最近の記事
- 再生
Ryuichi Sakamoto B-2 Units Live (1982)
この録音は貴重である。YouTubeにアップされたのも確か2回目。1982年当時NHKのサウンド・ストリートの一環で公開収録されました。 抽選にはずれこそはしたが、中1のぼくはラジオの前にかじりつき、いつもより奮発したTDKのクローム・テープで番組をエア・チェック(ラジオ番組を高音質で録音すること)。 以後しばらくウォークマンでテープがすり切れるまで聴いたものでした。 坂本龍一のセカンド・アルバムと同じバンド名、B-2 Units。ただしバンド名は複数形のユニッツ。1981年リリースのアルバム、B-2 Unitは、XTCアンディー・パートリッジ・プロデュースによるロンドン録音でした。 バンド一番の話題は、当時初のソロアルバム「H」が出るか出ないかの頃の元プラスチックス、ギター担当の立花ハジメ。ソプラノ・サックスが初々しい。タイトル曲「H」では、教授が自らドラムを叩く。この後ニューウェーブ界隈で話題になる鈴木慶一の元妻、鈴木さえ子もドラムで参加している。 テクノデリックと浮気のぼくらの合間で、ブラス・セクションの入った生バンドでテクノ以外の可能性を模索する試みが新鮮でありました。 観客から赤ちゃんの鳴き声が聞こえたり、アンチ(?)の人たちが鳴らす爆竹が聞こえたりするのもご愛嬌だ。夜ヒットや、戦メリ、ひょうきん族で国民的中年アイドルになる寸前のとんがった教授の姿が目に映るようです。 白眉は後でハジメのHmにも収録される「Arrangement」とYMOのBGM収録の「Happy End」(後ろでシャカシャカ鳴っているのはハジメの自作楽器アルプス一号)。 1984年に教授のソロ、「音楽図鑑」に入るレプリカの原曲も入っています(二曲目、Demo 4)。 Playlist: 1 Foto Musik 2 Demo 4 (Replica) 3 The Arrangement 4 Happy End 5 Thatness Thereness 6 Demo 6 7 H 8 Robin’s Eye View of Conversation 9 Piano Pillows 10 Saru To Yuki To Gomi No Kodomo 11 Dance 12 Epilogue 13 In E
- 再生
音楽評論・デビッド・ボウイのOutside(1995)
デビッド・リンチの映画、ロスト・ハイウェイ(1997)で使われたデビッド・ボウイのI’m Derangedは昔から好きな曲だ。 シンプルで軽めのジャングル・ビート(当時UKではやっていた)に断片的なピアノと、おそらくブライアン・イーノのアンビエントなシンセ、そしてその上で喘ぐようなボウイのクルーナー・ヴォイスがかぶさる。(映画の導入部ではボウイのアカペラからはじまる。) ナイン・インチ・ネイルズのトレント・レズナーの編纂した同映画のサントラはリンチ映画の中でも屈指の音響空間を創り出している。2010年代以降、レズナーは映画音楽を多くこなすようになるが、この作品はその先駆けともいえる。 Derangedの入っているボウイのアルバムOutsideは映画の二年前の1995年にブライアン・イーノによるプロデュースで発表された。 デビッド・リンチのツイン・ピークスに触発されたフィルム・ノアールなナレティヴ(物語)が歌詞に散りばめられている。 Outsideはニュージャージー州の架空の街、オックスフォードが舞台、ネイソン・アルダー捜査官が、十四歳の少女、ベイビー・グレースの殺人事件を追いかける。容疑者は謎のアウトサイド・アーチスト、リオン・ブランク… Outsideという題名はOutside Artも意識しているのだろうか。ティモシー・レアリーのOutside, Looking Inという名言も思い起こされる。 Outside Artは精神病者のアートである。無意識の中で、受け手のことをいっさい想定せずに創り出したされる芸術だ。無垢の心(純粋な邪悪性も含めて)が紡ぐ原初のアートだ。 ボウイは映画版のツイン・ピークス(ローラ・パーマー最期の7日間)にジェフリー捜査官としてもカミオ出演している。