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【読書メモ】自由からの逃走

本の紹介

  • エーリッヒ・フロムの著書

  • 自由から逃避するメカニズムと真の自由を得るための助言が著されている

要約

自由は個人を孤独にする

  • 個人は,共同体から解放されることで自由を獲得するが,共同体で得ていた自己の同一性や安心感を失い,孤独を感じる.

  • 例えば,大学を卒業する(=大学という共同体から解放される)ことで,自由を獲得するが,社会に出ると大学で得ていた自己の同一性や安心感を失い,不安感・孤独感が増す

孤独になった個人は,外部の圧倒的な力に服従する

  • 金,名声や文化的流行に服従することで,自己の同一性の喪失や孤独感から逃れようとする

  • 例えば,金,名声に服従する(=資本主義システムに服従する)ことで,一時的に自己の同一性の喪失や孤独感が解消できる

どのような外部の力に服従するか?

  • 権威

    • 対象: 神やカリスマなど

    • 服従のメカニズム: 外部の権威を借りて,自己の孤独感を解消する

  • 資本主義システム

    • 対象: 金,名声など

    • 服従のメカニズム: 資本主義システムの上で踊ることで,自己の真の目的から目を逸らし,一時的な安心感を得る

  • 他人の期待

    • 対象: 他者

    • 服従のメカニズム: 風変りにならず,他人の期待に順応することによって,自己の同一性についての懐疑を沈め,一種の安定感を得る

外部の力に服従することは自己の統一性を犠牲にしている

  • 外部の力に服従することで孤独感は解消されるが,その高価な代償として自己の統一性を犠牲にしている.

  • 自己の同一性を犠牲にして,自己と世界を繋ぎ止めようとしている

  • 例えば,他人の期待に応えて自己と世界を繋ぎ止めようとする.これは,自己の孤独感に抵抗できないからである。

では,外部の力に服従することなく,自己の同一性も犠牲にすることなく,自己と世界を結びつけることは可能か?

  • 可能である.その鍵は,自己の自発性にある.

  • 自発的な行動は,人間が自我の統一を犠牲にすることなしに,孤独の恐怖を克服する一つの道である

  • 自発的な行動から生まれる性質のみが,自我に強さを与え,自我の統一性の基礎となる

  • 自発的に行動できなかったり,本当に感じたり考えたりすることを表現できなかったり,偽の自我を現さなければならなかったりすることが,劣等感や弱小感の根源である.

  • 自分自身でないことほど恥ずべきことはなく,自分自身でものを考え,感じ,話すことほど,誇りと幸福を与えるものはない

自発性の構成要素の中で最も大切な要素は,”愛”である

  • 愛とは,相手を所有してしまうことではなく,相手を自発的に肯定し,個人的自我の確保の上に立って,個人を他者と結びつけるような活動である.

考察

  • 自由から逃避するメカニズムについて精密に言語化された著書だった.

  • “自身の強さ = 自分についてどれだけの真理を知っているかによって大きく左右される”という言葉はまさにその通りだと思った.

    • 例えば,キャリア選択において,大企業に入るべきか,やりがいを重視するべきか等がしばしば議論される.

    • そのときに自己の認識ができていなければ,自己の選択が ”外部の力に服従しようとしている選択” か ”自発的に自己と外部を結びつけようとしている選択か” を認識することができない

  • 本書では,(当たり前だが)自由から逃避するメカニズムの議論のために多くのページが割かれている.

  • 真の自由(=より高いどのような力にも服従しないこと)を得るための考え方を深めるためには,フロムが”自由からの逃走”の後に著した”愛するということ”が参考になる

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