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レオス・カラックス以来、「Modern Love」で走る。~フランシス・ハ /ノア・バームバック監督(2013)

ノア・バームバックという名前は、以前より気になっていたのですが、ふとしたことから、彼の作品Netflix配信の「マリッジ・ストーリー」が作品賞など多くのアカデミー賞にノミネートされたと聞いて、まず彼の代表作「『イカとクジラ』(The Squid and the Whale)」を見ることに。映画のタイトルは、離婚を巡って争う男女のメタファーらしく、かつ監督の実体験はベースにあるそうですが、ニューヨークは、ブルックリンを舞台にしたこの映画、ピンクフロイドの「Hey you」を息子が学園祭でパクリ、賞をもらったり、フランスの夭折の監督ジャン・ユスターシュ「ママと娼婦」のポスターが壁に貼ってあったり、クロージングはルー・リードの「Street Hassle」とセンスを感じる文学、音楽、映画の引用がどんどん出て来て、大変気に入りました。


そこで他の作品もということで、見つけたのが、この映画「フランシス・ハ」。
こちらは、2013年の作品で、当初は4館の上映が、口コミで、232館に拡大する大ヒットしたそうです。こちらの主演と脚本は、彼の現在の奥さんであるグレタ・ガ-ヴィック。彼女はその後、2017年にアカデミー賞にノミネートされた「レディ・バード」で監督デビューする人。そして、最新作は「バービー」


保守的な地域サクラメント出身で、ニューヨークに出て、モダン・ダンサーを夢見、日々日常と格闘するチャーミングな27歳が描かれます。
この映画は、モノクロで、音楽はジョルジュ・ドリュ―によるフランソワ・トリフォー監督の「私のように美しい娘」「家庭」「大人はわかってくれない」からの曲が使われ、ニューヨーク舞台なのに、ロマンティックなパリの雰囲気も醸し出します。
そして、主人公がブルックリンの街を走る時に流れるのが、デビット・ボウイの「Modern Love」。これは、もちろんレオス・カラックス監督「汚れた血」のオマージュ。

主人公が衝動的にパリに行き、街を歩くときに流れるのは、ホット・チョコレートの「Every 1's a Winner」も気が利いています。

「今も街を歩いていると、自分は本当にニューヨークに住んでいるんだって気持ちがこみ上げて、泣きそうになるの」という監督/脚本のグレタ・ガ-ヴィックが語る通りの不器用な女子を描いた素晴らしい映画でした。

ボウイが出演した「クリステイーネ・F」から思いついたという「フランシス・ハ」という変なタイトルの理由は、観てのおたのしみ。


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