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「からむし」は「虫」じゃないよ「蒸し」だよ…野草考3

  久々に土手を早朝散歩したら、「からむし」が生えていました。上の写真が「からむし」の葉です。自然に手が伸び、若い芽を指でつまんで何枚か採らせてもらいました。この野草は茹でてあく抜きしたものをお団子生地に練りこんで食べるヴェトナムの昔からの人気スィーツに使われている野草と同じ種類ものです。この草餅は今もお菓子屋さんで売られているそうです。ある日、ヴェトナムの国際学生がこの草餅を作っている動画を私に送ってくれました。

「からむしは食べられるんだよ」

  私が初めて「からむし」を知ったのは、野草と食養料理で有名な若杉ばあちゃんの料理教室でした。「この草はからむしと言って食べられるんだよ」とおばあちゃん。
  「えーっ、本当ですか!いつも草取りしていました。」と参加者は口々に言いました。名前も知らかったこの草は市民農園の土手一面に生えていて、私も夏はせっせと鎌で草刈をしていました。この草はアカタテハ蝶の幼虫の大好物。幼虫たちは農園の野菜には目もくれず、この草を食べていましたっけ。

  おばあちゃんの料理教室では「からむしの白和え」を教えていただきました。まず若く柔らかい葉を用意します。基本のあく抜き(塩ゆで→水に15分くらいさらす→醤油3に水7の割合の醤油水に15分くらい漬け汁は捨てる)をした「からむし」と人参を白和えの具に使いました。「からむし」は茹でるとぬめりが出て崩れるので料理にはちょっと使いにくいかもしれませんね。おばあちゃんも今は「お団子に混ぜて使うといいよ」と言っています。

布を織るために栽培されていた「からむし」

  からむしの「から」は茎。「むし」は蒸し。からむしはラミーの仲間で、東南アジアから日本まで広い地域でアジアに生きる植物なのだそうです。日本では古来、からむしの茎を蒸して茎の皮の繊維で布を織っていました。苧麻(ちょま)とも言います。

  西暦720年の書記(持統7年3月)には
「詔して天の下として桑・苧(からむし)・梨・栗・蕪青(あおな)等の草木を勧め植え令む」 と記され全国に「からむし」を育てて繊維を取ることが奨励されたようです。 

  丈夫で光沢があり、清涼感があると言うのが特徴。今でも越後縮(えちごちぢみ)・越後上布(えちごじょうふ)、福島県のからむし織として美しい布を織る伝統が受け継がれています。私はまだその布を見たことがないので憧れます。

「からむし」の草餅

  若葉を茹でるとトロトロになるからむしは、お団子に練りこむ方が使いやすいです。ヴェトナムの草餅の餡はムング豆を甘く茹でたもの。あんを包んだ団子を成型した後に蒸しあげていたので団子は黒くなります。

  この真似をして作るのなら、あんはカボチャ餡。あらかじめ蒸しておいた団子生地に茹でてあく抜きしたからむしを練りこんで団子に成形します。それにカボチャ餡をはさむと緑色の生地の草餅らしい草餅になります。

  でも手間がかかるので作らないかな~きっと(笑)
  レシピを作るまでに何回も試作しましたっけ~。
  そうは言っても、よもぎもちと同じくらいの手間ですけれど。

  久しぶりに出合った「からむし」。パートナーつりお君は天ぷらにしたものを美味しそうに食べていましたよ~。胃腸の手術で消化能力に難ありの私は繊維が多ぎて食べることはできませんでした。来年は復活しているかな?「からむし」の葉にはカルシウムが多いそうです。

疲れがたまった今日思ったこと

  からむしと久々に出会い、野草料理に明け暮れていた日々を思い出しました。それは楽しい日々でした。しかし2021年の胃腸の手術以来、野草料理のテキストや残してきたレシピのファイルを私は開くことができませんでした。もう私には野草を食べる消化能力はありません。

  なによりも食養・自然食・野草料理と35年近く張り切ってやっていたのに、胃がん・イレウスと手術が必要な重い病気になってしまった私。もちろん、認知症の母の5年にわたる在宅介護で免疫力ががっくり落ちていたことは否めませんでしたが、母に私の病気の原因を擦り付けるのは気が引けました。全ては身から出た錆。

  そうして自分の基盤のようなものが全部壊れてしまった私は、苦しくて人に会うことが出来なくなってしまいました。SNS・メール・電話もだめ。そうしないと自分を守れない。そうやってこの二年を過ごしてきたと思います。

いのこづち

  そんな私が以前と同じようなちょっとした会を開くことになりました。講師の方がいるので私がお話するわけではありません。親しい方、私の事情に理解ある方だけに声をおかけしてなるべく負荷のかからない集まりにしました。私は気配りができないので、みなさん手伝って下さいました。

  お陰さまで、滞りなく会を催すことができたのはありがたかったです。野草の本もレシピも開くことができるようになりました。

  しかし疲れたのも事実で、自分のコミュニケーション能力の復活を過信してはいけないなと感じる今日この頃です。実は会の数日後、ちょっとしたことでパニックになりました。そうなると体の機能が落ちてしまうのです。歩くことに如実に表れます。太ももがしびれたようになり、うまく歩けないと本人は感じてしまうのです。実際、数日間はよろけて外を歩けなくなり.ました。体はそうやって自分を守ろうとしているのでしょうか?

ゆきのした

  だから
  以前のように は できないのだから
  今のように やっていこう

  からむしを見て色んなことをリアルに思い出した私
  でも それを体験した私は もういない

  野草のように打たれ強い人になろう
  とは もう 思いません

  薬効や食べ方で 人間に役に立つかと
  「ハカラレル」野草たち
  でも 野草たちは そこに生きて
  命を全うし循環しているだけです

  そのように生きたいな

  
  
  




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