櫻井育子(朱紅)

たのしくあそんで、たのしくいきる。生涯発達の視点から、みんなたのしく「自分育て」ができ…

櫻井育子(朱紅)

たのしくあそんで、たのしくいきる。生涯発達の視点から、みんなたのしく「自分育て」ができる社会を模索している実験と研究をする生涯発達支援塾TANEの代表をしています。書道と発達の研究所、「書と生き方研究所」も主宰。

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  • 書と生き方研究(これまで)※限定無料公開

    朱紅が主宰する「書道塾tane」、旅する書道「すみあそび」、いろいろな場所でいろいろな人と書くことで見えてきたたくさんの「生涯発達理論」を発信していきます。

  • 言葉以上言葉未満

最近の記事

書くと「見える」世界がある

あっという間に1月も終わります。 そうそう、あっという間、といえば「すみあそび」の時間も体験された方はわかると思うのですが、書くまでは悩んだりしている方も、書き始めるとあっという間、という感覚を味わえます。 時間は平等に刻まれているはずなのに、なぜ「長い」「短い」などと感じるのでしょう。それは、わたしたちの感覚は常に「主観的」だからなんですね。自分の感じたことを基本に、さまざまな事柄を覚え、生きているのが人間。だからこそ、「感じ方の違い」というのが当然あるはずなのですが、自

    • 感じると伝えるの間

      こんばんは!今日はちょっと書道とは違うお話を。 実は先日、「対話型鑑賞会」というイベントに参加しました。美術館にある作品をみんなで観て「自由に話す」というものです。そこで、「感じたことを自由にどうぞ」と言われたときに、久しぶりに「え、何を話そう」という感情がわいてきました。この感情って、みなさんも経験したことはありませんか?  「感じてはいるんだけど、言いたいこともあるんだけど、何を伝えようかもっと考えたい」とか「どのあたりの言葉を使ったら、伝わるんだろうか」と深く考えすぎて

      • すみあそびに参加した方の声・感想

        今回は、皆様の声を一部ご紹介いたします。 これまで、あらためて本当にたくさんの方々とお会いしてきたんだなという実感が湧き上がりました。書道塾taneという活動をし続けてきたことは、「この場をひらくことで、さまざまな人が混ざり合える」という隠れた目的もありました。その中でも、やはりなかなか人と一緒に何かをするのは苦手、という方も、ここには来れる、ということで実際に今まで引きこもりがちだった方が、今は定期的に通ってきています。「ただ書くだけ」そんな場が、なぜ心地よいのか、今日は

        • 書道とわたし

           本日わたしは誕生日を迎え、45歳になりました! 今日は、せっかくなのでわたしがなぜ書道を始めたのか、そして研究所開設の目的をまとめました。    小学校のころは、集団が苦手、雑談できない、発表できない、作文書けない!という子ども時代。小2で書道に出会い、おとなしくしていることが得意なわたしは「書道ならできる」と思い、高校までお手本通りに書ける自分に満足していました。大学生の時に師範をとり、自分には書の才能があるとすら思い込んでいましたが、公募展に出展するときにお手本がない

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          書と生き方研究所・各コースについて

          いよいよ1/22からスタートします。どうしても、わたしひとりではできないことがあります。たくさんの方と一緒に、広げていきたい世界があります。一緒に学んでいきませんか? 気になる講座があったら、公式LINEのチャットからお知らせくださいませ。 https://lin.ee/AyImkQHこちらからどうぞ!

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          言葉以上言葉未満

          いつかのわたし、いまのあなた、複雑な自分を持て余しているすべての人と対話するための言葉以上言葉未満。 大好きな劇団どくんごの、ヤッシーことウスバカゲロウさんが、「言葉から意味すら無くしてしまいたいんだよね」と呟いたことが忘れられない。 わたしたちは言葉を使う。言葉があるから分かることもある。言葉があるから分からないこともある。言葉で全てが解釈可能なほど単純な世界ではないことを知っている。伝わらないもどかしさ。言葉があるから余計に伝わらない。言葉が怖い。表現するのが怖い。何

          言葉以上言葉未満

          「わたしはここにいる」〜書、そして人が生きるということの研究〜(斎藤文春先生個展にあたっての寄稿文)

          はじめまして、というのは勇気のいる瞬間だ。そのひとがどういうひとなのか、何を考えて生きているのか、分からないからだ。時間をかけながら、表情や声や笑い方で次第に分かってくる。わたしたちはコミュニケーションの多くを、非言語に頼っている。そんな中でも、比較的短時間にそのひとそのものの情報が入ってくることがある。そんな体験をしたのが、文春さんとの出会いだった気がする。  2020年のこと。塩竈市の杉村惇美術館で「花と夢・みんなの書の展覧会」を開催するということを聞き、私が主宰している

          「わたしはここにいる」〜書、そして人が生きるということの研究〜(斎藤文春先生個展にあたっての寄稿文)

          「生涯発達」と「書」の関係性を考える⑥

          「そもそも前衛芸術とは何かというと、芸術という言葉で代表される美の思考や観念といったものをダイレクトに日常感覚につなげようという試みである」 赤瀬川源平著、「千利休 無言の前衛」を久しぶりに読み返した。買った時にはそれほどひっかかることもなかったのだが、あらためて今読んだら次から次へと唸りたくなる言葉たちが並んでいた。 「ズレたもの、歪んだもの、欠けたもの、見捨てられたもの、そういう人々の意識の外側にあって、人々の恣意を超えて鮮やかなもの、それらが彼らの美意識の先端にあっ

          「生涯発達」と「書」の関係性を考える⑥

          「生涯発達」と「書」の関係性を考える⑤

          わたしが書道塾を始めるきっかけになったのは、浅野敬志くんが高等部を卒業したとき、母、浅野雅子さんの一言がきっかけだった。アドベンチャークラブで5歳から一緒にいる敬志くんは、浅野さん曰く「重度の知的障害と自閉症」であり、言葉を話さず、自己主張も少なめなタイプである。それゆえに、与えられた指示は淡々とこなすが、「敬がほんとうになにをしたいのか分からない」ということはよく呟いていた。生活介護の事業所に就労が決まったとき、「なにか習い事やシュミができればいいな」という思いから、自分も

          「生涯発達」と「書」の関係性を考える⑤

          「生涯発達」と「書」の関係性を考える④

          「沈黙の中身は、すべて言葉」(谷川俊太郎)  「詩を書き始めようとする時、一枚の白い紙を前にして私はいつも途方に暮れます。何をどうやって書けばいいのか、見当もつかないのです。白い紙がまるで荒野のように思えます。私にできることと言えば、ただじっと待つことだけです。いったい何を待つと言うのでしょうか。」谷川はこう語っています。(谷川俊太郎詩選集1あとがきより) 自分自身のなかにある「言葉」とは何か、意識したことはあるでしょうか。わたしたちが普段使っている「言葉」は、あくまでも

          「生涯発達」と「書」の関係性を考える④

          「生涯発達」と「書」の関係を考える③

          学習意欲とは本来高いものである。「知りたい」「やってみたい」という思いはもともと備わっている。「誤学習」として、「勉強はやりたくないもの」とインプットされてしまっているに過ぎない。 支援学校の高等部を卒業し、ある施設に通っている青年、29歳。卒業してからずっと同じ施設だから10年勤めている。しかしながら、その生活ぶりは10年前から変わっていない。野球と相撲が好きでニュースも知っている。17年前に立ち上げたアドベンチャークラブ(障害の有無にかかわらずソーシャルスキルを学ぶ会)

          「生涯発達」と「書」の関係を考える③

          「生涯発達」と「書」の関係を考える②

          独特の空間配置と、字のバランス。ひとつひとつの文字の向きや並び方のおもしろさ。この作品は、どうがんばっても彼にしか生み出せない。彼は、言葉を話さない。自分の名前は書ける。日常的なやりとりはある程度可能である。でも複雑で難しい指示は理解できない。小さい時は、もっと自分の世界があって、その中で泣き、喚き、葛藤し、固まり、動かなくなり、それでも発信する言葉が出てこないということに彼の母親は悩んでいた。 高校を卒業するころ、彼の母親は音楽療法士でもあるのだが「臨床美術士」の資格を取

          「生涯発達」と「書」の関係を考える②

          「生涯発達」と「書」の関係性を考える

          「全世界と匹敵するものとなった紙切れ一枚に、どのような世界を繰り広げるのか。いわば自分が創造主の立場に立たされたその畏れに、作者はおののくのです。」(石川九楊) 「人は生涯にわたって発達し続ける」と言ったのは発達心理学者のエリクソンでした。そもそも人間の成長とは、いわゆる体や脳については15歳くらいをピークに衰えていくものだと言われてきました。しかし、精神というもの、経験値というもの、そのような測れない「知恵」に関しては成長し続けていくものであると、私たちは感覚的にも知って

          「生涯発達」と「書」の関係性を考える

          芽吹きのタイミング〜TANE通信〜

          大事にしたいことを大事にしたいということをもっと大事にできる世界を見ていたいし、作りたい、というのが今年の目標です。 それぞれに思い描いている世界は、きっと大事なもので溢れているのに、制度や決まりや世間の目や立場や、やらなくてはいけないことなどの間でいつしか削ぎ落とされてしまいがちな「大事にしたいこと」。 多分それは、あらゆる場面で人々の葛藤になっていることがあるような気がします。そして、自分だけが争っても無意味かもしれないといつか諦めになってしまう「大事にしたいこと

          芽吹きのタイミング〜TANE通信〜

          社会との対話と合意形成

          PR3.0 conferenceに参加してきました。発達支援とか福祉とかの領域でなぜ?という疑問もありながら、私の中でこのプログラムを見たときに、これは行った方がいいという野性の勘でしかなく、「おそらく場違いなのだろう」と思いながらも地方割という素晴らしいチケットがあることにも背中を押されて申し込んでいました。当日まで「果たして理解できるのだろうか」「そもそもなんでこんなに心が動くのだろうか」と自問自答しながら会場へ。同じような感覚でこれからの福祉と教育を現場レベルからアップ

          社会との対話と合意形成

          辞める、きづく。

          自分が教員を辞めるとは思っていなかったわけではない。やるときから、一度は現場を見たいと思ったし、私はそうやって経験しないと分からない人間だから、おそらく失敗もするだろうとは思っていた。結婚も似たような理由で、一度はやってみたいと思ったから、失敗するだろうとは思っていた(見事に的中した)。 次のビジョンがあったわけではない。ただ漠然とやりたいことがあった。そして、辞めたほうが私には合っていると思えるいろんなことに次々と出会った。だから辞めてしまった。後悔はしていない。これから

          辞める、きづく。