社内連携なんて高度なプロジェクトができるのは相当に成熟した会社だけであって、大半の組織はとりあえず成果を出したいだけなら「いいからお金払ってプロにやってもらう」方がいいんですよ。偉い人にはそれがわからんのです。

会社として成長するためみたいな高尚な目的があって、さらにそのためには年単位の苦痛に耐える覚悟がある場合以外は、偉い人の思いつきで社内連携プロジェクトなんて立ち上げない方が良い。どうせその偉い人、最後まで責任取らないし。

外注するお金をケチって、社員にタダでやってもらって、エンゲージメントも上がるかも?なんて思ってるだけなら、失った金額と時間と社員の士気すら算定できない失敗プロジェクトをひとつ増やすだけじゃないですか。

ねぇ、ちょっと先輩!
聞いてます!?

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