音楽評論・デビッド・ボウイのOutside(1995)

デビッド・リンチの映画、ロスト・ハイウェイ(1997)で使われたデビッド・ボウイのI’m Derangedは昔から好きな曲だ。

シンプルで軽めのジャングル・ビート(当時UKではやっていた)に断片的なピアノと、おそらくブライアン・イーノのアンビエントなシンセ、そしてその上で喘ぐようなボウイのクルーナー・ヴォイスがかぶさる。(映画の導入部ではボウイのアカペラからはじまる。)

ナイン・インチ・ネイルズのトレント・レズナーの編纂した同映画のサントラはリンチ映画の中でも屈指の音響空間を創り出している。2010年代以降、レズナーは映画音楽を多くこなすようになるが、この作品はその先駆けともいえる。

Derangedの入っているボウイのアルバムOutsideは映画の二年前の1995年にブライアン・イーノによるプロデュースで発表された。

デビッド・リンチのツイン・ピークスに触発されたフィルム・ノアールなナレティヴ(物語)が歌詞に散りばめられている。

Outsideはニュージャージー州の架空の街、オックスフォードが舞台、ネイソン・アルダー捜査官が、十四歳の少女、ベイビー・グレースの殺人事件を追いかける。容疑者は謎のアウトサイド・アーチスト、リオン・ブランク…

Outsideという題名はOutside Artも意識しているのだろうか。ティモシー・レアリーのOutside, Looking Inという名言も思い起こされる。

Outside Artは精神病者のアートである。無意識の中で、受け手のことをいっさい想定せずに創り出したされる芸術だ。無垢の心(純粋な邪悪性も含めて)が紡ぐ原初のアートだ。

ボウイは映画版のツイン・ピークス(ローラ・パーマー最期の7日間)にジェフリー捜査官としてもカミオ出演している。

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