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こんなに熱心なのに、どうして日本人が英語が苦手なの?

元大手進学塾トップクラス担当講師で、現在はニュージーランド在住の受験&国際教育コンサルタントのTakuです。

「英語って勉強させても、なかなかしゃべれるようにならないな…」
「どうしてこんなに英語やらせてるのに、身につかないんだろう?」

そんな疑問や悩みを持ったことはありませんか?
きょうは熱心に英語を勉強している人が多いのに、英語が喋れる人が少ないナゾについて考えてみたいと思います。


日本の英語教育の悲しい現実

今も昔も日本では、本当に英語教育が盛んです。

子供の人気習い事ランキングで常に上位にある英会話。
キャッチコピーには、「世界へのパスポート」とか「グローバル化する世界で有用」などといった言葉が踊り、親としてはなんとか英語を身につけさせようと思いますよね。

でも現実はどうでしょうか?
EFエデュケーションファースト社が発表した、2023年版のEF EPI英語能力指数ランキング。これは世界113の国・地域(もちろん英語圏の国は不参加)から220万人がテストに参加する世界最大の成人の英語能力ランキングです。

日本の順位を早速見てみましょう。

(参照:https://www.efjapan.co.jp/epi/​​)

日本、見つかりましたか?
はい、113カ国中「87位」です。
レベルも5段階中、下から2番目の「低い」ランキング…。

これ、お世辞にもいい結果って言えませんよね。
ではそんな英語レベルの進捗はどうなっているのかも見てみましょう。

(参照:https://www.efjapan.co.jp/epi/​​)

なんと2011年からずっと「右から下がり」で、日本人の英語力は低下の一途を辿っています
この間日本ではずっと、色々英語教育に力入れてきてたんですよね?

国際バカロレア校が次々オープンし、英語入試も盛んになり、英検の受験者数も「右から上がり」。

(参照:https://www.eiken.or.jp/eiken/about/situation/​​)

それなのにこんな結果なんて…。
これっておかしくないですか?

こんなに英語を頑張って教育しているのに、英語ランキングは落ち続けている。
どこかが間違っているとしか思えないのは、私だけでしょうか。

日本の英語教育で英語が喋れるようにならないワケ

でもちょっと冷静に考えてみれば、これは当たり前なのかなとも思います。
というのも多くの日本人にとって英語は「必須のもの」ではなく、ただ受験にために勉強する「科目」に過ぎないからです。

さっきの英検にしたって、受験に関係ないって言われたらいったいどれだけの人が受けるのでしょう?
きっと大半の人は、時間とお金の無駄だって思うんじゃないでしょうか?
就活に使うのはTOEICでしょうし、留学に行くならTOEFLかIELTSを受けるのが普通ですから。

外から見ていると、多くの人が「受験」か「就職(国内企業)」のためだけに英語をやっている感がかなりあって、それが英語力向上のブレーキになってる気がします
そもそも英語はコミュニケーションを取るための「手段」に過ぎないのに、多くの人はまるで理語学者のような勉強をしています。
私もニュージーランド人に、「お前は俺より文法が詳しいな。学者か?」と言われたくらいです(笑)。

私は個人的に、英語は勉強するものじゃなくて使うものじゃないかなと思っています。
もちろん単語を覚えたり、場合によっては文法を学ぶことも重要です。

でもそれよりもまず声に出してみる。
音を聞いてみる。
そして実際に英語を使って人と話してみる。

その繰り返しの先にしか、「真の英語力」ってつかないのではないかなと思うのです。

以前私がサポートした留学生に、日本の地方公立高校から来た女の子がいました。
彼女は英検も受けたことがありませんでしたが、同時期に英検2級を持っている生徒よりはるかに流暢な英語を話すので驚きました。

どんな勉強をしてきたのか尋ねると、洋楽と洋画が好きで言い回しを真似したり、インターネットで知り合った人とLanguage Exchangeをしたりして学んできたとのこと。
また夏休みには親類の家に泊まって、英語のボランティアもしていたそうです。

彼女は瞬く間に現地の友達(留学生ではなく)をたくさん作り、現地校に溶け込んでメキメキ英語力を伸ばしていきました。
卒業後は予算面の問題で日本の大学に戻りましたが、大学卒業後は奨学金を得てアメリカの大学院に進学し、ビジネスを学んでいます。

もちろんこれは極端な例かもしれませんが、少なくとも英語は勉強するものではなく「使って覚える」という部分がとても重要です。
どんなに「勉強」し続けても、「使用」しなければいつまでも英語は身につきません

では日本の学校でこの「使う」という部分は、どのくらいカバーされているのでしょうか?

いやいや最近は、英会話の授業も充実しているから、「使う」機会も増えているよという見方もあります。
確かに昔の英語教育に比べれば、確かにそうかもしれません。
でもそこで習うのは、「訛りのない」「正確で美しく」「丁寧でゆっくり」話す「日本人の弱点をよく知っている親日的な先生」の英語です。

こんな英語を話す人なんて、世界に何%いますか?
この過程で身につくのは、「温室で育てられたひょろひょろの英語力」だけでしょう。

実際に使われている英語は、もっと不正確で訛りもあり、タブーや方言も入り混じった、話す人の個性が出るもっと「ダーティー」なものです。
そうした英語を身につけるには、多くの「先生以外の人」と英語でコミュニケーションをする機会を作ることが必須です。

では留学の経験ができる学校を選べばいいじゃん!という声が聞こえてきますが、こちらも利用方法を間違えないようにすることが大切です。
特に数週間から数ヶ月程度の「短期留学」の場合、語学力の向上というより「異文化体験」に重点が置かれていることがほとんどでしょう。

このような短期留学プログラムで学校側が期待しているのは、「英語力向上」ではなく、「世界への興味を持ってもらうこと」です。
この趣旨はもっともなことで、こんな短期で語学が伸びるわけがありません。

その上保護者が過度に子供の安全を学校側に期待するものですから、そのニーズに応えるべく「徹底した安全環境」を提供するよう学校も努力するので、子供が苦労してこそ身につけられるスキルもなかなか育たないというジレンマも発生しています。
(この辺に関してはまた、別の記事で詳しく書きます!)

まとめ

話を戻すと、英語は「英検」などの対策を頑張るだけでは、いつまで経っても使えるようにはなりません。
使えない英語を身についけているんだから、日本人の英語力が伸びないのも当然です。
つまり残念ながら今の日本の「グローバル教育」って、まだまだ国際人を育成するという目的を達成できてないというのが実情だろうと思います。

でもこの「英語教育」って、今後もきっとあんまり変わらないんじゃないかと個人的には思ってます。
だって日本にいると英語って、「受験」以外ではほとんど使わないですから。
そしてその受験学習を通じて子供達が身につけるのは、「いかにミスをしないで正確に覚えるか」なので、間違いを恐れずにチャレンジする気持ちを失ってしまい、英語を使うのを躊躇うようになっていくのかもしれませんね。

こう考えるとさっきお話しした、地方公立高校(偏差値は40代前半と言ってました)の子どものほうが、受験での「間違い恐怖症」にかからずに済んだおかげで、こんなに英語が伸びて「真の国際人」になれたのかもしれません。
ほんと受験を考えれば考えるほど、その功罪には思うところ大ですね。

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