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【感想文】風と共に去りぬ 第1巻〜3巻/マーガレット・ミッチェル

『Don't Call Me Nigger, Whitey』

私はこの作品を新潮文庫版ではなく岩波文庫版で読んだのだが、集中して読み進めることができなかった。

なぜだろう。馬鹿だからだろうか。
確かにそれも理由の1つだが、最大の理由は作中に「三代目 古今亭志ん朝」が現れるからである。
といってもこれは、スカーレット、アシュリーの他に志ん朝が登場して行動を共にするのではなく、私が文章を黙読する際に、どうしても志ん朝の声で再生されてしまうという個人的な現象を指している。
どういうことなのか、作中の会話を抜粋しながら以下、説明する。

まず、マミーの、

<<紳士がた、ご自分の欲しいもの、わがっでねえからでごぜえますよ。たぶん欲しいんだっでわがっでる程度で。たぶん欲しいって程度のもの、与えでおきなすっときゃあ、みじめにもなんねえ、オールドミスにもなんねえ。たぶん欲しいってえのは、小鳥のような食欲の、知性なんぞこれしきもねえ娘っ子で。自分よりも知性があるってえとレディじゃねぇ、結婚しだぐねえってなるんでごぜえますよ>> 第1巻:P.186

という、口ぶりは「五人廻し」の田舎者を彷彿とさせる。田舎者の形態模写において志ん朝の右に出るものはいない。

次に、プリシーの、

<<『ミス・エルシングさま、病院で。クッキーに言わせっりゃあ、朝早い汽車で負傷兵がたんとやって来たってんで。そいでクッキーはスープを作って持ってくんだそうで。クッキーが....』『クッキーがなんて言ったかなんて、どうだっていいの』>> 第3巻:P.160

という、これは正に「寝床」における、がんもどき製造法のくだりではないか。

<< さあ、急いで行って、すぐに帰っておいで』『へえい』>>
<<『急ぐのよ!のろま!』『へえい』>>
同:P.158

これは丁稚の定吉といったところであろう。間延びした「へえい」が聴こえてくる。

<<するってえとバトラーさまが -以下略- >> 同:P.206

志ん朝ほどの名人になると「するってえと」でリズムを整えるという。

私が気になって集中できなかった理由はそうした会話に起因しているのである。
特に、第3部21章~24章におけるスカーレットとプリシーの掛け合いは、さながら番頭と丁稚の呼吸である。
翻訳者・荒このみ氏は落語好きに違いない。
なぜなら筆が乗っているから。

といったことを考えながら、私はスーツを新調した。

以上

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