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ボクシング2戦目を終えた天心に、これだけは言いたい

天心ボクシング第二戦を見た。試合自体は後から見逃し配信で見たんだけど、バイト終わりにXを開いたら、天心の判定勝ちという文字が飛び込んできて、やはりそうか。と思った。今回は「ボクシング界のニカ」こと、那須川天心のボクシング第二戦、夢と狂気の戦いについて記事を書いていきます。


1 「KO出来なかった」になってしまった天心

倒そうとする意志が見えたのは間違いないが…

今回の試合は、プロモートの仕方があまりよくなかった気がする。前回の試合は、当然天心の「ボクシング初戦」なので注目を浴びた。それに対して今回は、日本の知名度が全くないメキシコの選手で、ファンも結構「今回もどうせ勝てる相手なんだろうなー」と思う人が多かっただろうし、当然初戦よりは2回目の方が注目は低くなるだろうから、違う宣伝の仕方をしなければいけない。それで今回の天心への課題は、「KO出来るかどうか」という、ありきたりすぎるものになってしまった。
言うまでもなく、天心はKO力が高い選手ではない。それに、次の項で述べるけど、相手は2戦目にしては強すぎる選手である。だから、天心は今回、終わった後、「今回もKOできなかったなww」と、アンチへの格好の餌を与えてしまうことになった。
しかし、そもそも、何でそんなに天心にKOを求めるんだ?天心は、今回もラウンドをフルに使って、卓越したボクシングスキルを見せた。2戦目にしては上出来すぎると言えないだろうか。確かに素人目に見てもパンチ力や畳みかける力は一流とは言えないかもしれないけど、スピードは解説の方も言っていたようにピカ1だし、1ラウンド目には相手の右のパンチに合わせて完璧な左ストレートでダウンを取って見せた。確かに、あのパンチにさらにパワーが乗っていればそのままKOできたかもしれないけど、あのスピードとテクニックにさらにKOできるパワーを求めるのは、逆に今の天心に期待しすぎではないだろうか。YouTubeチャンネル「格闘キャスト」のシン氏いわく、天心は「相手のパンチを外して、隙を狙って自分のカウンターを当てるマスター」だそうだ。また、シン氏は、「ガードを固めて何もしない相手を自分から崩すのは得意ではない」という旨の発言をしていた。後者も大得意なのは、ご存じ井上尚弥だろう。それにプラスして、「ラウンド後半は、天心もKOを狙って強いパンチを打っていたけど、そういう時は天心らしくない。もっと常に相手の隙を作ることに徹していた方が特別なボクサーに見える」という旨の発言もしていた。天心はこういうスタイルだし、(キック時代も、ポイントで勝っているときは、最後のラウンドは倒しに行こうとせずに安全に終わらせることが多かった。なんであとは捌き切れば勝つのにわざわざ危険を背負って倒しに行く必要があるんだと思ってそう)見てる人もこれからもスピードと技術でボクサーとして駆け上がっていく天心に、KOばかり求めるのはやめよう。ボクシングはエンタメショーではなくスポーツなのだから。「KOしてない。それがどうした。判定で完勝したから問題ない。」そう僕は思いますよ。

1.5 天心のプレースタイルに対して

すげえファッションスタイルだな

僕も正直言うと、判定よりはどっかでKOしてもらう方が興奮はする。でも、判定勝ちだと完全に勝ってないとかそういう考えは嫌いだ。スポーツなのだから、究極はどんな形でも勝てればなんだっていい。男子テニスでも卓越したディフェンス能力で未だテニス界の頂点に立つノバク・ジョコビッチに対して、華やかなフェデラーやナダルなどのプレーと比較してつまらないという意見は多数存在するが、ボクシングや格闘技はKOか、それ以外か(ローランド風)みたいな意見があまりに多すぎる。選手たちは、死のリスクさえ背負って過酷な減量をしてこの危険なスポーツのリングに立っているのだから、ましてや勝った人に対して「でも判定だからな」は違うやろ。
あと、単純に、攻守一体で技巧的な選手も好きなんだよね。判定ですが何か?みたいな図太い選手。メイウェザーもそうだし、イスラエル・アデサニヤ(彼はクソ長いリーチで安全に戦うスタイルだけど)とか、天心もそう。天心は特に、スピードがとんでもないからね。天心もキック時代とかの発言見ても、判定で勝ち切るのも上手さで、最後まで立っていたからすごいみたいなのは違う(工事戦)みたいな発言から、自分のスタイルにこだわりを持っているのが感じられる。でもね、やっぱり今のままのパワーだとどっかで行き詰ってしまうんだろう。最初はスピードに慣れてない相手を翻弄できて、ポイントで大幅リードしたとしても、(それこそ、キック時代の3Rぐらいまでは)5R、6,7,8、、、になるにつれ徐々に相手が対応してきて、今回の相手みたいにガード固くして前に出続けられたら、ラウンドが長くなるほどどっかでつかまってしまう可能性も増える。今回は実力差はあったし、逆にストップ寸前までラッシュで持って行った場面もあって流石だったけど。ガードの上からでもうかつにもらえないなと思わせるパワーがあれば相手もプレッシャーを感じて、より安全に戦えるかも。とはいえ、ホントにスピードとかカウンターとかのスキルもすごいし、幼い時から磨き上げてきたセンスはボクシングでも通用してるし、何より日本のボクサーにはあまりいないよーなスタイルで、面白いじゃないですか。これからも、パワーはつけたとしてもKOアーティストは目指さないで、天心の得意なスタイルで戦ってほしいですけどね。

2 天心の相手弱すぎwという意見について

グスマン君。

まあ、これはまだ二戦目に過ぎないというのが、全ての答えの気がする。
百田尚樹氏も、Xで「相手はメキシコ・チャンピオンという肩書きが信じられないほど、お粗末なボクサーだった」(一部抜粋)と書いていたが、まあ、ボクシング大国メキシコの数あるボクシング団体の中のチャンピオンの一人と考えれば、別にそんなにお粗末じゃないでしょう。少なくとも、かつてRIZINでパッキャオの刺客とかいう大層な触れ込みで、実際はパッキャオと面識ないしパッキャオはそいつのこと知らんという意味わからん相手と天心がキックの試合やってましたが、それの100倍ましでしょう。結局、ボクシング2戦目とかで大切な金の卵を、負ける危険のある相手となんてやらせるわけないよ。井上尚弥だって、プロ二戦目はよく分からない相手と戦ってるし。そもそも最初の方は勝てる相手を選ぶというボクシングの慣習がいいのか悪いのかはさておき、2戦目にしてこのレベルの相手に勝てる天心を、純粋に褒めるでいいのではないだろうか。

3 村田諒太氏の発言について

日本ボクシングの英雄は、何を思う

また、ネット上では、天心がリングで行った勝利者インタビューに対し、会場で解説として来ていた村田諒太氏が、少し思うところがあるといった感じでコメントしたことも話題になった。「あんまり調子にのんなよ?」といった感じなのかな?具体的に何を言ったかについては見逃し配信やネットニュースを見てもらえばいいと思うが、ちょっとおもしろいなと思った。
勝利者インタビュー後は、天心に対して指摘を行った村田氏だが、試合中では、たびたび天心の成長や、良い部分などについてコメントしていたし、試合中は、KOにこだわってほしいみたいなことは言っていなかった。話題になったコメントについても、終始圧倒する天心に対して素直に評価する姿勢を見せていたし、そのうえで、ファンが見たいものを見せるのがプロといっていた。そういう意見は、別になにも間違っていないし、仮に少し不快感を示したとしても、あの程度なら別に問題はないと思う。天心が世界中に放送されているんですよね?からの流れが嫌いだったのだろうか。
I can world chanpion!? こんな英文が日本中に、世界に広まってたまるか!だからボクシングは学がないやつがやるスポーツだと思われるんだよ、こいつ勝利者インタビューで英語使いたいならせめて共通テスト9割とってから使えよ調子乗んじゃねーぞ」
と思ったのだろうか。

4 天心の言動について ~頑張るアンチたち~

これが舐めプに見えてしまう人がいるのは確かだろう。


那須川天心は、慎重な発言をする選手が多かったりパフォーマンスが地味だったりする、どことなく陰気な雰囲気が漂う日本ボクシング界では、異質な存在だ。いい意味で調子に乗ってて、SNSやメディア出演時には、自分がマンガの主人公かと思わせるような発言なども飛び出す。キャラなのかわからんけど、ガキっぽい言動が目立ったり、試合中に唐突にトリケラトプス拳やったり、YouTubeでは思い切りエンタメによったり、テレビ出演も積極的に行ったりと、生まれつきそうなのか、理想の自分を演じているのか、その両方なのかはわからないけど、彼はみんなの太陽であろうとしている。当然そんな彼には、日の光が届かないような場所に住んでる陰オブ陰なネット民たちには嫌われてる。少し社会性がないようなところもあるから、それをこころよく思ってない人は少なくないようだ。
今回も、リング上で「テンシーーン、ナ・ス・カ・ワーーー」とリングコールを受けたとき、ルフィのギア5,ニカのワンシーンを再現したり、試合中もたびたび、ギリ舐めプではないラインのノーガードや足のステップなどのパフォーマンスをしていた。8R残り1分近くでもパフォーマンスをしていて、そんなことしてるならもっとKO狙えよって思った人もいただろう。いちいち癇に障るネットのひねくれ陰キャたちはたくさんいるだろうけど、天心にはこのキャラを変えずに突き進んでほしい。天心自身は、アンチの声とか全く気にならないとか、人生で辛いことないとか発言してたりするが、本心で言っているかはともかく、ふと耳に入るアンチの言葉や声が予想以上に心をむしばむこともあるから、気にしないでほしい。そもそも、今回ファンの望むKOが~とかあるけど、キックの時からのファンは天心がキックキャリア後半は判定ばかりだったけど応援してる人ばかりだし、天心の関わる2つの興行は、天心が出るからこそアマゾンプライムで生中継してもらえるし、今回の中で一番人もお金も集めたのは天心なんだから、正直天心様様の興行だろう。というか、現役の日本人選手では現状でも2番目に影響力があるのでは?井岡一翔とどっちが上なんだろう。総合的に見れば天心の気がする。今回も、天心の試合を見るために、多くの子供たちが集まったし、ボクシング界に天心が来て感謝感謝なのはボクシング関係者だよな。だから、結果的に天心のボクシングキャリアは順調極まりないことは間違いない。3戦目武居由樹とか言わず(もちろんそうなるなら拍手喝采だけど)、じっくりここから10年計画で、いつしかキック時代を知らないファンばかりになっている状況が楽しみです。

まとめ 現実ヲ魅せる天心

カンケーないけど、最近多用してるこの言葉に対して、カンケーないっしょソープ気持ちいいっしょってコメントあって笑ってしまった

那須川天心という男に、僕ら格闘技ファンは毎回期待してしまう。平本蓮や朝倉未来とかが抱かせる「幻想」とは違う、純粋なワクワク感。メイウェザー戦も、どう考えても1%も勝てるわけないのにファンに何かあるんじゃないかと思わせる力があるから、これは論理もへったくれもなく、本能的に人を期待させる力があるのだろう。どことなく格闘技界全般が放つ、陰な雰囲気(最近はRIZINとか、少しずつ華やかなものになりつつはあるけど)を打ち破るように、キック時代から快進撃は続いている。賛否両論を恐れない態度でアンチも一定数いることは間違いないが、会場で多くの子供たちが天心を応援していたことが彼のやっていることの正しさを証明しているだろう。今回は僕が天心が好きだから、だいぶ天心贔屓で文章を書いたが、彼のことが大好きな理由は
「キック戦績42勝無敗」
この、疑いようのない確かな実績だ。モチベーションが少し落ちても、1,2回は疑惑の判定はあれど(どっちの勝ちでもいい試合はあれど、天心が明らかに負けてた試合はない)彼はキックキャリア初期から駆け上がっていってずっと頂点に立ち続けたことは、何よりも彼の凄さを物語る。頑張れ天心。これがこの上なくシンプルな、今回の文章のメインテーマだ。これからも夢ではなく那須川天心という現実を世界に突きつけ続ける彼に、目が離せない。

おまけ 武尊の本読みました。武尊、最高。

この前、武尊の「光と影 誰も知らないほんとうの武尊」(ベースボールマガジン社)を読みました。マジで面白かったし、彼への尊敬の念が止まらなくなったよ。彼は高校時代からうつ病や、パニック障害といったメンタルの不調に悩まされながらも、ずっとハードな練習を続けてきて、高校通いながらどうしてもムエタイの本場タイで練習したくてバイトして30万溜めて自費で行ったり、プロになるため、プロで勝ち上がっていくためにどんなことでもやって見せた。「行動力、すげえな、、、」と思わせられる場面は数え切れないほどあったし、彼が試合で例えようのない気持ちの強さを発揮する理由は本からも少し分かった。彼は根がつよいのではなく、精神が不安定になるぐらい、なっても突き進むぐらい自分に負荷をかけている。それをデフォにしてるのは、一般人にとって正解なわけがないが、K-1を背負い続けた彼はこうするしかなかった側面もあったのかもしれない。彼は、実に7年の間ファンからは試合が熱望されていた天心について、本でこう言及している。(当時天心戦前)
「『光と影』ですよね。向こうが『光』で、僕が『影』なのかと感じて、すごく悔しかった。オレが命を懸けてやってきた試合は『影』に過ぎないのかよ、と」
これは、当時の彼の心の叫びなのだろう。
前回、井上尚弥vsフルトンの試合で武尊について言及して、結果的に少しマイナスなことを書いてしまったが、武尊は「人は努力でなんだってできる」ことをこの本で説いていた。彼は、キックボクシングのスーパースターであり、心に不安をかかえた一人の人間だ。彼がキックボクシングで僕らに希望を持たせ続けることに、感謝しかない。



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