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都市木造への考察⑤ 「つな木」プロジェクトについて|TBSラジオ「ACTION」出演(文字おこし)

2020.08.28 「SOCIAL ACTION」(16:00〜16:10頃)

TBSラジオで放送中の「ACTION」。金曜パーソナリティは、武田砂鉄さん。現在Nikken Wood Labにて開発中の木質ユニット「つな木」について、コンセプトや今までのご活動、今後の展望などについてお話してきました。

武田:この時間は世の中の問題、課題を解決するためのアイデアや、それに取り組む人達を紹介するソーシャルアクションのコーナーです。

幸坂:はい、今日取り上げるのは、「災害時にも大活躍、たった30分でデスクからベッドまで何でも作れる木材キット」についてです。組み立て式の家具を作るのって結構大変ですよね。机とか棚とか。

武田:「あきらめろ」と言うような説明書が付いていますからね~

幸坂:ちょっと絶望してしまうんですけれども、今日紹介するのは細長い木材と、接合部品の金属だけのシンプルなセットで、組み立てから解体、さらに移動も簡単にできてしまうという木材キットを作っている話題のプロジェクトなんです。これは大手建築設計会社の日建設計によるプロジェクトでして、デスクや机を一つ作るのに大人2人いれば30分ほどで組み立てることができるというものなんですね。オフィスやカフェ、ショップさらには災害時の仮設の医療ブースなど、様々な現場での活躍が期待されているということです。

武田:大人2人いれば30分で組み立てられると言うと、凄いなと思いますけど、まあこういった疑い深い人間なんでね、まあ~無理だろうと思ってますよ。

幸坂:ちょっとね~私も苦手だからな~組み立て。

武田:まあでもね、苦手意識を持っている人は多いでしょうね。そうは言ってもって、みんな疑ってますよ、たぶん。

幸坂:今日はですね、「つな木」プロジェクト開発代表者で、株式会社日建設計の大庭拓也さんにスタジオにお越しいただきました。大庭さんよろしくお願いします。

大庭:よろしくお願いいたします。

武田:早速なんですが疑ってしまっていますが(笑)

幸坂疑ってますが(笑)

大庭やめてください(笑)

武田:どんなプロジェクトかというあたりかを、まず詳しく教えていただければ。

大庭:はい、「つな木」プロジェクトはですね、「つなぐ」と木材の「木」と書いて「つな木」と言うんですけれども、弊社の木質木造開発研究チームの我々Nikken Wood Labが日本の森林保全に欠かせない木材利用促進を目的に開発したのがきっかけです。木材の「角材」と「クランプ」と呼ばれる接合金物と、移動用の車輪で構成されたものを基本ユニットとしていて、コンセプトとしては「全国、どこでも、誰でも」同じものを使って、デスクとか棚とかベンチそういった色々なものに活用していこうというような取組みです。

武田:確かにこれ、一部をね、持ってきてくださいましたけど、本当に金具は一つ同じだし、木材と2種類しかないんですよ、この組み合わせだけで作っていけるということですよね。

大庭:そうなんですよ、レゴのようなイメージで、ですね。

武田:これは「どこのパーツなの」みたいなことがないってことですよね。

幸坂:そうですね、すごいシンプル!

大庭:シンプルですね、もうこの2つしかないです、要素としてはですね。後は周りにファブリックのようなものを被せれば、ブースのようなものになったり、こういったアクリルの飛沫防止のつい立になったりというようなことも出来るかなと考えています。(※スタジオの飛沫防止用のアクリル板を指さしながら)

幸坂:そうですか、実際に活用されている所っていうのはあるんですか?

大庭:はい、今年の6月に徳島県庁さんの全面的な協力で、そこのオフィスに「つな木」プロジェクトとしては全国初となる本格的な実装を行いました。徳島県庁のスマート林業化プロジェクト推進室に、14台の「つな木」を置きまして、もちろん県産材の徳島すぎを使わせていただきました。県庁職員さん皆さんで組み立てていただきまして、まあすごく好評だったのですけれども、何よりもこう作られているプロセスで、皆さんが汗をかいて笑顔に「こと」がこう生まれたなという風に、僕も気が付かない学びありました。

武田:まあでも今これパンフレットをね、ちょっと手元に頂きましたけど、ほんといろいろとそれこそDJブースとかね、小さい舞台であるとか、こうマーケットみたいなものを作ったりとか、もちろんベンチもそうだし、あるいは同じ型で作っていってアスレチックみたいなものを作ったりとかいうことで、かなり可能性がたくさん広がっている感じはしますけどね。

大庭:はい、夢は膨らみます。

武田:これでも災害時にも役立つんでしょうけれども、これは「つな木」プロジェクトの今後はどういうような計画というか展開を考えていらっしゃいますか?

大庭:そうですね、今年の徳島県庁さんのそのトライアルを皮切りに、いくつかトライアルを考えているんですけれども、一番近いもので10月に、栃木県の足利赤十字病院で、仮設医療ブースのトライアルを予定しています。これはコロナの第2波への備えということもありまして、医療従事者、先生方とですね、自ら作っていただいて、その効果を検証しようという風に考えています。また最近コロナだけではなくて、地震とか豪雨とか自然災害も本当に頻発していますので、その全国どこにでもあるその一般流通材を使ってですね、非常時に弾力的に対応できるシステムというか社会インフラみたいなものになればいいなという風に思っています。それを我々Nikken Wood Labとですね、日建設計の医療設計チームやエンジニアチームとみんなで開発しているというようなことになりますね。
「つな木」のやっぱり真骨頂と言いうか一番の特徴は、日常時にもホールのベンチとかカフェと言った、病院のいろいろなところで使われているものを、非常時に組み替えて、そういった災害時に使うということで、365日使うことができるんですね。なので災害時のための先行投資や備蓄するスペースを備えるというより、日常的に使いながら災害時に迅速かつ経済的に対応できるものになれたらなという風に思っています。

武田:まあ今本当にやっぱりそういう災害が多くて、急遽こういうものを作らなければいけないといった時の、その強度みたいなものがすごく問われますけど、やっぱりこれを組み合わせていく事によって強度も補償されるところはありますよね。

大庭:そうなんですよね。本当に大変な時にコロナですぐに何かを作るというのは大変だと思いますので、まあこういったどこにでもあるっていうものはやっぱり日本全国の「木」かな、という風に考えています。

武田:この「つな木」プロジェクトと、今ねえ、おっしゃっていたのは、まあ県庁であるとかそういった病院利用ってことでしたけども、この個人で利用していく可能性というのはこれから考えていらっしゃるんですか?

大庭:ええ、もちろんそういう風には考えています、はい。今、木材(の規格寸法)に合った大きさで、手に触って危なくないようなクランプ(接合金物)を開発中ですので、今後来年にかけて製品化を考えていこうという風には思っています。

武田:そもそもこのなんでこの木材で行こうと大庭さんは目を付けられたんですか?

大庭:やはり木材というのは全国どこにでもありますし、何か建物を造るということはクリエイティブな側面がありながらも、何かをこう破壊してしまう側面もある中で、やっぱり我々は建築を造りながら何かこう都市とか街を良くしていくという姿勢や地方経済を盛り上げていこうとす姿勢が必要に思っています。そういう観点から、最近ではどのプロジェクトにおいてもまず木を使う可能性について考えています。

武田:でもなんかこの一般的なイメージだと、なかなかその林業というもの自体がこう衰退しているってな事を聞きますけど。

大庭:はい、日本の国土の3分の2が森林で、その内4割が人工林ですね、つまり国土の4分の1が人工林なんです。それがもう今使い時、切り時を迎えていて、それをほったらかして置くと、それこそ自然災害、水害とか土砂災害ということにつながるので、我々はもう使命としてまずコンクリートとか鉄よりも木造を選ぶというようなことが大切なのではないかなと思っています。

武田:まあそういった木を使用していくことによって、そこでまた環境を循環させていくと。

大庭:環境を循環して、森林資源の循環を考えていくと、「作れば作るほど国土を守る」みたいな、そういったことが可能になるのかなという風には考えています、はい。

武田:まあでも確かにお話しを聞いていると、そしてこういった今パンフレットなんかを見ているとね、作れそうという感じになってきますね。でもまあパーツが少なくて、確かにこのパーツをシンプルにすることによって、でもシンプルなんだけど、シンプルがゆえに作り用によってはいろんなバリエーションが出てくるっていうのは、発見な気がしますね。

大庭:そうなんですね、なので徳島県さんとかと一緒にお話しながら本当に作ってもらって「実はこれは大変だったよ」とかですね、まあそういうことを我々設計者が理解しながら一緒になってですね、こういったものを開発していくことがオープンイノベーションとに繋がっていくのかなあという風には思っています。

武田:大庭さんはいろいろあれですかね、いろいろ家具を購入して説明書を見て作ろうと思った時に、ちょっとこれはね~

大庭:いや~結構ですね、僕も買うんですけれども、だいたい一週ぐらいほったらかしにしちゃうんですよね。

武田:あれ~切ないですよね。

大庭:切ないんですよ。

武田:引っ越した時に、気持ちが追い付かないんですよ、説明書に。

大庭:「つな木」がいいのはやっぱり一回何か作った後でもそのほかのものに組み替えるっていうことができるので、少し飽き足り、あと部品をちょっと増やしたなと思ったら木材屋さんで同じ大きさの木材を買ってくれば変化させたりできて、まあそういう変幻自在の楽しさはあるかなという風に思います。

武田:でもまあ何か本当に、可能性を感じるプロジェクトだなあという風に思いましたね。

幸坂:はい、大庭さんありがとうございました。

大庭:ありがとうございました!

幸坂:ソーシャルアクション、今日は「使い方は無限大 木材プロジェクト つな木」のお話しでした。

(文字おこし:大庭拓也

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