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言葉とイメージの狭間で

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ヨーロッパ文化史に関する話題を中心的に扱いながら、人間がいかに考え、行動するのか?を、言葉とイメージという2大思考ツールの狭間で考える日々の思考実験場
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2021年7月の記事一覧

前の晩の残りものは昨日と味が違うから

朝はたいてい、昨晩の夕食の残りものをおかずに済ませることが多い。 いまの時期はもちろんのこと、残りものは夕食後に冷蔵庫に入れた保管し、朝レンジで温めなおして食べる。ほとんどの場合、前の晩に食べたときと味の違いを感じる。 多くのものは、出来たてで食べたときのほうが美味しい。ホテルのバイキングの料理みたいなものだ。たぶん、あれも出来たてはもうすこし美味しいんじゃないかと思う。 なので、前の日の美味しかった記憶が強いと残念に感じることもある。 かといって、昨日全部食べちゃえば

搾取の逆転――聖フランチェスコは着物をみずから差し出した

みずからの欲を満たすために、ほかの誰かのものを奪いとる。 ブルーノ・ラトゥールは「テリトリー」の問題として、現在の環境・社会問題のありようと解決に向けての方向性を論じた著作『地球に降り立つ』で、かつて帝国主義的態度で他国を侵略したヨーロッパが、いまや逆に、移民というかたちで自分たちの土地に他国の人々が無許可に侵入される状況について、次のように書いている。 ヨーロッパにとっての現状は、潜在的移民と100年契約を結んだに等しい。私〔=ヨーロッパ〕はあなたの許しを得ずにあなたの

消えてなくなる詩のようなお金を夢見て

ケイト・ラワースの『ドーナツ経済学が世界を救う』を読んでいて、こんな一文に出くわした。 新しい経済の自画像には、世界のなかにおける人類の位置も反映されなくてはいけない。昔から西洋では、人間に自然を足もとにひれ伏させ、好きなように利用する存在として描かれてきた。「人類に自然に対する決定権を取り戻させよ。自然は神によって人間に授けられたものなのだから」と17世紀の哲学者フランシス・ベーコンは述べている。 ベーコンの言葉とされるのは、彼の『ノブム・オルガヌム』中の文章だそうだ。