会話の中での聞く力

これからの仕事においては、会話力がよりいっそう大事なビジネススキルになると、ひとつ前の「会話とチームワーク」で書いた。
そして、会話の中で、自分が話すことと同じくらい、他人の話を聞く力も大事なことだと指摘し、次回はそれについて書くと予告しておいた。つまり、今回だ。

という本題に入る前に、もう一度、前提を確認しておこう。

会話力が大事になる前提として、まず、これからはひとつの目的に向かってプロジェクトを進めるチームを結成する際、従来のように、ただたまたま同じ組織や部署に属しているというだけで、別にその目的に向かうチームメンバーとして最適ではない人たちとチームを組むことにこだわる必要はもはやないという仕事の仕方の変化が関わっている。

今後はそうした目的に向かうワークをいっしょにやるのに、組織や部署の枠組みをこえて、外部からスキル面でも価値観やコミュニケーションの面でもふさわしい人をメンバーとして招集してプロジェクトチームを組むことが主流になっていくだろう。

組織の枠組みに囚われずに、必要な人同士でプロジェクトチームか組めるようになれば、とうぜん異なる専門領域に属する人たち同士のコラボレーションが当たり前のようになる。イノベーティブなものを生みだすには多様性が必要になるからだ。

その際、従来のような組織内、あるいは専門領域内だからこそ、通じる共通語や暗黙の了解のようなものは成立しなくなる。ひとつひとつ丁寧に自分の考えを述べたり、相手の話を理解することがこれまでとは違って大事になる。今までのような、なあなあの、雑なコミュニケーションでは仕事にはならなくなる。

そんな前提に立ったとき、会話やディスカッションの中で、ほかのチームメンバーの話をどう聞けばよいか?というのが、今回のテーマだ。

相手は違う世界で考え、話をしている

まず、他人の話を聞く際に前提として意識しておくべきことは、相手は必ずしも自分と同じ文脈で物事をみて解釈し、発言しているわけではないということだろう。文脈が異なれば、言葉の解釈は単純ではなくなる。解釈はむずかしく、頭を使う必要があると覚悟して臨む必要があるということだ。そう。話を聞くのは、本当は自分が話すより高度だ。

相手が自分と同じ単語を使って話をしている場合でも、その単語に込められた意味が異なるケースは少なくない。いや、単語だけではないだろう。同じ事象を異なる価値観で捉えて話していることもある。
例えば「仕事がたくさんある」という言葉だって、誰がどんな背景で言うのかによって異なり、解釈は無数にあるだろう。言った人の背景を理解してあげた上で解釈しないと、意味を間違えて対応してしまうことにもなる。

読みやすさについて誤解されていること」という記事で、理解するとは相手の文脈を理解することだと書いた。これは読む場合だけでなく、聞く場合でも同様である。
相手がどんな背景をもって、その発言をしているかを考えてないと誤解ばかりが起こる。普段の仕事や生活、専門領域の違いがあればあるほど、発言の背景は異なるのだから、相手の発言の背景を考慮して聞く必要がある。

そうやって、ちゃんと聞けてるだろうか? 僕も意識はしてるし、それなりにそうやって聞く癖づけはできてる方だとは思うが、それでも、たまに間違った聞き方をしてる場合がある。そういう時は気づいた時点で、自分の誤解を正す。必要なら相手に間違って理解したことを伝えて、あらためて話直してもらうこともある。

話された言葉の上っ面だけでなく、背景も含めて耳を傾けよう

そう。相手が話した言葉そのものを自分の文脈で理解して間違うことは少なくない。

例えば、さっきの「仕事がたくさんある」という言葉。それを残業続きの新人が言うのと、売上目標にコミットしている管理職が言うのとではきっと意味が違う。さらに売れっ子のクリエイターなどが言ったりするのとではまるで異なる意味をもつはずだ。
立場が違ったり、状況が違えば、同じ言葉はまったく違う意味を持つのが普通だ。なのに、それを僕らは忘れがちで、ついつい自分の文脈で聞いて、間違った解釈を平気でしてしまう。これはよくない。

それなのに、相手の言葉をその背景を理解せず、自分自身の立場や状況に当てはめてまったくもって誤解でしかない理解をした挙句、自分勝手な不満を覚えたりといったことはよく起こっていることだと思う。すべて自分と同じような文脈に生きていると勘違いしてしまって、まわりへの配慮にかけるとそういうことになる。

僕にもたまにあることだが、そんなときはあまりに狭いものの見方をしてしまってるか、違う方向に考えようとしてしまっている。そういうことを気にせず、とにかく自分の気に入らないことに腹を立ててるなら、あまりに住む世界が狭すぎる。それでは、よいチームワークはできない。

共感できなくても、尊重はできる

とうぜん、そんな間違った理解を元に不満を覚えたりするより前に、もう一度、相手がどういう立場や状況において、その言葉を用いているかを理解したほうがよい。そうでなくては自分も相手も不幸にしかならない。

つまり、大事なことは相手が表面的に何を言っているかを理解する以上に、相手はそのように言うことで本来何を意図しているのか、何を想起しているのかをちゃんと聞こうとする態度だ。

これからはムラ社会的な自分の狭い世界を前提に物事を捉えてしまう態度をとにかくやめよう。相手は自分と違うという前提で話を聞くクセをつけなくては、それこそ、自分にとっても大事な情報を得ることができないだろう。ましてや、チームワークがうまくいくはずもない。

今後はコミュニケーションにおいて共感ばかりを重視するのではダメだということなのだろう。たとえ立場の違いから相手の発言に共感はできなくても、自分とは違う相手の立場を理解し尊重して、その上での相手の発言と自分の立場からの考えの双方を鑑みながらチーム内でどうするかを肯定的に話し合うディスカッションができるようになるといい。

ますます高度なコミュニケーション力が必要になる社会だ。

自分の話ばかりせずにちゃんと相手の話を聞こう

もうひとつチームワークにおける会話の場でよくある失敗は、とにかく特定の場所ばかりが話してしまうことだ。

たくさんの時間話していたのに、あとでまわりの人間が何を望んでいたのかという話になるとまるでわかっていないという人は少なくない。そのひとつの理由としてあるのが、自分の主張ばかりして、相手の話が聞けてないケースだ。

これは本当に多い。
場合によっては、相手に、この人、自分の話ばかりして、ぜんぜん人の話を聞かない、いっしよにやる気あるのかしら?と不審がらせることにもなるかもしれない。

それでも、相手にとっては、ほかの人が何を考えてるかがわかったから良いかもしれない。だが、話しすぎた本人にしてみればすこしも相手のことがわからなかったわけだから、会話をした意味がそもそもあやしくなってしまう。

もちろん、自分の意見をチームに対して言うことはいいことだ。だが、他の人の意見も聞かなくてはいけない。ちゃんと他の人にも話すチャンスを与えられるよう、全体を見ながら、どれだけ話せばよいかを考えるたい。そして、できれば他の人にも発言の機会を与え、考えを述べてもらえるよう適切な質問などもできるといい。他の人の話を聞くことで、また、それまでとは違った別の考えが浮かんでくることもある。いや、むしろ、そういうことこそ、多様なメンバーが揃ったチームワークにおける本当の狙いだろう。

そんなことも含め、これからの新しいチームワークの時代、話す力、聞く力ともども、従来のコミュニケーションにおける以上のものが求められるようになってくるだろう。
もちろん、そういうコミュニケーション力をつけるのは結構大変だ。とはいえ、大変だといって投げ出せる類いのものでもない。
それに頑張ってきたえるのがそんなに嫌な類いのものでもないだろう。多くの人と有意義に話をするためのスキルなのだから。

#コラム #ビジネス #プロジェクト #チーム #コミュニケーション #会話

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Hiroki Tanahashi

言葉とイメージの狭間で

ヨーロッパ文化史に関する話題を中心的に扱いながら、人間がいかに考え、行動するのか?を、言葉とイメージという2大思考ツールの狭間で考える日々の思考実験場
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