カミュのペストとコロナ禍
最近「カフカの変身」を読んだが、カフカが個の不条理を取り上げているのに対して、「ペスト」は集団の不条理を受け入れる過程を描いていて、2大不条理文学とも呼ばれているようだ。共通するのは、不条理に立ち向かう強い意志に基づく事象の解明と解決への動的なふるまいではなく、根本的な解決をあきらめたうえで「不条理」を受け入れてゆく過程を淡々と記述している点である。もっとも変身が個人の内面を掘り下げ、自由にならない自己の変化を通じ人間であることの儚さを描いているのに対して、ペストは主人公リウ