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分数の季節


子どもが分数の割り算に取り掛かる年齢になると、いつも思い出すものがある。

それは、ジブリ作品の【おもひでぽろぽろ】

我が家に三度、その季節がやってきた。

現在中2の長女の時も、小6の長男の時もその頃になるとわたしは【おもひでぽろぽろ】のタエコを思い出していた。

なぜ? そこまでタエコに思い入れがあるのかというと、おもひでぽろぽろを映画館で見たときのわたしが、小さい方のタエコと同じ歳だったから。

タエコはわたしで、わたしはタエコだった。

映画の中で、大人のタエコは言った。

「分数の割り算が、すんなりできた子はその後の人生もすんなり行くらしい。」

子どもながらに、えっそこ?うそ?!
なんとく焦った。

その時、分数の割り算がすんなりできたかどうかは思い出せない。

だけど人生の速度ってそんなことで決まるの?
なぜかどうしょっ…そう思ったことは覚えている。

大人のタエコはわたしにはひどく大人に見えた。東京でひとり暮らしをしているそれだけで、凄いことのように思えたのだ。

だから、その大人のタエコが言うんだもの、きっとそうなんだと思った。

タエコの同級生でのんびりしてる算数の出来ない子がいた。
その子は何故か、分数の割り算のテストだけは100点!だった。

その子は早々にに結婚。あっという間に2児の母へとなった。
その時のタエコはまだ1人。農業熱を高めつつの人生の好きを模索中。

ほら、その対比からもなんかそうなる気がするやんか!
きっと子どものわたしはそう思ったのだ。

分数の割り算の計算がさっぱり理解できない小学生のタエコ。
なので、もちろんテストも散々たる結果。

見かねた母親が姉にタエコに勉強を教えるように言う。

姉が計算の方法をどれだけ教えても、リンゴまで持ち出しこねくり回して理解しようとしないタエコ。

姉は、
「リンゴは持ち出さなくていいの。掛け算はそのまま。割り算はひっくり返す!そうおぼえればいいの!」

と、最後に言い放つ。

タエコにはそれが出来ない。
なぜかを知りたいのだ。

性格には2通りがある。

物事の本質を理解してからしか進めない性格。
あまり深く考えずそうか!の勢いで人生を切り開く性格。

はたしてどちらが幸せなんだろうか?

結局は、すんなり分数の割り算ができなかったタエコにも幸せがまっていた。

まんまぎばちゃんやん!と子どもでもツッコミ入れちゃうほどのトシオのもとに駆け寄るところなんて、子どもだったわたしには未だみぬロマンスにものすごくドキドキしたものだ。

タエコだって、ちゃんと幸せになった。
すんなりかは、幸せの中に入っていない。

ただ、遠回りか、最短距離で行くかの違いなのかもしれない。


素直なお友達が、早々に手に入れた幸せがほんとに幸せだっのかは分からない。
もちろんそれは、タエコだって。

人生の一コマだけを切り抜いて幸か不幸
は決めれないのだ。

不幸を経由して思い知る幸せがはある。
不幸を超えたものがだけが見える世界だってある。

1度大病してからの生還を果たした人とかを見てもそう。人間のステージ確実に上げてくる。

主人のお友達で全て逆に配置されて臓器を持つ人がいる。まるでチャンス大城。

他にも色んな症状を抱えていたため、誕生と同時に死の宣告を医師から受けたのだそう。
奇跡的に命を繋ぎ、今は逆が臓器以外は特に何事もなく元気に生きている。
そんな彼は今35歳。

成長してしばらくしてその事実を親に聞かされた彼は、自分の人生はおまけのようなものだと悟った。
無かったものがあるんだ! ただ生きているそれだけで嬉しいのだと。

人一倍笑顔の多い彼の秘密を知った時ちょっと泣いた。

幸せって速度ではない。


そして、気になるのが我が家の次女のこと。分数の割り算どうだろう…。すんなり派?


なんて思いながら、パソコンでパチパチとこの文を打ち込みながら、横目で次女を見ていた。

ワークを解きながら、一生けん命に分数の割り算と格闘している。

ぶつぶついいながら、よくよく聞いてみると、ピザで換算しているやん!

タエコのリンゴと変わらんやんつ。
次女は、チームタエコの方なのか?


そっと引き続き横目で見守る中、授業でまだ習ってない帯分数が出てきたところでわたしへの質問。

「これってピザが1枚と、さらにもう1枚のピザを4つにわけた1つってこと?」

ピザかは知らんけどそうゆうこと。理論は合ってる。タエコより理解している。

そして、ワークを解き進める間に計算はどんどん複雑になる。

その度に登場するピザの枚数もどんどん増えていく。
最終的にはノートにいっぱいのピザ。

えっと…これは算数のノートやんね??


ノートはピザで埋めつくされてしまったがピザ換算がうまい具合にはまったのか最後の問いを終えたところで丸つけして全問正解!

ガッツポーズ!

「ピザー!最高や!これで計算すると無敵!!」
と、タエコもびっくりの分数の割り算マスターの次女。

最後は
「ピザ食べたなったわ」

「確かに食べたいなー」

なんて言い合いながら、今日の勉強はこれにて終了。

大人のタエコをも遥かに追い越してしまった切なさはあるものの。
おもひでぽろぽろがまた見たくなった。

大人のタエコより大人になった今なら言ってあげたい。  

どうせ、最後は幸せになる。

遠回りも悪くないよ。
人生を迂回する時間に焦る時もあるが、


どうせ、大丈夫!
どうせ。





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