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2021年11月 読書の記録

11月に読み終わったのは3冊…少な!
いま同時並行で読みすすめている本は、数えたら6冊あった。ばらけすぎです。

今回の『反穀物の人類史』が質・量ともにちょっとヘビーで、ここのところ読むスピードも捗々しくなかったのですが…先週末から「読みたい欲」が復活し、12月でもう3冊読んだ。この勢いで年内残りの時間もたくさん読みたい。

目録(3冊)

  • ギケイキ2(町田康)

  • 反穀物の人類史(ジェームズ・C・スコット)

  • マンゴー通り、ときどきさよなら(サンドラ・シスネロス)


ギケイキ2

源義経が現代によみがえって、自分が生きてた頃のあれこれを語るエンターテイメント小説。

続編なので義経が頼朝と合流して平家を倒すところから始まるのだけど、設定や使われてる言葉や表現があいかわらずおもしろくて一気読みした。声に出して笑える日本史。

「あの一帯は山賊上がりのヤンキーばかりで…(イメージ)」みたいな感じで、侍やお坊さんといった当時の人びとの性質や土地ごとの情況が現代的な表現におきかえられている。古典文学や絵巻物ではつかみきれないニュアンスが一気に身近でリアルなものになる。今の表現におきかえられたとて、理解しがたい物事ももちろんあるけど(武士の精神論とか女子供の扱いとか)

読んでいて、物語の時間の流れるスピードが要所要所で変わることが気になってたけど、実際の義経記ぎけいき(古典文学のほう)の流れがそうなってるからだと解説にあった。文章の密度が独特で、後世わりと重要なエピソードとして語られていることがあっさり終わったりしているのもおもしろい。

反穀物の人類史

読むのにめちゃくちゃ時間がかかったけど、すごくおもしろかった。
個人的な印象としては、『銃・病原菌・鉄』と『サピエンス全史』をぜんぶまとめて読んだ後みたいな感覚(それぞれ細かいところはもう覚えていないけど、読むのにかけた集中力がそのくらいあったような気がするという意味で)。Amazonの書評にもあったけどとてもエキサイティングな本だと思う。

作者のジェームズ・C・スコット氏のことは、辺境作家の高野さんと日本中世史研究者の清水さんの対談本『ハードボイルド読書合戦』で知った。対談では前作の『ゾミア』が取り上げられていて、その内容にも興味があったのだけど(詳しくは過去のnoteをごらんください)、あまりに巨大な本だったので買ったり読んだりするのは一旦あきらめ、それより後に刊行された『反穀物』のほうを買っていた。

既存の人類史で確たる説明がなされていない、初期国家の成立過程の解を探すというのが基本姿勢としてあり、「原始の人類が農耕という生存戦略とそのメリットを認識し定住することを覚えてから、初期の国家が成立するまでには時間的な断絶がある」「農耕は人々が生き残るために選択した唯一の手段ではなく、支配階級がその支配をより強固に確立するために利用した手段」という仮説のもと、歴史学の定説をさまざまな証拠をもとにくつがえしていく。

それぞれの過程は自分のような素人でも理解できるように説明されている。筆者が掲げるいくつかの仮説はとても合理的で、読んでテンションが上がって「うおお…」となった。

また人類の初期生活共同体の脆さに関してはかなりのページが割かれていて、中でも病原菌に対する脆弱性を述べた部分は、今この時代だからこそ実感できるやばさみたいなものがあって先見の明を感じる(『反穀物』の翻訳出版は2019年)。

穀物がなぜ国家の徴税手段になりえたのか(=他の食糧では国家運営が成り立たない理由)、部族と国家の相互依存的な関係、植物や家畜だけでなく人間にも適用された「飼い慣らし」という概念など…一つでも引っかかるところがある人にはぜひおすすめしたいが、引っかかるところがない場合は読んでも退屈かもしれない。

マンゴー通り、ときどきさよなら

大型書店で随所に設置されている特集コーナーを見るのが好きで、この本もそうした一時的な場所で見つけた。

言葉遣いは平易、というか子供の言葉をそのまま写しとったような文章。アメリカでは中高生・大学生にとっての必読書らしい。ちなみに訳者は、アディーチェなどの作品も翻訳しているくぼたのぞみさん。

メキシコ系移民の家にうまれた筆者の自伝的な要素も少し入っているのだと思う。今はアメリカンドリームを追いかけてというより生活の必要に駆られてアメリカに移り住む人も多そうだけど、この物語の主人公の目を通すと、アメリカの移民街にはカオスと、だからこそもっとよくなるかもしれないという希望がまだ少しちらちらしているように見える。

一章一章はかなり短いが、思春期の記憶なんてそんなもんだなと思う。大人が主人公の物語のように、一つの出来事を事細かに長々と描写する必要も意味もない。出来事は一瞬差し込んだ光のようなもの、その印象だけが思い出として残っていく。

最近よく手に取るもの

写真集や画集をみるようになった。活字以外の本を読むという習慣があまりなかったのでそんなにたくさんはもっていない。もともとあったのは、ソウル・ライター展で買った写真集、あとはちょっと前になんとなく買ってたゴッホの画集、それから風の谷のナウシカの水彩画集とか。

先日、上野にゴッホ展をみにいった。予約制なので、3週間くらい前に行くことを決めていた。せっかくなので『ゴッホの手紙』を読んでから鑑賞しようと思っていたが、読むのにめっちゃ時間がかかることがわかったので断念。それでもゴッホ展はよかった。

というわけで、最近推しの本屋は写真集専門のbook obscura。インスタが写真集への愛にあふれていて好き。

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