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さよならバンドアパート番外編

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「さよなら、バンドアパート」の主人公である川嶋の10代の頃の短編です。
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記事一覧

さよなら、バンドアパート.美咲の話3

僕と美咲は時折公園で話すようになった。 二人きりで話さないと人間の本質には気づけない。学…

takuro(juJoe)
2年前
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さよなら、バンドアパート.美咲の話2

二年生になり、ますます孤独は進んだ。完全に地球上でひとりぼっちになった気がした。中二病と…

takuro(juJoe)
2年前
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さよなら、バンドアパート.美咲の話1

「いいとこね!」 つないだ手の先から、風鈴のような声が聴こえた。何故かは分からなかった。…

takuro(juJoe)
2年前
9

宗教おばさん!

僕が小学生の頃、『宗教おばさん』と呼ばれる人がいた。 宗教おばさんは、月曜日だけやってく…

takuro(juJoe)
5年前
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神戸に酒鬼薔薇が登場した時、小学三年生をやっていた話!

酒鬼薔薇事件を知っていますか。 時は1997年。近所の学校の校門に切断された首が置かれ、神戸…

takuro(juJoe)
2年前
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15歳のとき恋人を大事な場所へ連れて行った話

中学一年生の頃、僕は独りだった。 通っていた中学は二つの小学校の進学先だった。僕の出身小…

takuro(juJoe)
5年前
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さよなら、バンドアパート2

1.嬉しさよりも安堵が先にやってきた 幕張のステージに立つと、八千人近いオーディエンスが溢れていた。 『見ろ! 人がゴミのようだ!』とつい叫びたくなる光景だった。 自分の歌が大音量で響く非現実的な時間は、三十分経つとシャボン玉が割れるように終わった。 「いやー!最高やったな!」 ステージ裏にはけると、徹也がハイタッチを求めてきた。頭の上に手を伸ばすと短い破裂音がした。 「うまくいくもんやな」 呼吸を整えながら言った。 「なんやねん!その感想!あ、シンイチロウ。お前最

さよなら、バンドアパート1

1.キレる事前作法として、まず質問「バンアパは理想が低い!サザンを目指せ!」 マネージャー…

takuro(juJoe)
2年前
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中学のとき教室内にアイコラ会社ができた話

鬼束ちひろさんが好きだった。 アーティストとしてもだけど、もう女として好きだった。 会え…

takuro(juJoe)
6年前
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働く力が全然ない人間こそ!

空が火事になったみたいな夕焼けの中、交差点を猛スピードで車が行き来していた。梅田方面、豊…

takuro(juJoe)
3年前
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雨の日のアイスコーヒー

予感もあてにならない。 あの冬の日からずいぶん時間が経った気がしたけど、カレンダー上はま…

takuro(juJoe)
6年前
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寒い日のアイスコーヒー

「イマ歩きたかった道を歩いてる」 「いつからそうしたかったの?」 「金がとんでもなく無か…

takuro(juJoe)
6年前
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担任にムリヤリ魔女宅を見させられた話

学校の黒板の向きは法律で決まっている。 誰が決めたのか知らないが、窓が南側に位置するから…

takuro(juJoe)
3年前
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世界一嫌われている食べ物の話

ドラえもんの声優が変わった年だった。皿洗いのバイトをしていた。 正確に言うと和食屋の厨房なのだが、僕は料理を触るアビリティが皆無なので、食器洗いのエキスパートだった。 濡れてしまうということで、制服は半袖。絶え間なく注がれる冷たい水に手は腫れ上がった。清冽な水は肘から先を何時間も濡らし続け、毎日何かの洗礼を受けている気がした。 コンクリート剥き出しのバックヤードは、極寒の外気にさらされてので、よく風邪をひかなかったと思う。 あの冬はレミオロメンの『粉雪』が一日に何度も流