【感想文】風の便り/太宰治
寄せては返す「アラ、いいですねぇ」の波本書『風の便り』は、後輩作家・木戸と先輩作家・井原による往復書簡が延々と繰り広げられており、そしてその内容はあまりにくだらなく、というか死ぬほどどうでもいい事柄が続出していてこれはもう著者・太宰治の筆が最高潮にノッている秀逸な作品である。はっきり言って、後輩の木戸は先輩の井原をナメている、ナメくさっている。その「ナメ加減」が絶妙だと私は言いたい。というのも、井原は再三に渡り木戸の態度を改めさせようと反省を促すが、木戸は謝罪や反省の雰囲気を