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落ちこぼれシニアのリベンジ読書~『読書について』ショウペンハウエル著~

<<感想>>
さすが岩波文庫の著書。考えさせられる。
いわゆる「読書促進PRの書」ではない。読書するにあたっての心構えを記している。
視点は鋭利であり、新鮮だ。
 
「読書とは他人にものを考えてもらうこと」。
「1日に多読を費やす勤勉な人間はしだいに自分でものを考える力を失っていく」。
 
まさに衝撃のメッセージである。
思索する読書。つまり「熟慮を重ねることによってのみ、読まれたものは真に読者のものになる」という。食事と同じ。食べることではなく消化してはじめて栄養となる。
だから「読んだことを後でさらに考えてみなければ、精神の中に根をおろすこともなく、多くは失われてしまう」ということになる。
「考える」という行為をしなければ、知識として蓄積もしなければ、それを智慧にかえて生活の充実をはかることもできないということか。
 
さらに、面白い指摘もある。
「悪書は精神の毒薬であり、精神に破滅をもたらす。良書を読むための条件は、悪書を読まぬことである。人生は短く、時間と力には限りがあるからである」。
それでは「良書」とは何なのか。ここに著者の強い思いを感じる。
大切なのは、「時代遅れにならない読書法」に励むことではなく、「あらゆる時代、あらゆる民族の生んだ天才の作品だけを熟読すること」、そして「重要な書物はいかなるものでも、続けて二度読むべき」ということ。つまり、新刊本ばかりに目を奪われるのではなく、古今東西の「古典」を腰を据えて読みなさい、ということなのだろう。
中でも、「ギリシア、ローマの古典の読書にまさるものはない。たとえわずか半時間でも、古典の大作家のものであればだれのものでもよい。わずか半時間でもそれを手にすれば、ただちに精神はさわやかになり、気分も軽やかになる。心は洗い清められて、高揚する。旅人が冷たい石清水で元気を回復するようなものである」という記載は具体的でわかりやすい。
とても参考にはなったが、個人的に古代ギリシアやローマの書物は縁遠い。
耳の痛い指摘を受けた気分である。

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