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プレゼントをもらった朝に

真夜中にふと目覚めた。冷えた窓を開けて、空を見た。まだ、真っ暗。遠くの道路を車が走る音が聞こえる。けれど、人が起きている気配はどこからも届かない。ひとり、ぽつんと。空を見上げる。

今夜は、思っていたよりうんと冷えたようだ。パジャマの袖をさすりながらベッドへと戻っていく。

ベットの頭の辺りで、大きめの猫サイズな人影が何やらしている。わたしの膝くらいまでの高さをした人間(?)が枕のあたりを、するする、ごそごそ。見直してみても、やはり人影に見える。うちの猫じゃないな。

こんなの、目覚めた時に居たんだっけ。あれ、何しているんだろう。

ベッドに近づいていくと、小さな人影がぎくりと動きを停めた。わたしを見ている。

「え。あー。怪しいものではありません」小さな人影は声を出す。声というより、頭の中に直接、字幕が浮かんでくるような話し方。

ちょうど、この家に来た時にプレゼントが足りなくなって、夢を補充しに来たらしい。夢の補充にはベッドの枕を使うと効率が良いからと、空っぽのベッドを探していたという。ちょうど、わたしが窓の外を見ていたから、都合よく夢をそこから取り出していたらしい。

わたしの夢。何がありましたか。プレゼントになるくらい、夢の補充に足りましたか。

わたしの問いに、小さな人影は気恥ずかしそうに震える。

「それがですね。思っていたよりも夢がほかほかしていて。うっかりつまみ食いしてしまったのですよ。ちょうど、お腹もすいていたものでね」

この人影、夢を食べるらしい!!なんだ、この人影。クリスマスだからサンタクロースのなかまかと思っていたら、別ものの妖精だったのか。

「おいしかったから、また。時期を変えて時々、食べに来てもいいですか」

そういわれても、わたしは困る。夢を食べられたらどうなるんだろう。

……と目が覚めた。

自分の夢、希望、未来に向かう望みや願い。そういったものを食べる妖精がいるとして、わたしのはおいしいのだろうか。何をもっておいしいといえるのだろう。

願いに向かう、頑張ってみたい。あれこれと、夢をもって進んでいるその姿を、応援してくれる妖精さんだったらいいな。

すっかり目覚めた枕元には、クリスマス限定と書かれたお菓子の袋が置いてあった。かさこそと動く気配がしていたのは、これだったのかもしれない。大人になってから迎えたクリスマスの朝に。プレゼント(らしきもの)が置いてあったのは初めてだ。ありがたく、いただこう。ごちそうさま。

食い意地が張っているのは、あの妖精さんよりもわたしだった。

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