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複数課題を狙わない

 アイデアをカタチにするには「課題を解決する」という観点が欠かせない。また『複数の課題を一度に解決しようとしない』という心構えも重要。その背景を簡単に解説してみようと思う。

 複数課題を設定するとアイデアをカタチにできなくなってしまう一つ目の背景は、課題に対する解決策が見当たらなくなってしまうから。

 例えばミカンの出荷時に直面する複数の課題について挙げてみよう。出荷から時間が経てば経つほどにカビる確率が上がってしまう。また出荷後の配送中にミカンに傷がついてしまうことも。さらに、出荷から時間が経つと水分が失われ味が落ちてしまう。

 これら三つを同時に解決するには、ミカンを木から摘んだ瞬間に消費者に魔法の杖を使って届ける以外に道はない。同時に全てを解決する製品やサービスは中々に存在しない。

 複数課題を設定するとアイデアをカタチにできなくなってしまう二つ目の背景は、求められる機能が増え開発コストが大幅に増えてしまうから。

 もし仮に複数課題を同時に解決できる製品やサービスを考案できたとしても、全ての課題に対して有効なレベルに引き上げるのは多大な努力が必要。先程のミカンを例に取ると、カビを防ぎ、傷を防ぎ、乾燥を防ぐ、これら三つを満たすものを同時に開発しなくてはならない。

 残念なことに自分たちが持っている時間は有限、資金も有限。だからこそ、より少ないリソースで結果を出せるように、まずは課題を一つに絞って進めていかなくてはならない。

 複数課題を設定するとアイデアをカタチにできなくなってしまう三つ目の背景は、顧客が分岐して仮説検証の難易度が上がるから。

 例えばミカンのカビを防ぎ、傷を防ぎ、乾燥を防ぐ、その三つの課題を設定した場合、顧客は三パターンに分かれる可能性がある。ある人はカビさえ防げれば良く、ある人は傷さえ防げれば良く、ある人は乾燥だけを防げれば良い、となると顧客へのアンケートやインタビューが複数に。

 また試作設計後のテストも難題。顧客が複数パターン存在していた場合、各課題に対して作り上げたプロダクトにどれだけ刺さっているのかも人によってバラバラに。結果として誰の声を優先すべきか混乱が起きる。

 複数課題を同時に解決することができれば素晴らしい。けれども現実は中々に茨の道。そもそも複数課題を同時に解決することができる製品やサービスは滅多に存在せず、また存在したとしても開発コストが膨大になることが多く、さらには課題毎に顧客が分岐し仮説検証に苦労してしまう。アイデアをカタチにする際には、課題を一つに絞り込んでいこう。

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