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短編小説『豹頭王偽伝 石の村』後編 (無料公開版)

※公開期間終了。本編はマガジン「空想海軍 短編小説集」に移りました。

※前編はこちらから。

【石像の秘密】

「知っている? 作った者をか?」
「そうじゃ……そうじゃなくて……。あの男、あたし知ってるのよ。この前の宿場で相手した客なのよ。商人とか言ってなんか怪しい感じの奴でさ……それがなんでこんなところで像になってるのよ」
 オミナが指差したのは、旅姿をした男の像だった。
「あの像の男と会ったというのか? いつだ」
「ここにくる前……3日……もう4日になるのか……4日前よ。ゴーラに向かう前に一稼ぎと思って何日か逗留して、そのとき最後にとった客……名前は……なんだっけ……」
「まあ名前はいいだろう」
 豹頭王は像に近づいていって、その顔を検分する。
「この男で間違いないのだな? そんな男がなぜここで像に……そうか、像になっているのか……」
「な、なによ、ひとりで分かったようなこと。なにがわかったの? 教えてよ、王様」
「これは考えが甘かったかもしれん。オミナ、話はあとだ。いったんここを出るぞ」
「え、ちょっと……」
 わけがわからぬ女傭兵の先に立って、豹頭王はもと来た道を戻ろうとした。しかし、
「出るったって、どっちへ行けばいいのよ!」
 オミナの声はなかば悲鳴になっている。
 気がつけば、霧はいよいよ濃くなって、いま見つけたばかりのオミナの客だった男の像までが霧に飲み込まれて見えなくなってしまっていた。
「霧がどんどん濃くなってる。離れないでよ、王様! 見えなくなっちゃう!」
「俺のマントをつかんでいろ、オミナ」
「そうさせてもらうわ! どうする? 王様には出口がどっちだかわかるの?」
「それは俺にもわからん。滅多にないことなのだが……」
 かの豹頭王がまさに動物的な方向感覚の持ち主であることをオミナは知らなかったが、それでも彼の口ぶりから、充分に異常さを感じ取ることができた。
「そんなあ!」
「だが、危険がいよいよ迫っていることはわかる。うなじの毛がちりちりするのだ」

(掲載期間が終わりましたので)ここから先は、有料マガジン「空想海軍 短編小説集」でお楽しみください。


※期間限定・短編小説 について
 期間限定・短編小説では、とくにテーマも定めず私が「こんなの書きたいな」と思ったものをできるだけ短くまとめて書いていこうと思っています。
 掲載期間もとくに定めず、「次の短編がアップされるまで掲載」くらいに考えています。

 掲載終了後もマガジン「空想海軍 短編小説集」(こちらは有料)に載せておきますので、過去作が読みたくなったひとはそちらでよろしくお願いします。

「空想海軍 短編小説集」

https://note.mu/tanaka_kei/m/m5a2978bf4709

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