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ワクワクリベンジ読書のすすめ~『戦争と平和 第二部第五編』トルストイ著~

愛を中心とした人間模様の章とでもいうのだろうか。
まったく戦争の匂いが感じられない。特に女性は着飾ってのパーティーや観劇三昧。いわゆる「平和」のパートになる のか。

その一方で、いよいよ登場人物についての深まりが顕著となってきたように思う。
この章で言えば、まずはピエール。これまでフリーメーソンに入るなど活動的であると思ったが、ここに来て一気にトレ ンドダウン。生活のいっさいの魅力が失われてしまったらしい。そしてパーティーに、酒と読書の日々。 さらにロシア中の人から注目されている「昔気質のロシアの旦那」として、「彼の財布はみんなに開放されているので、 いつもからだった」(新潮文庫 P.569)。
そんなピエールも今回の最後には、ナターシャとアンドレイ公爵の間で二人の相談相手となっている。なんとなく頼りが いのある存在になってきた。

問題はナターシャである。やはり彼女は世間知らず。精神的に自立できておらず、まだまだ子ども。結局、アンドレイ公 爵が療養から帰ってくるまでの1年間を待てなかった。
さらに、ボルコンスキイ家から快く思われていない。 言動を受け止めるにあたって、強い予期不安を感じてしまったようである。
もっともここまでは同情できないわけではない。
しかし、ワリーシイ公爵のバカ息子アナトーリの甘いささやきにのってしまった。 ある意味、アナトーリは女性に対して百戦錬磨。ナターシャをくどき落とすくらいは朝飯前だったのだろう。
ただ、ナターシャ自身がもっと大人であればよかっただけの話。結局、アナトーリにのぼせ上がったナターシャはアンド レイ公爵の妹・マリアに婚約破棄の手紙を送ることになる。
一見、バカな行為と思われるが、順調に結婚できたとしても、家の格やカルチャーの違い、舅・小姑問題なども予想さ れる中、婚約破棄はナターシャにとって結果オーライだったのではと見ることもできる。

果してナターシャはこれからどうなるか。 そしてピエールのポジショニングはどう変わるか。
もっといろいろな人に注目してみたいが、登場人物が多すぎるため今回はピエールとナターシャの二人に注目してみ た。
それにしても「戦争」はどうなっているのだろうか。

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