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阿部紘久「文章力の基本」読書感想文

手元に置いて、何度も開きたい実用書。
副題にある『簡単だけど、だれも教えてくれない 77のテクニック』そのままの内容。

どこかに引っかかっていた、文章の書き方の基本的な疑問がほぐれていく。
今までの自分の文章を、添削したい気持ちになる。

著者は「文章力とは?」を、以下のように説く。

  • よいテーマを見つける『着想力』

  • テーマに関わるさまざまな事象に考えを広げる『連想力』

  • 書くべきことを峻別する優先順位の『判断力』

  • 書くべきことを構造的につかむ『把握力』

  • 独自の考えを加える『独自性』

  • 読み手の立場や知識レベルなど読み取る『人間理解力』

  • 言わんとすることを表現する『言語表現力』

このように整理が行なわれて、文章力の基本が77の小章にまとめられている。

表紙の裏には、著者のプロフィールがある。
阿部紘久とかいて “ あべひろひさ ” と読む。

東京大学卒。
帝人で宣伝企画に携わる。
2005年から、昭和女子大学で文章指導をしている。

文章の書き方についての著作も数冊ある。
いかにも文章のプロという雰囲気。

なによりもわかりやすい。
例文を挙げて、改善点が解説される。

読み手の立場になってこう書いたほうがいい、と目線はやさしい。

ただ、企画書やメールといった、明瞭簡潔なビジネス向けの文章が主になるかも。


内容の抜粋

この本を読んでから、今まで書いた文章を自己添削してみた。

改善した点はいくつもある。

  • 1度にたくさんの情報を文に詰め込まない。読み手に負担をかけてしまう。ひとつの文に3つか4つほどの情報を付加して何回かに分ける。

まさにそのとおりだ。
そんな文章が多かった。

グデグデとした長文が連なっていた。
文章を書きはじめてみると、長文を書きたくなるものだった。

  • 文を分けた場合「そのため」「そこで」などの “ つなぎ言葉 ” は多くの場合は不要。話の内容がつながっていれば、読み手は頭の中で自然につなげて読む。

なるほど。
つなぎ言葉の「そして」「なので」が確かに多かった。
できるだけ省くようにしてみた

  • 述語の共用に注意する。宙に浮いた言葉は書かない。適切な述語で受けているのか。ひとつひとつの言葉に応じて、丁寧に述語を書き分ける。

たしかに。
知らずに述語の共用が多かった。

読んでみてよかった。
少し添削してみただけなのに、雑さがある文章が整ってきたようだ。

さらに著者は、文章の基本について述べる。

  • 文章をまず明確にする

  • コンセプトを整理する

  • 冗長な書き方はしない

  • 時系列にする

・・・ 読書録には、それらを覚えようとして、いくつも抜粋が2ページほど続いている。

日付は4年前。
役に立った本ではあるが、このまま当時の読書録をキーボードするのもいかがなものかと思えてきた。

というのも、文章というのは用途による。
著者の経歴にあるような、宣伝や企画に必要な文章もある。
大学で指導するための文章だってある。

それらの文章がいいとかわるいでなくて、ただ単に今の自分の読書感想文にとっては不要となっている箇所も多い。
そうなると疑問も湧いてくる。

抜粋した内容が身についているのか?
今の読書感想文に活かされているのか?

そのせいだろうか。
自分で不要となっている抜粋を、そのままUPするのも不親切だと思われた。

なので以下の読書感想文では、読んでから4年後の答え合わせをしてみた。

単行本|2009年発刊|206ページ|日本実業出版

内容と感想

文章の書き方について

文章の書き方については、本書では以下のようにある。

  • 文の前半と後半を噛み合わせる。ミスマッチでないか

  • 頭とお尻が泣き別れになってないか、文の形になっているのか

  • 「誰がなにをしたのか?」「なにがどうしたのか?」の関係を確認する

  • 能動と受動の形を的確に書き分ける

これらはもっともだけど、今は注意しながらは書いてない。
なにも考えずに書いて、推敲をするようにしている。
そのほうが、早く出来もよくなる気がする。

推敲は、まずは削ること。
読書録をキーボードしても、加筆で手書きしても、なんでも多めの文章をつくってから目分量で30%以上は削除して、同時に不足した部分を書き足す。

プリントしてバインダーに挟んで、ペンで書き込む。
読んでみて、順番を入れ替えてもみたり、他と文と繋げてみたり、切り離してみたり。

小見出しをつけてみたり、大きく記入したり、枠で囲ったり、矢印を入れたり。

3回までは、ザックザックと推敲してみる。
考えるよりも集中力。
時間もかけない。

1度なぞるようにしてサッとペンを動かせば、ゴチャゴチャして見づらくなるから、またテキスト入力してプリントする。

4回から5回目になると、だいぶ整ってくる。
回数は、5回までがちょうどいい。
それ以上やると元の文章が崩れてきて、かえって変になる。

答え合わせとしては、考えながら書くよりも、書き出してから推敲したほうがいい、というところか。

それにしても『文章の書き方』の本は多く目にするのに『推敲のやり方』などという本は見かけたことがない。

推敲は、自分でやって感覚で確かめていくしかないのかも。

遠まわしな表現について

著者は表現方法について、以下のように注意点をあげる。

  • 遠まわしな表現はないか

  • 婉曲的な表現はないか

この遠まわしの表現はビジネス文書だったら当然に不要。
が、読書感想文には必要だ。

たとえば、湊かなえの読書感想文。
さんざんと「つまらない」とか「なんじゃこりゃ」と悪態をついてしまった。

万が一、湊かなえに見つかったら、怒られるだけでは済まないだろう。

そこは「また火災がおきて死者がでた」というくらいに留めておいて、遠まわしで婉曲な表現をするほうがいいに決まっている。

悪口って難しい。
個人的には、悪口の天才といえば、司馬遼太郎三島由紀夫だけど、やっぱ彼らは悪口でも表現がちがう。

マネしたいけど、そういう小説家に限って、メシの種となる文章の書き方の本はなかなか出さない。

作品中に、ポロッと漏らすようにして書かれている一文を見つけ出すしかない。

今後の課題である。

文法について

けっこう著者は、文法に対してはうるさい。
いや、うるさいなんて言ってはいけない。
正しい文法で書くように指導をしている。

  • 助詞として “ てにをは ” を正しく使う

  • 列挙するときには品詞をそろえる

  • ら抜き言葉は、話し言葉や敬語として誤りともなる

『助詞』『品詞』『ら抜き言葉』については、ページを割いて説明されている。

そのときは抜粋もして、理解したようでもあるが、すっかりと忘れてしまっている。

おそらく読書感想文には、文法としては間違いが多々ある。
“ ら抜き言葉 ” などは気にもしてないから、確実に多用している。

ただ文法については、このとき以外でも何度も覚えても、すぐに忘れるのだから仕方がない。

今さら無理して覚えなくても ChatGPT でチェックすればいいだろうと頷いている。

それに『頭痛がいたい』みたいな文法は大好きだし、人から「こう書きなさい」と言われて書く文章は苦痛なのもわかってもいる。

答え合わせとしては「文法はどうだっていい」となってしまった。

書式について

著者の正統派の文章を身につけたいと、枠線で囲ってある抜書きも多数ある。

うちひとつが以下である。

  • 骨子を組み立てて段落に分ける。段落は、長くても250字以内に。150字から200字平均で。1000文字の文章は5段落目安とする

今では、こういった書式についても不要となっている。

やはり、紙に書く文章と、ディスプレイに打つテキストは異なるし、縦書きで使用する書式を、そのまま横書きに持ってきても、なんかどうかちぐはぐになる。

書式の代わりのようにして “ 字ズラ ” と “ リズム ” は、意識して大事にしている。

“ 字ズラ ” とは、文字のデザイン。
漢字とひらがなとカタカナのバランス。

読書というのは “ 目で読む ” ので、これらの文字の並びは直感の好みで調整する。

リズムについてはどうだろう。
林真理子は、57577の短歌の文字のリズムが、日本人にはなじむという。

藤田田は、3語が繋がる文字が日本人になじむという。
だから発音が「マクダネル」でも「マクドナルド」に変えた。

答え合わせとしては、書式よりも “ 字ズラ ” と “ リズム ” を大事にしたというあたりか。

論理的について

この本でなくても “ 文章にはエビデンスが必要です ” とよく目にもする。

著者が教える文章は、学術的にも通用すると思われる。

  • 理論的に首尾一貫させる

  • 因果関係を正しくつかむ

  • つじつまの合わないことを書くと、どこか心の片隅に違和感が漂う

ただ、自分の読書感想文は「それは、あなたの感想ですよね?」という類の文章。

論文を書いているのではないし、そもそもそんな学識もないし、評価を得ようとしているのでもない。

答え合わせとしては「まあ、論理的は気にしなくていいかな」に留まる。

話し言葉について

  • 最近の話し言葉の影響を考慮する

  • 話し言葉の文は広まっているが、書き言葉としては未完成な文もある

これは、話し言葉がどうこうよりも、時事や流行の語句を交ぜてはいけないといってもいいかも。
読書感想文には、と補足しておく。

流行の語句を入れた文章は、1年もすれば時代を感じてしまうので、気をつけて交ぜないようにする。

そうすれば、読書感想文は、5年経っても10年経っても検索されて読まれる文章となると確信している。

もっといえば、著者は書き言葉としては未完成というが、逆だという説を唱えてみたい。
書き言葉のほうが、未だに完成してない。

根拠にはならないが、NHKのなんとかという番組を観てから思った。

その番組では、100年前の東京の人々の会話の音声が流されたけど、思ったよりは今と変わってないのだ。
今でもこんな話し方する人いるな、という感覚。

対して、100年前の文章など読みづらい。
カタカナ文や漢文なんて読めやしない。

書き言葉だって、しっかり未完成ではないか!
むしろ、話し言葉よりも変化している!

答え合わせとしては、話し言葉は多用したい。

4年後の答え合わせのまとめ

とにもかくも。
答え合わせのまとめとして。

文章の書き方の本は、ヒントは得れる。
あとはカスタマイズして自分で自分の文章を作るしかない、というところか。

当たり前になってしまった。
文章って本当にむずかしい。

「言っていることがよくわからないけど、あの人が書いているのだな」とわかる文章であれば、まあまあ上出来かなという現状となる。


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