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湖と山とパン

スイスとフランスの両親をもつ友人マガリーは三日月型の「レマン湖」にとけようとするオレンジ色の空を臨みながら言った。「ジュネーブ湖」とか「ローザンヌ湖」と土地を限定される名前で呼ぶことを望まないの。

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あの山が、ほら25年前にいっしょに行った山。語尾をひゅひゅんとあげて彼女がしゃべる。母が住むのはあっち。父が生まれたのはあっち。出会ったのはちょうど真ん中よ。

国境は目には見えない。けれどしゃべる言葉も通貨も国際的な政治体制もことなる。

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わたしたちは、彼女の山小屋にパンとチーズとぶどう酒と、それと「旅する土鍋」をもちこんで、チーズフォンデュをこれでもかというほど笑いながら食べた。25年前にふたりで食べた味と変わらないわね、どんな味かというと、大笑いしてる味。

→2018年記事 チーズフォンデュ
→2018年記事 彼女とのこと

パンが残ったらテラスに並べましょう。彼女とまだ15歳に満たないだろう牛使いの少年にあいさつしながらパンを並べた。

(どうしてパンを並べると思う?)

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翌日、彼女がパンを切るときに愛用しているナイフを、わたしたちは探しに街に出た。

スイス製と記されているそのナイフ。北イタリアのプレマナという町の刃物職人家族がつくっているそうで、この町は、かつて15世紀にはスイス連邦だったという歴史もある。ローザンヌにあるセレクトショップのマダムが説明してくれた。4人の兄弟と、その家族が、今もなお湖と山を想いながら、パンを愛しながら、刃を研いでいるのだろう。

ナイフには美が。土鍋には味が。 

#旅する土鍋

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12月14日〜22日です。
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