歴史を変えたシューズ・変えられなかったシューズ②~ナイキヴェイパーフライ4%、ナイキの1強と言われる時代へ~
・はじめに
このシューズ出る2017年まで、自分の周囲でナイキのシューズを履いている人は見かけませんでした。それ以前のナイキの主力のレースシューズはストリーク6で、のちに世界記録保持者となるキプチョゲ選手が履いていました。
ちなみに当時のキプチョゲ選手は2015年のロンドンマラソンで、当時の世界記録保持者を破るほどの実力者でした。
そのキプチョゲのフルマラソンで2時間切りを目指す「イネオス1:59チャレンジ」のために開発されたのが、カーボンファイバープレート内蔵のヴェイパーフライ4%です。
・ヴェイパーフライ4%~もしかしたらアディダスから出ていた?
シューズのミッドソールに弾力性の素材を入れることで、ランニングエコノミー(少ない酸素消費量で速く走れる力)が向上することが分かっていました。
ヴェイパーフライが開発される前の2014年に、カルガリー大学でカーボンファイバープレートをミッドソールに入れることで、ランニング効率が1%向上するとの文献を公開しました(文献)。カルガリー大学はアディダスと結びついてる印象があるので、この研究がもっとうまくいっていたら、アディダスがカーボンシューズの覇権をとっていたのかもしれません。
その後2017年に、ランニング効率をその4倍向上させたランニングシューズが公表・発売されました(文献)。
ランニング効率が4%向上したということで、その名をヴェイパーフライ4%と名付けられました。
そして2018年のベルリンマラソンでキプチョゲ選手が、世界記録を1分以上縮める2時間1分39秒で優勝しました。以後この「ナイキの厚底カーボンシューズ」がランニング界を席巻します。
箱根駅伝がヴェイパーフライ色に塗りつぶされていくのも2018年からです。(文春オンラインより)
・塗り替えられていく世界記録
世界は厚底シューズが席捲し、世界陸連がなにもしない間に世界記録が次々と書き換えられました。
2020年になりようやく規制ができましたが、ソールが40㎜でカーボンプレートが1枚までというものです。その規制は、それまでのナイキのシューズは全てOK、新しく後発で開発した8社が逆に規制に抵触するようなものでした。
そして2017年以降しばらくは「ナイキの1強」と言われた時代が続きました。
これまでの歴史では、約1ケ月で使用禁止・記録取り消しのあったブラシシューズ、記録は容認されたものの約1年で使用禁止になった高速水着のレーザーレーサーのような迅速で公平な対応はありませんでした。
「金銭と選手寿命を引き換えに記録を得る」
これは技術ドーピングであるとの文献もあります。(文献)
・市民ランナーにおける効果
そしてトップランナーだけでなく一般市民ランナーにも影響が及びました。
カーボンシューズは一般に速いランナーほど恩恵は受けやすいと言われています。そして個人差もあると言われていて、皆が同じ効果が得られるわけではありません。
海外のサイトで根拠は乏しいですが、どのくらいの恩恵があるのか書いたサイトがあるので貼っておきます。
自分はここまでの実感は得ていないのですが(自分はカーボンシューズにしてハーフで1分、フルで2分記録が短縮しました)、この数字をみて厚底シューズを求めない人はいないのではないでしょうか。
厚底シューズはそれまでのシューズの価格より2倍程高く、半分ほどの耐久性の印象です。なので記録を追い求めると、かなりお金がかかる趣味になってしまいました。
・現在のランニング文化への影響
コロナが明けました。
ただ国内のマラソン大会は、軒並み参加者の減少がみられます。
アールビーズが行ったアンケートでは、
「コロナ以降まだ大会参加しないランナーが、参加しない理由」の5位に「参加料が高い」が上がっています。また「一度も大会に参加しないランナーが、参加しない理由」の3位に「参加料が高い」が上がっています。(アールビーズのランナーのアンケートの結果より)
おそらく大会参加費のみではなく、シューズもウォッチもサプリメントも、全てにお金がかかるようになってしまったことが大きいのではないでしょうか。(自分の以前のNoteより)
別にカーボンシューズがないならないでよいと思います。微妙なIAFFのナイキへの忖度?がシューズの高騰を生み、ランニング文化を衰退させているのでは?と邪推しています。
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