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📙ランりェむ

わたしの負け わたしを生んだ䞖界の負け  どうでもいっか もうぜんぶ  うんざり

【】

「おたたせ ゎメンね䞋駄箱のなか片付けるのに時間掛けちゃっお」
そう蚀いながらあなたが芋せおくれたコンビニのビニヌル袋には結構な量の画鋲や錆びた釘が入っおいた 
「ううん党然いいよ おかげで限の途䞭からすっごい聎きたい聎きたいっおなっおた曲回もリピヌトできちゃったし」
「えあの分くらいあるや぀」
「そうそれ だから別にいいよ 今日限䞊がりで時間もいっぱいあるしさ 行こ」
「うんそうだね  でもさぁこうやっおしょっちゅう攟課埌の裏門で埅ち合わせしお手繋いで海のほうに歩いおくずかさほんっず『逢瀬』っお感じしちゃうよね」
「えヌ䜕それ 私たち女同士だし二人ずもそういう気は無い同士じゃヌん ほらい぀ものゎミ箱だよ 早くそれ捚おおきお」

あなたは「はヌい」ず空返事し぀぀私から離れお海岞通りに出るひず぀前のバス停になぜか眮かれおいる某コンビニの叀びたごみ箱ぞ自分ぞのいじめ甚品であるがらくたを投げ入れた ガシャンッ! ず小さな音がする

そうしお戻っお片手を差し出しおきたあなたぞ私はごく自然に腕をからたせるずいうちょっずした悪ふざけを仕掛けおみた
「おっ 意倖ず倧胆ですなあ」
「あなたが『逢瀬』なんお蚀葉䜿うから詊しおみただけ その蚀葉今日も珟代文で読たされたすっごい叀い小説に出おきたから䜿っおみたくなったっおだけでしょ」
「はヌい そうでヌす あんな叀いのは珟代文じゃねえよっおいうさ 基準がわかんない」
「ふふっそうだね でどう キスずかしたくなっおきた」
「ぜヌんぜん もしうちらがそうだったらすっごい運呜的なのにねぇ ざんねヌん」
「ほんずそうだよねぇ」

あなたがよりによっお私なんかに近づいおきたずき私はそういう意味なんじゃああなたが突然いじめやハブりの暙的になったのはそういうこずがバレたからなんじゃあず譊戒しおいた                 今わかりやすく暙的になっおるのはあなただ 私のあれやこれやに興味を持぀ひずなんかクラスにはいない だからい぀別れおもおかしくなくなっおる珟状を知っおる人はいないだろう                ずもかくクラス替えからすぐの頃にハブりの新ネタずしお公衚された通り私はヶ月ほが音信䞍通が続いおるけど倧孊院生の圌氏がいる女だ。知っおるでしょ 

「でもお願い今日はい぀もの座るずこたで こうやっおいさせお なんかすっごく安心 するんだよね」
「ふふっ ほんず疲れおるんだねぇ 圓然かうん分かった いいよ」

先に手を握るちからをぎゅっず匷めたのがどちらだったかはよく分からない ずもかく私たちはそのたたでい぀もの波止堎の特等垭たで歩いおいった

【】

「よっず」「よしっず」
「ふふっよしっお䜕よ」
「ちょっず掛け声倉えおみただけですヌっ そのくらい別にいいでしょヌ」
「うんそうだねゎメン」

䞀瞬の嫌な沈黙 あヌあ悪い癖だ

「もヌう 私には謝んなくおいいから 私ず あなたっおそんな気遣うずもだち同士じゃないでしょヌ」
「そうだね ありがず」
「どういたしたしお よしっ到着っ」
「あ 今床はそっちが “よしっ” お蚀ったヌ」
「ほんずだ あははっ」「あはははっ」

私たちはぶ厚くお頑䞈なコンクリヌトの壁ぞ䜎いずころから跳び箱の芁領で飛び乗る そうしおさらに䞀段高くなっおるずころぞ同じ芁領で飛び乗る。そこから数歩進んだ所にあるオレンゞ色のペンキで䜕かの仕切りみたく倪い線が匕いおある地点そこが私たちの特等垭だ

倧抵は背の順で160センチ䞁床の私が先に登りはじめ170センチ台前半のあなたが続く お互い躊躇なくこなせおしたうからあるいは原因や開始のタむミングは違うけどハブられおる同士ずいう関係性が頭にあるから 理由なんお知らない ずにかく私たちはお互いを助けようずは䞀切せずに特等垭たで行き先頭を歩いおたほうがオレンゞ線区切りの目前に腰を䞋ろす               孊校カバンをその向こうの防砂ブロック矀に萜ずすのは嫌だからふた぀のカバンは埌から来たひずの暪ぞ重ねお眮かれる どうせ誰も芋おないからどうだっおいいんだろうけれど颚が吹いおきたずきには繋いでいないほうの手で制服スカヌトを抌さえる

私たちの間の暗黙のルヌルはそんなずころだ話題に䞊げちゃいけない事なんか決めおないけどふたりずも話したくない事は話さないし詮玢だっおしない そんな無邪気な幎霢じゃないしそんな無様な幎霢でもないからさ私たち ねそうだよね
「んどした」
「ううん別になんでもない」
「そっか」「うんそう」

ふたりはたた海の方ぞ向き盎った  もう海氎济シヌズンでもないしなかなか高難床らしいこの蟺りの海で沈む倕日をバックに波ぞ乗ろうずするサヌファヌさんを芋かけるこずはあたりない だからここは ふたりの特等垭な んだ                   はじめに蚀い出したのはあなたの方だっけ そうだ「海行こうよ」なんおいう颚なこずを蚀い出したのはあなただった

【】

ふたりは話すこずがそれたでたるっきりな かったわけじゃない だけど友達みたいに しお話をするようになったのはここひず月かふた月あなたがあなた “も” クラス党䜓からハブられる人になったその埌だ

私は高校に入ったばかりの頃に歳の瀟䌚人ず付き合っおいるずいう噂(圌の幎霢以倖は正解)をばら撒かれた  はいっ これにおおじさた達に奜かれる高玚ビッチずいうキャラ蚭定䞀䞁䞊がりっ                そうしおごく自然な流れで同玚生からも䞊の孊幎の人からも距離を眮かれるようになった 私ずは話しちゃいけないわけじゃない だけど仲良くなったら即倱栌退堎 

どうやら今も盞倉わらずそういうキャラ蚭定は掻きおいるらしい 入孊した時の圌氏さんずは歳の差問題が匕っかかったわけじゃあない転勀が理由で別れるこずになった   ハブる偎に奜郜合だったのは私がろくに間を空けず医孊郚院生の今圌ず付き合えちゃったずいうこずだ              ぜんぶ偶然に起きただけなんです あそうだからどうだっおいうの高玚ビッチさん 私のキャラを䞍動のものにしたその事実も ゎシップ奜きの知らない誰かが速攻でリヌク(笑) したらしい             私はあなた方に興味なんかこれっぜっちもないんです 攟っおおいおもらえたせんか 残念でした そんなお願い届くもんか

私にはもっず子䟛だった頃からあれもこれも考え過ぎお止たらなくなる癖があった だからだろうか呚りにいる子たちず仲良くなるのは昔も今も苊手だ              

圓然いじめやいじりの的にされるこずは高校の前にも䜕床かあった だけど独りでばかりいる人間は どうやら暙的にし蟛いらしい い぀も倧しお酷いこずをされる前に勝手に飜きられおそれたで通りの攟っおおかれる立堎を簡単に取り戻しおきた

そう 私はどこの教宀でもずっず独りみたいなものだった それでもその倖偎には気質や性質を理解したうえで接したり仲良くしおくれる幎の離れた友達や仲間恋人なんかがい぀も居続けおくれた だから私はこれからもこのたたでいい いいよね

そんな時だったクラスにすっかり居堎所を 倱くしたあなたが近寄っおきたのは こんなの運呜でも必然でもない ただの気たぐれ 私たちはふたり共そうだず分かり合っおいるからこんなに気楜に過ごせおいるんだ
「ふふっ」
「えどうしたの」「なんでも ふふっ」

【】

「ねえそもそもどうしお私のこずこの堎所に行こうっお誘っおくれたの」
「ぞっ」「ぞっお䜕よ あははっ」
「もうっ でもそっか 話したこずはないか 別にそれらしい理由はなかったんだけどね 䞀番近くにいおこういう無茶苊茶なお願い事聞いおくれそうな人があなただった 悪いけどほんずにそれだけなんだよね」
「ふぅん“近く” か じゃあさもしも孊期始たったずきの垭替えでふたりが瞊に䞊んでなかったら他を探しおたっおこず」
「うヌんそうだろうね だけどさ同クラで誘えるのなんおあなたくらいしか居なかったしよその組の友達ずか考えたり探したりはしただろうけど結果やっぱりあなたにしおたず思うんだ」
「あらそれは光栄だわ」
「ほらヌ あなた声のトヌンが䜎めだから そういう台詞も䌌合うし それに前ちょっず話したずき『頭ん䞭ぐるぐる女』同志だっおいうのも発芚しおたでしょ」
「ああそういえばそんな話したこずもあったっけ」

【】

月のテスト期間䞭のこずだ いかにも “垳尻合わせです” ずいう空気感でテストずテストの間に入れられおた「道埳」の時間。その䞭で匱点や欠点を共有し合っおみたしょうずいうお題が出された           くじ匕きで同じ班になったあなたず私はそれぞれの蚀葉で “色んな事を同時にどこたでも考え過ぎお頭がパニック状態みたくなっちゃうんです”ず告癜しおみせた       

そうだ そうしお「あ このふたり被っちゃったね たいっか あはははっ」なんお笑い合ったんだった そのあず倏䌑み明けたではクラスの䞭の他人ずいう間柄のたただったけどそっかあれがきっかけだったのか
「おっ 思い出しおきたみたいだね」
「うん でもさだからっおよく芪友どころか仲良しでもないただのクラスメむトのこず誘えたよね 勇気あるわぁ」
「えヌっ そっちだっお初回から意倖ず乗り気だったくせにヌ」
「はいはい だっお意倖すぎお面癜そう っおいうかワクワクしちゃったんだもヌん」

月のあの日授業が党郚終わったあず教科曞その他を片付けおいた私は自分の背䞭がペンか䜕かで぀぀かれるのを感じた     えっ 私なにかしちゃった そりゃあ最前列に垭があるくせしお埌半の分思い切り居眠りしおたのは耒められた事じゃないだろうけど 

同玚生ず仲良くするのに慣れおない私はぎょっずしお怅子ごず党身であなたの方を振り返っおしたった そこはハブられおる女同士クラスの他のひず達はほんの䞀瞬動きを止めただけですぐどうでもいいず刀断しおそれぞれの垰り支床を再開した

私は少し䞊にあるあなたの目を芋たたた どうしたらいいかわからずに固たっおいた 

するずあなたは困ったようなかわいい笑顔をしおみせおから
「ごめん驚かせちゃったね ちょっず䞀緒に来おくれる」
ず䞀息で蚀い私の腕を取っお教宀の倖ぞず歩き出した 意倖な組み合わせだけど、他のひずがざわ぀く様子はなかった

ハブられおる人間は自分たちに危害を䞎えない限り空気ず同じ扱いをしなくちゃいけないず決められおる のほうで隒ぐのは勝手だけどそこぞの参加もハブられおる私たちには関係がない 攻撃されない限りにおいおは思いの倖お気楜なご身分なんだよ

校門や玄関ずは逆方向になるから攟課埌時間にはあんたり䜿うひずのいない階段 あなたはひず぀䞊の階ぞず続く螊り堎たで無蚀で私を匕っ匵っおゆきそこたで来おようやく腕を解攟した                私は本圓に䜕が䜕だかさっぱり分からずにいた 䜕をされる このひずの今の立堎からしお私をいじめその他の暙的に䜿うこずはしないだろう そんなこずしたっお䜕の利益にもならない じゃあ䞀䜓なに 䜕なの

「えヌっずたずはびっくりさせちゃったみたいでなんかゎメンね」
「ううん それはもういいよ 私が驚き過ぎたのも悪かったし それでどうしたの」

「あのさあなたっおいっ぀もすぐに垰っおるけど孊校の埌っお䜕か甚事あるかな」
「別に䜕にもないけど」        「よかった あのさ ちょっず私ず寄り道しおくれないかな そんな遅くはなんないからね」

私の返事ぞ少し食い気味に蚀葉をかぶせおきたあなたは嬉しそうに目をキラキラさせながらそう返しおきた 盞倉わらず事情もなにも呑み蟌めおいなかったけれど私は “もうどうにでもなれ” ずいう気持ちになっおいた  どうしおなのか悪い展開が埅っおいる予感は少しもしおいなかったし
「いいよ いこっか」
「やったありがずっっ‌」
そうしお連れおっおもらったのがオフシヌズンで静かなこの波止堎だった

【】

「おっいい顔 なんか今のあなた危険な女っお感じがしおたよ」
「ふふっ なによそれ 私の思い出し笑いそんなに劖しい雰囲気だった」
「うヌんたそんなずこかな」

ここでたた沈黙。だけど今床のは嫌な感じがしない それどころかかえっお穏やかな気持ちになれる心地いいものだ 私ずあなたは蚀葉のない時間も蚱し合えるお互いに郜合のいい関係。䞁床いい関係

【】

はあっ                 颚も波も穏やかになっおいたからあなたの ため息はひずきわ倧きく響いた。
「どした 今日のあなた特別疲れおるみたいな感じだけど」
「ありがず そうやっお盎に『倧䞈倫』 ずか聞いおこないあなたの突き攟しかた  奜き あLOVEじゃないほうのだからね」
「うん知っおる」

「ねえ ちょっずもたれ掛かっおもいい」
「いいよ 銖のぶんが䜙っお疲れちゃうのは責任持おないけど」
「ふふっ意地悪」
あなたはそう蚀っおセンチ以䞊ある身長差を持お䜙し぀぀私にぎずっず身䜓を寄せおきた ふたりずも平均より痩せおる同士だからかあなたが䜓重を必芁以䞊に掛けおしたわないよう気を付けおるのが䌝わっおくる  ああ これすごく私たちらしい距離感だな

「でどしたの 䜕かあったの」
「うん なんかさもうぜんぶうんざりずか思っちゃっおるんだよね」
私は斜め䞊にあるあなたの衚情をどうにか目を動かしおうかがう するず䜕だかぜんぶを吹っ切った様な爜やかだけど䞍穏な衚情がそこにはあった              私がそれに惹き蟌たれお䜕も蚀えずにいるずあなたはそのたた蚀葉を続けた
「進路のこずほずんど勝手に決めちゃう芪ふたりずかさあず私のこずいじめたりハブれたりできる状況になった途端それを実行したあの子ずかさ あずそういうのの呚りにいる人たち党員も なんか善悪ずかじゃなくおあのひず達のほうが正しいっお思っちゃう んだわたし」
「うん」               「あ ちなみに嫌かも知れないけどあなたは『あのひず達』偎には入れおないからね」
「そっかありがず」

私次に䜕をどう蚀えばいい       あなたの芪が嚘の孊力が盞圓秀でおいるの “だけ” を芋おその嚘を超名門な囜立倧孊どれだったかの法孊郚に入れい぀かの自分の挫折䜓隓の垳消しするよう匷迫しおいる事は聞いおる それを確実にするためこの冬から駅近の有名塟に通う矜目になったのも聞いおる

あず孊校内でのいじめが䞭孊生みたいに雑で幌皚になっおきおるのは盎接芋お知っおる私は「絶察にほんの少しでも助けたりしないで」ずいうあなたずの玄束を守り遠くから同じハブられ圹ずしお冷たく芋おいるだけだ過去の実䜓隓から䜙蚈な手出しは状況を悪化させるだけだず孊んできおいる

は『実䜓隓から』 あんたそれらしい立掟な蚀い蚳を甚意しお自分の身を守っおるだけでしょ 正矩感ずか振りかざしお立掟に戊っお孀高のダヌクヒロむンの座を確保しちゃえばいいじゃない そういう圹柄倧奜きでしょ それずもか匱い女の子でしかないあんたには無理かな ふふっどうなの

「おヌい戻っおおいでヌ」
い぀の間にか身䜓を離しおいたあなたに軜く揺さぶられ私は珟実に戻っおきた
「えっずありがずう」
「どういたしたしお あなた今思いっ切り『ぐるぐる女』状態に突入しおたでしょ」
「うん ゎメンね勝手にどっか飛んでっちゃっお」
「ううん気にしないで 私が仕掛けたようなもんだし むしろそうやっおすっごく考えおくれおほんずありがずう」
「そんな わたしなんお結局䜕にもしおあげられおないじゃない」

たた沈黙 ふたりずも倕暮れの心地よさのなかしばらく䜕も蚀わずにいた     ざあっ ざあっ  ざあっ  静かな波の音が䜕床も通り過ぎおいった それからあなたがたるで党郚をあきらめた埌みたいな柄んだ衚情でたっすぐ私の瞳を芋ながら蚀った

「それでいいの あなたは私を助けおなんかくれなくおいいんだよ」

「えそんな」
「そろそろ行こっか 倕日も沈みそうだし っおこずはバスの本数も少なくなっちゃう 頃だろうし」
「ふっ 䜕よその適圓な時間の蚈りかた」
「いいでしょヌ ほらカバン持っお 出発 進行っ」
あなたはそう蚀うず私の奜きな歌の歌いだし郚分に自分の蚀葉を乗せ郜合よくメロディを倉えながら繰り返し歌いだした

「♪ わたしの負け・わたしを生んだ䞖界の負け・どうでもいっか・もうぜんぶうんざり・わたしの負け・わたしを生んだ䞖界の負け・どうでもいっか・もうぜんぶうんざり ♪」

私はそれを聞きながらあなたず䞊んで校門前のバス停たで仲良く歩いおいった そうしお埅぀こず分 最初に来たのはあなたが乗る方面行きのバスだった         「じゃあたたね」
「うんたたね」




【】

ヌ 事件の詳现をお䌝えした            これからお芋せするのは女子生埒の机に眮かれおいた「遺曞です」ずいう前曞きの あった䟿箋です

“わたしの負け💮
 ã‚ãŸã—を生んだ䞖界の負け○          ã©ã†ã§ã‚‚いっか もうぜんぶ  うんざり”

               〔おわり〕

この蚘事が気に入ったらサポヌトをしおみたせんか