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記事一覧
SIDE STORY:或る看護師の日記 完
2021年6月14日
あめ
先生に話した。
迷子になりそうなこと、黒い海のこと。
こわいこと、ぜんぶぜんぶ。
そうしたら先生が教えてくれた。
こわくなったら私の白衣を探しなさい。
くらい所では私の白衣は目立つだろう、って。
先生はすごい。
これでくらい所もこわくない。
先生はやっぱりわたしの神さまだ。
このあとは先生がお昼ねしよう、って言っていたから
お昼ねに行ってこようとおもう。
蜈育
SIDE STORY:或る看護師の日記5
2021年6月13日
くもり
境さんの担当になって明日で1週間。
やっぱりあの人は不味い。
最初はお話しできれば、と思ったけど無理だった。
何度話しかけても聞こえてくる言葉はつらいものばかりで引っ張られそう。
全て先生の言う通りだった、なのに。
いけない、とわかっていた。
けれど、もう共感してしまっている。
ここ2、3日見る夢は全て真っ暗で。
何もない海岸を私はずっと歩いてる。
あの人と、
SIDE STORY:或る看護師の日記4
2021年6月4日
あめ
夜勤明けに先生に呼ばれた。
どうやらあの患者さん……境(かがみ)さんの意識が戻り病棟を移動したらしい。
休み明けから私の担当になる。
注意事項としては3つ
・せん妄の症状があるため注意すること
・本当に自殺しようとしていたのか確認しないこと
・話すことを理解はしても共感はしないこと
私は昔患者さんに共感し過ぎてしまって危うくなったことがある。
だからこの3つを
SIDE STORY:或る看護師の日記3
2021年6月1日
くもりのちはれ
今日は休みだったから久しぶりに出かけた。
新型ウィルスのワクチン接種までは、って我慢してたから約1年ぶり……本当にうれしい。
行ったのはちょうど営業が再開されてた新夜ノ島(しんよのしま)水族館。
平日だったからそこまで混んでなくてゆっくりできた。
特に入り浸ったのはクラゲドーム。
夜ノ島、って水族館の名前だからなのか、展示や音楽も本当に静か。患者さんの叫び
SIDE STORY:或る看護師の日記2
2021年5月29日
くもり
今日の病院は少し賑やか。
平日に面会に来れなかった人たちが廊下を歩いていくのが見えるし、
夜勤の時の静かな雰囲気と違って小さな子の嬉しそうな声がする。
いつか私のフロアもこうなるといいんだけど。
でもきっと……ないんだろうなぁ。
そういえば、帰るとき扉の鍵を閉めてたら先生に呼び出された。
ちょっと気になってた自殺未遂の人、意識が戻ったら私が担当するらしい。
だか
SIDE STORY:或る看護師の日記1
2021年5月26日
くもり
今日は皆既月食。
満月が欠けていくのが見れるってニュースで言ってたから楽しみにしてたけど、くもりだったから何も見えなかった。悲しい。
仕事……私はいつも通りだったけど、救急外来は騒がしかった。
後で教えてもらったけど、海で溺れた人が運ばれてたんだって。
それでその患者さん、財布も定期もスマホも持ってなくて結構大変らしい。
身元が不明だから誰に連絡すればいいのかわか
掌上拾集 ー散逸する言葉を集め掌中の玉と成すー
こんにちは、たまづきです。
今回はおはなしパートとお知らせパートがあります。
おはなしは別にいいや、という方は目次から「……結局何を~」に移動してください。
おはなし 暗い中を歩いていた。
どうやらここは夢の中のようで、明かりのない闇の中でも己の手が見えることがその証左であった。夜毎訪れるこの世界には、人はおろか動物すらおらず、五感に届くのは「無」のみである。この状況には慣れていて、今宵もい
……そうだ短編集をつくろう
はじめまして、たまづきと申します。
普段は絵を描いたり模様を描いたりして余暇を過ごす一般人です。
そんな私が、ふと零れ落ちた小さな欲から短編集の作成を決めました。
この呟きから出た企画です。やります。
どのように進めていくのがいいのか、参加者は集まるのか……色々と悩むことが多いですが、とにかく久しぶりの創作なので楽しんでやれればいいな、と思います。
企画実行にあたり、参加者さまにお願いする約