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Made in Japanの呪縛

~muracoとMade in Japan~

こんにちは。iPadを新調しまして、いよいよ僕の手にもApple  M1チップが導入となり、嬉しいので、ここからさらにnoteの更新頻度を上げていこうと目論んでいます。皆さんに忘れられないうちに。

今回はMade in Japanという言葉についての所見を書いてみようと思います。

数年前にお客様と交わした会話を、先日ふと思い出しました。
代々木公園で行われたアウトドアイベントに出展した際、ふらっとブースにいらっしゃったお客様から「これ日本製?」と聞かれ「muraco製です」と返答をすると、日本以外のアジア諸国で製造しているものもあるだろうと邪推され「うまく逃げたな」などと言われました。はい。その一言がモチベーションとなりこの記事を書いています。

日本のメーカー ≠ 製品は全て日本製

 muracoは埼玉県狭山市にある、金属加工工場の自社ブランド、ということで運営していますが、アウトドアブランドとしては、海外メーカーと比較して「日本のブランド」という見え方になります。その見え方と、さらに自社工場を持っているブランドだということで、我々の製品は全て日本製だと勘違いしている方が割といらっしゃいます。

例えばInstagramなどでの投稿でそういった内容に言及していらっしゃるユーザー様が散見されますし、当社と取引関係にある会社の方も、この辺りで若干誤った認識を持っていらっしゃる方がいらっしゃいます。

私たちは日本の会社ですが、製品は日本製の物もあれば、そうではない物もあります。

日本製のmuraco製品

私たちの製品群の中で、部品の一つ一つまで、全て国内生産+国内調達のものは以下の商品です。一方、以下の製品以外は、パーツの一部を海外調達していたり、海外生産していたりと様々です。

1:NORTHPOLE 200
2:NORTHPOLE EXTENSION
3:NORTHPOLE EXTENSION SHORT
4:NORTHPOLE FAT 210
5:NORTHPOLE FAT 280
6:NORTHPOLE FAT ADD35
7:AFRICAN EAGLE TRIPOD
8:CYLINDER TENSIONER
9:ANTI SPARK RUG
10:ANTI SPARK RUG RECTA
11:“m”STICKERシリーズ
12:“m”SQUARE STICKERシリーズ

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また年内にも、1〜6のタープポールのNORTHPOLEシリーズも部品の一部を中国の提携工場での生産に切り替える予定です。

僕らは、「生産国:日本」という表現は使いますが、自分たちの口からMade in Japanを「品質を納得いただくための材料」として使った事は無いですし、これからも使うことはありません。

あくまで日本の会社で自社工場を持っていますが、自社で生産できない部品を、どこでどう作るかは、muraco事業部設計室のメンバーが、品質担保できるかどうかを判断し、国内外の製造拠点へ発注していきます。

Made in Japanの意味


「Made in Japan」の意味はまさしく「日本製」ですが、これを読んでいただいている皆様は、その言葉にどのような印象を感じていらっしゃるでしょうか?おそらく「精密な」とか「精巧な」とか「高品質の」といった言葉を連想するのではないでしょうか?

僕にとって、これらは正解であって、正解ではありません。

僕の感じるところでは、日本人が作るから凄いとか、海外の人が作るから駄目と言う短略的な印象ではなく、日本の消費者の「品質に対する過剰な要求」に対応する為に長年蓄積され熟成されてきた感覚で、言うなれば「日本人が無意識に且つ日常的に享受する事のできる、日本製の高品質な製品及びサービス」がMade in Japanの言葉の上に付加された印象だと思っています。

日本では作れなかったプロダクト

muracoは当初からアウトドアの総合ブランドを目指すという事業計画を作りました。その中で、テントやタープはラインナップ構成上、非常に重要な位置付けといえ、ブランドスタート時には製品ラインナップに入れておく必要があると感じていました。

テントの縫製は設備も人も、相応の設備、縫製技術が必要だと感じていましたが、タープに関しては、布は薄くとも、縫製箇所は基本的に直線が多いので、例えば、洋服や、バッグなどと比較し、そこまで難易度は高く無いだろうと感じていました。

今もラインナップしている“HEXA ULTRA”というタープは、元々国内で製造し、Made in Japanと謳おうと、数十社の国内縫製工場にサンプル制作を依頼しました。しかしそこで直面したのは、どの工場にも話すら聞いてもらえないという事態でした。おそらく設備の問題や、扱い慣れない生地などが問題だっただろうし、僕の伝え方にも問題があったとも思っています。 

しかし、その事よりもベースにあるのは、やったことの無い品物に対して、満足のいく品物を作る自信がない。今までの商品の質(素材や大きさなどの)が違うからできない、わからない。という感覚なんだと感じました。すなわち、made in Japanが担保できないと。

ただ、おそらくそれだけではない、根深い日本製造業の暗部を垣間見た気がしました。

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Made in Japanの呪縛

僕の感じるところでは、我々製造業を取り巻く環境として挙げられる、高コスト化(材料など製造原価高騰)、日本型の分厚い産業構造、長期間のデフレに端を発する、低利益で不安定な産業構造が足枷となっていると感じます。

技術的にはできるだろうが、過去に経験のない仕事は、仕掛かってどんな壁にぶつかるか分からない。その壁によって、収益が見込めなくなる可能性があり、それはリスクだ。という感覚から、過去の取引の無い、やった事のない仕事に対して、ある種のアレルギーが出るのです。実際にこの感覚は我々金属加工の業界でも往々にして存在します。

結果、おそらく多くの事業成長の鈍化した中小の工場では、なんとなく"頃合いで中庸な仕事"を中心に受託し、チャレンジングな仕事は断っているのではと感じます。それが何を意味するかと言えば、技術レベルの停滞です。技術の停滞はすなわち衰退と同義です。

既存の経験や技術を活かし、新たな領域に踏み込めればそれはリスクではなく、成長の糧となりますが、それをリスクと捉え中庸な仕事を選び続け、Made in Japanだと言うのであれば、Made in Japanの言葉自体が、技術や経済の進歩を阻害する要因とも捉えられます。

高品質の象徴としての「Made in Japan」という言葉は、日本で作られた全ての製品やサービスに当てはまるものでは無く、チャレンジを繰り返し、他者が到達できない領域に到達した者にのみ与えられる称号のようなもので、それ以外の日本製品はただ「日本製 = 日本で作られた製品」です。

そしてその称号は消費者が感じ認めるものだと思っています。

生産国や人種の議論は無意味

現在のものづくりは我々のような中小零細規模の事業者であっても、国際化とITの力で世界中の企業が生産や販売の拠点になり得ます。

その状況下で生産国がどこだ、なに人が作っているかなどを槍玉にあげ、そこを根拠に善悪を解くのはナンセンスです。何処にでも、誰にでも、語るに値するストーリーは存在します。

muracoの生み出す製品は冒頭でお話ししたとおり、海外で作られるものも多く存在します。そこには日本の生産者達と同じように、真摯に事業にかける想いを持っている企業、人が存在しています。

僕らはイチ事業者として、国内外の協力企業と共に、「やっぱりmuracoはいい」と言っていただけるよう、生産国に関わらず、ユーザー様にご満足いただける製品を作り続けたいと考えています。

また、決して安売りはせず、お取引いただく協力企業の皆様が「muraco(シンワ)と仕事して良かった」と言っていただけるような事業にしていきます。

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