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「ガメラ3 邪神(イリス)覚醒」-私の人生を変えた映画-

「ガメラ3 邪神(イリス)覚醒」、平成ガメラ3部作の最終作。
この映画は自分の人生に多大な影響を与えた、人生そのものを大きく変えてしまった映画です。

この映画が公開されたのは1999年、世紀末。ノストラダムスによると世界が滅びると言われた年。
なんとなく独特の暗さと空気感をまとった時代でした。

当時の私は14歳。中学2年生、思春期真っ只中。
親の影響で怪獣映画を見て育った子供でしたが、この当時は少し怪獣映画熱が冷めていたと記憶しています。
ゴジラの死をもってVSシリーズが終わり、ガメラも2から音沙汰がないまま数年。
その間、私も歳を取り、興味の対象が怪獣から少し離れていました。

ですので、3の制作発表を見ても最初はあまり心躍ることありませんでした。
今では大好きなイリスのデザインも、写真で見た当初は、あまり怪獣っぽくないなという印象。
まあ、上映始まったら一応、観には行こうか、くらいの気持ちでありました。

それが変わったのが、朝のテレビでの特集を見た時でした。
渋谷崩壊のシーンが流れていて、物凄い衝撃を受けました。
リアルな特撮映像、当時はまだなじみの無かったCGによって描かれたギャオス、ガメラの火球で焼き殺され巻き上げられる人々。

こいつはとんでもない作品だ……直感的にそう思いました。

そして映画館で鑑賞。
和風オカルトを纏った世界観、これまでの作品に無いリアルで過激な怪獣描写、エヴァンゲリオンの使徒を思わせるイリスのフォルム、全体に漂う薄ら気持ち悪い空気感。
その全てが私を虜にしました。

言うまでもなく、CGの質などは現在の方が高いです。しかし、ミニチュア特撮とCGの合体特撮映像で言えば今の作品含めても最高峰と言えるのではないでしょうか。
ちょうど、特撮がミニチュアからCGへと移行していく時代。その時期だからこそ生まれた映画。

作品の内容そのものもですが、時代や人生のタイミングというのが大きかったと思います。
VSゴジラや平成ガメラといった怪獣映画を見て幼少期を育ち、エヴァンゲリオンの虜になり、心霊・オカルト・学校の怪談ブームなどを経て、14歳という多感な歳に観たことが。

この映画を語るにあたって外せない人物。
前田愛さんが演じるヒロイン、比良坂綾奈。
清純ながら影のある雰囲気、射貫くような強烈な目力、演技に対し女優さんのオフでの笑顔ギャップ。それらが頭から離れなかった。
要するに、率直に、大方の予想通り、平たく、ところはばからずに正直に言ってしまえば、私は、彼女に惚れたのである。
この作品でその後の人生が大きく変わったことを考えると、私にとってのファム・ファタールの1人といってよいでしょう。

私はこの作品の書籍やグッズを買いあさりました。毎月のお小遣いで地元の本屋で、田舎には無い書籍までわざわざ注文して。
ビデオ、DVD、サントラCD、資料集のボックス、写真集……あげくLDプレイヤーを持っていないにもかかわらず、LDボックスを買ったりまでしました。
総額10万円分くらいはしたかと思います。中学生からしたらとんでもない金額です。


はてさて、ここまでなら、ただ物凄く好きな映画という領域でしょう。
人生を変えたというのはどういう意味か。これがまた、複雑多岐に渡っておりまして。

比良坂綾奈に惚れたと書きましたが、もう一人、この映画には惚れ込んだキャラクターがいました。
手塚とおる氏が演じる、倉田真也という男。
映画を観た方ならおわかりかと思いますが、かなり癖の強いキャラクターです。
私はこの癖の強さをえらく気に入ってしまいまして、こういう役を演じられるっていいなと思いました。
当時、私の将来の夢は映画監督でしたが、ここで役者になりたいというのが芽生えました。
ああいう、個性的で強烈なキャラクターを演じられる俳優になりたいと。

時期は中学2年、すぐに3年になり進路を考える時期になります。
ここで、まあ、若き私は「高校などいかないっ! 東京に出て役者を目指すっ!」などと思春期特有の無茶を言ったりもしました。
結局、そこは親の圧倒的正論に諭され、地元の高校に進学しましたが、そこで演劇部に入りました。
そこでの人間関係は現在まで大きな影響を残しています。
そして、その後、大阪の映像学校に進学し、学生生活の傍ら、俳優事務所に入りテレビや映画の端役として活動していました。
これらの経験がなければ人格、スキル、人間関係、全て別物になっていたでしょう。

ちなみに2022年6月27日、手塚とおるさんがお誕生日に1日限定でTwitterをしたことがありました。
その時、なんとご本人からコメントを頂きました。私の人生において大いなる喜びの瞬間の1つです。


また、人生のタイミングとして重要だったのは、この映画に入れ込んだ時期に、ちょうど我が家に悪魔的テクノロジー、インターネットという物がやってきたことです。
蜘蛛の巣に例えられる電脳空間、初めて触れる無限に広がる世界の糸に私は絡めとられ取り込まれてしまいました。
それまで夜22時には寝て、6時半に起きて犬の散歩をする健康優良児だった少年は、深夜までネット漬けの不良少年になってしまったのです。

ガメラについてのサイトを検索し、色んな人の感想を読みふける。そしてリンク先から更なる別のサイトを見にいく。情報に果てはない。
その中にはガメラや特撮関係のイラストを描いて載せているサイトがたくさんありました。当時の私にとっては非常に魅力的に見えました。
怪獣を擬人化・美少女化したり、比良坂綾奈や草薙浅黄、長峰真弓などの女性キャラクターのイラストなど。
そのコミュニティに入りたいと思い、絵を描いたり、自分のホームページを作るようになりました。

※当時描いていたイラスト

今でこそ私は、ちょっと露出度の高いお姉さんをよく描く人と思われているでしょうが、この頃までは女性の絵を描くことはありませんでした。

※上記から始まり20年後はこんな作風に

また、現在、私は起業しネット関連での収入を多く得ていますが、ホームページ制作や広告に関する知識はこの時、学んだことがベースになっています。

つまり、ガメラを通しネット文化に入れ込んでいなければ、現在の作品制作も、独立起業するということも無かったわけです。

それだけではありません。
私は趣味で武道、格闘技を嗜んでいます。若い頃は空手の道場に通い、今でも時折、総合格闘技のサークルに顔を出してみたりしています。

そのきっかけもガメラなのです。
メインヒロイン、草薙浅黄を演じた藤谷文子さん。彼女のお父様がハリウッドのアクションスター、スティーブン・セガール氏であります。
藤谷文子さんきっかけで、スティーブン・セガール氏の映画を観るようになり、そして武道を習うようになりました。

ちなみにスティーブン・セガール氏と言えば合気道ですが、空手も習得しており、その流派は糸東流系だそうです。
意図的に選んだわけではありませんでしたが、私が通った空手道場も糸東流系でした。少し嬉しいです。

それまでは運動嫌いの貧弱細身野郎だったのですが、暇があれば腕立てや懸垂してるような人間になってしまいました。
学校では空気を読むのが嫌いな暗いマイペース人間だったので、武道をやってなかったら、いじめられっこ街道まっしぐらだったのではと思います。恐ろしい。


そして最も大きかったのは就職先です。これもまた数奇な運命の結果と申しましょうか。
当時、ガメラ3の特技監督の樋口真嗣さんについて書籍やネットで色々調べていました。
すると、何と私の地元、鳥取県米子市で特撮映画を撮っていたという話が。これは観たい!
タイトルは「八岐大蛇の逆襲」。当時、エヴァンゲリオン等で一世を風靡していたアニメ会社、ガイナックスから発売されているとのこと。
しかしなかなか手に入らず。後から知りましたが、現在は再販されていますがこの時期はもう絶版に近くほとんど流通していなかったようです。

が、しかし。たまたま寄った地元の本屋のDVDコーナー。その端の端に、一本だけ立てかけてあるのを発見! 即購入致しました。
映画の内容としては、美少女が八岐大蛇のロボットに乗り、米子の街で暴れ回ると言うもの。詳しくはネットで検索していただければ。
監督は赤井孝美さん。樋口真嗣さんは特殊技術。

余談ですが、このDVDに、当時、ガイナックスから発売されていたエヴァンゲリオンの脱衣麻雀のチラシが入っていまして。
まだ十代、純粋、むしろ潔癖で、エロは悪だという思考だった私は強烈なショックを受けた記憶。
こんなものが、存在するのが、許されていいはずがない……と精神汚染を受けて、やがて道を踏み外していく、というのはまた別の話。

さてさて、当時、好きなものを布教するタイプのオタクだった私はこの作品を周りの人に見せて回っていました。
それから時は流れ、10年近く。この作品の話をした知人から連絡が入りまして。
なんとガイナックスと赤井孝美監督が地元で特撮映画を撮ると。そして映画イベントをすると。

その頃、私は本当にどうしようもないフリーター生活をしていました。
学校卒業後、就職せずバイトと俳優事務所の現場の生活、その事務所も色々あって辞め、ただただ将来性のないバイトをこなす日々。
時折、学生時代の友人と自主映画を撮ったり、同人ゲームを作ることで、なんとかクリエーターとしての将来に夢を見ている状態でした。

そこから私は地元の映画のイベント「米子映画事変」に参加するようになり、そしてガイナックスに入社。
その後、独立起業して、現在に至るわけです。

この「ガメラ3 邪神(イリス)覚醒」という映画が無ければ、進路も違っていたし、役者を目指すことも無かったし、人間関係も、将来の就職先も全然違う、インターネットやイラスト系のスキルも身につかなければ、独立起業もできなかった。

人生を変えた映画と言うのは誇張でも思い出補正でもなく、本当に文字通りそうなのです。

もう20年以上前の映画ですが、2021年にはドルビーシネマでの上映。
(ドルビーシネマ:映像や音声のスペックを極限まで高めた究極の映画上映)

そして去年は特撮のDNA展でのミニチュアや資料展示を行ってくれました。

【展示の詳しいレポートはこちら】

通常であれば上映終了後の映画は二度と映画館で観ることはできないので、20年越しに更に美しくなった形で見れたのは感動でした。
実現してくれたスタッフや関係者の皆様、本当にありがとうございました。

先日、作中にも出てきた高松塚古墳に取材に行ってきました。
映画内に出てきた壁画など、予想以上に聖地巡礼的な場所でありました。
この作品を愛する方は、一度行ってみて損はないと思います。


これから先も、この作品は私の人生の導(しるべ)となり続けるでしょう。




伝奇オカルト・特撮怪獣映画
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【予告編】


【第一話】


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