たこやまたこた

猫を愛し、妖怪を友として細々と生きる無名の絵本作家です。 本業の作品サイト:http:…

たこやまたこた

猫を愛し、妖怪を友として細々と生きる無名の絵本作家です。 本業の作品サイト:http://www.ne.jp/asahi/takoyama/takota/

マガジン

  • 魔魅夢メモ(まみむめも~夢日記)

    メモに残した夢を集めてみました。

  • 写句鳥虫(しゃくとりむし)

    遊び半分に写真俳句のコンテストに応募したところ、最優秀賞をいただてしまった。 調子に乗ってその後、 写真俳句 を書き溜め、「写句鳥虫」(しゃくとりむし) と題して一冊にまとめてみた。 その中の作品を中心に、少しずつアップして行こうと思う。

  • 絵本のたまご

    採用にならなかったり、世に出す機会がなかったり、まだ発展途上だったりして、未発表のまま埋もれている作品たち…

  • よい子とよくない大人のための4コマ

    紙切れにいたずら書きした4コマ漫画もどきを拾い集めてみました。

  • はーどぼいるどろまんカサバランカ

    自作の下手くそ8コマ漫画です。

最近の記事

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たこやま たこたくん

今更ですが、「たこやまたこた」というハンドルネームのもとになった「たこやま たこたくん」という作品を転載します。絵本の仕事を始めて間もないころ、月刊絵本として世に出ました。雑誌扱いなので1回限りの発行となります。自分でも最も好きな作品の一つなので、できれば市販本にしてもらえないものかと願ってやまないのですが、いまだ実現していません… 1999年フレーベル館発行ころころえほん9月号

    • 家族の肖像

      家族の真相は、外からはわからない。 一見幸せそのものに見える一家が、ある日突然崩壊するという事例に、最近立て続けに遭遇して、改めてそう思った。 幸せそのものに見える一家が実は壊れていることもあれば、その逆もまた珍しくはない。 どう見てもぶっ壊れているとしか思えないのに、実はそれなりにうまく行っていたりもするのだ。 隣室の南部谷さんは、4人家族と聞いている。 ところが、四十代と思しき奥さんのほかは、顔を見たことが無い。 奥さんは気さくそうな人なので、出くわすたびに家族のこと

      • ベニコウジ

        「帯状疱疹がね、あっという間に治ってしまったの」 煙山さんが言った。 美人なのに、いつも顰めっ面をしているから、何かと損をしている彼女だった。 そんな彼女が、近頃妙ににこやかなので、探りを入れてみたのだ。 「ベニコウジのおかげなの」 「ベニコウジって、もしかしたら、今サプリで問題になってるやつ?」 「じゃなくて、これよ」 バッグから高さ五センチくらいの小瓶を取り出す。 ラベルも何も付いていなくて、白っぽい粉が入っている。 「薬?」 「薬ではないから…これもやっぱ

        • おたから

          床に金の粉が落ちていた。 僕の皮膚から落ちたものだとわかった。 大駱駝艦の金粉ショーを見たせいかもしれない。 路上パフォーマンスをすぐ近くで見ていたから、金粉のおこぼれに与ったのだろう。 次の日に目覚めると、床にまた金粉が落ちていた。 昨日よりも明らかに量が多かった。 手を顔に当てると、粉っぽい。 擦ると、金の粉が舞い落ちた。 顔の皮膚が金粉を吹いていたのだ。 粉の量は日々どんどん増えていく。 捨てるにはもったいない。 数日分を集めてみたら、結構な量になった。 もし

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        たこやま たこたくん

        マガジン

        • 魔魅夢メモ(まみむめも~夢日記)
          45本
        • 写句鳥虫(しゃくとりむし)
          44本
        • 絵本のたまご
          71本
        • よい子とよくない大人のための4コマ
          13本
        • はーどぼいるどろまんカサバランカ
          15本

        記事

          大吉ばかりの夢十夜

          第一夜毎日IKKOさんばかり見ているような気がする。買取のCMやチラシばかりではなく、ありとあらゆる場所から、おしゃべりの白いモグラみたいに「どんだけ~っ!」と飛び出してくるし、夢にまで出てくる… 第二夜大きな赤い本がある。開くと中も真っ赤なのだが、所々、白いページもある。「4人で作ったんですけど、未完なんです」と天の声が言う。「血で染めています。4人目が途中でやめてしまったんです」僕に完成せよと圧力をかけているような気がする…という夢 第三夜ガワ・スイトロビッチという白

          大吉ばかりの夢十夜

          玉手場所

          スーパーボールが暴走したのだ。 未舗装の坂をぽんぽんとんとん跳ね下り、どこかへ消えてしまった。 温泉町の外れに住んでいた。 ぼくの家の周りには、芸者さんの住んでいるアパートが点在していた。 一緒に遊んでいた友達ふたりとボールを探し回った挙句、どうやらそんなアパートのひとつに闖入したらしいことがわかった。 しかも、玄関の硝子戸をぶち割って。 それがわかると、ふたりは逃げ去ってしまった。 取り残されたぼくは、しばし迷ったが、意を決して謝りに行くことにした。 呼び鈴を鳴らすと

          空の人

          ジョン・スカイヤー君は、若い白人男性だ。 アメリカ出身という噂だが、確認したわけではない。 いつも倫理学科の講義に顔を出して、熱心に聴講している。 背はそんなに高くないが、ごついしっかりした体型。 空手の有段者だという話だ。 実際、黒帯の空手着姿で、キャンパスに現れることもあった。 外国人の留学生は珍しくない大学なので、僕も特に気にしたりはしていなかった。 そんなスカイヤー君が、ある日のゼミをきっかけに、僕の世界に舞い降りたのだ。 日本倫理思想史のS教授のゼミだった。 テ

          ぼくのおじ遺産

          祖父が死んだ。 ぼくに遺産を残した。 サグラダ・ファミリアだ。 だだっ広い庭の一角に築き上げた。 完成しているのか未完成なのかはわからない。 木やら空き缶やらペットボトルやらわけのわからないガラクタやらで作り上げた。 たったひとりで、少なくも70年かかって。 桜田家造。 ぼくの祖父の名だ。 享年90。 祖父については、片手で数えられるほどの思い出があるだけだ。 小学校に上がる前、父が突然大学に戻ってしまった。 何やらやり残した研究を完遂させたいという。 その間の数年、

          ぼくのおじ遺産

          マンホールマン

          監視されている。 姦視かもしれない。 見られていることは確かだ。 この数日に始まったような気もするし、以前からあったような気もする。 いずれにせよ、はっきり意識するようになったのは最近のことだ。 ほら、今も誰かが見ている。 感じるのだ、背中に視線を。 振り返る。 誰もいない。 右も左も近くも遠くも、誰もいない。 ただひとつ、気になる物があった。 歩道の少し離れた所にあるマンホールだ。 浮き上がっているように見えるのだ。 駆け寄ってよく見ると、確かに浮き上がっていた。

          マンホールマン

          顔だけの関係

          2階のトイレの窓を開けたら、顔があった。 腫れぼったい顔のお姐さんだ。 びっくりして、反射的に窓を閉めてしまった。 隣家は2階建ての古いアパートだ。 住人のことは何も知らない。 お姐さんが誰なのかも、もちろん知らない。 1メートルほど離れた隣の窓が、トイレの窓なのかどうかもわからない。 それからは、トイレに入るたびに、びくびくした。 窓の向こうにお姐さんがいるのではと、気になって仕方が無かった。 窓を開けて確かめたかったが、やっぱり怖いので、ぐっと気持ちを抑えた。 幼い

          バッシー

          「イッピーだよ。 ネットで公開しようか迷ってるんだ」 伊豆の伊東市在住の友人が、メールで写真を送ってきた。 一碧湖で撮ったという。 ぼやけてはいるが、水面に何かが首を突き出した写真だ。 角が2本あって、牛のようにも見えるが、牛にしては首が長い。 ネス湖のネッシーや斜路湖のクッシーに倣って、勝手にイッピーと名付けたという。 ほかに目撃談でもないかと検索してみたら、残念ながら見当たらなかったが、地元に古くから伝わる「赤牛」伝説なるものが見つかった。 かつて一碧湖が吉田の大池と

          すれ違いサブスクリプション

          電柱に貼り紙がしてある。 モノクロの地味な貼り紙だ。 なのになぜか、目を引かずにはおかない。 『すれ違いサブスクリプション 詳細は下記QRコードでご確認を!』 とあるのだが、その肝心のQRコードが、どこにもないのだ。 それに代わって、ずらずらと日時が列挙してある。 3月●日から始まって、既に過ぎた日もいくつかあったのだが、これからやってくる日もいくつかある。 直近は4月●日午後3時15分だった。 日時の下には大きめのブランクがあり、末尾にはこう注記してあった。 『※

          すれ違いサブスクリプション

          黄砂

          公園を通り抜ける。 木陰のベンチにその人が座っている。 両手を膝に置き、背筋をぴ~んと伸ばしている。 トッペイさんと呼ばれていた。 弁髪で、大国主命のような白装束の、謎の小男。 どこからともなくやってきて、どこへともなく消える。 色白で下膨れの顔をそれとなく見ると、離れ加減の両目は、やや釣りあがっている。 年齢不詳で、子供のようにも老人のようにも見える。 少し前から、視界がもやもやしていた。 霧や靄のようでもあったが、何やらもっと汚らしい感じがあった。 土埃かもしれない

          海の月、水の母

          夕方の海。 季節はわからない。 そうでないとすれば、季節は無い。 七里ガ浜の海岸だ。 月が出ている。 三日月だ。 今しも江の島の向こうに沈もうとしている。 島の右方には富士山が見えるはずなのだが、きょうは見えない。 人はいない。 いや、いないわけではない。 ぼくがいる。 そして、鈍色のシルエットの親子がいる。 母親とその半分くらいの大きさの子だ。 ぼくの立っている砂浜からは、ずいぶん離れている。 波は静かだが、ふたりは明らかに水の中だ。 付いたり離れたりしながら、静か

          海の月、水の母

          俺捨山

          伊豆の町に、20数年ぶりに帰ってきた。 旧友に会うためだった。 用事が済み、友と別れると、せっかくの機会なので、昔住んでいた辺りを散策してみることにした。 かつての自宅の裏には「かめ山」があって、よく虫を取りに行ったものだった。 山といっても、丘に毛の生えた程度の小山だったが、自然と畑と虫には事欠かなかった。 僕はずっと「亀山」だと思っていたのだが、実は「甕山」だったと知ったのは、本の数十分前のことだ。 旧友との会話の中で、初めてその事実を知らされたのだ。 由来はわからな

          夜が泣いている

          ある会社で細々と、グリーティングカードを作っていたことがある。 その会社の主役はキャラクターグッズだったから、そこは日陰の部門だった。 僕の主な仕事は、面白いカードを企画することだった。 アイデアや仕掛けを駆使することもあれば、主に文章で面白がらせることもある。 企画が固まると、部内のデザイナーに頼むか外注に出すかして、サンプルを作る。 通常はその後に決裁を仰ぐことになるが、場合によっては、企画の段階で僕自身が簡単なダミーを作って、事前に上のOKを取っておくこともある。

          夜が泣いている