トンネル

母が運転する車の助手席でまどろんでいた。

本人としては起きているつもりだったが、気がつけば瞼を支えるのがつらくなっていた。しかし、なぜか自分が寝てしまうことを認めたがっていない部分もあった。

車がトンネルにはいった。

まわりが暗くなり、同じリズムで通り過ぎるオレンジ色のライトがますます瞼を重くする。耳だけは妙に冴えているように感じていた。トンネルの中では車の動く音が少し変わる。そう思いながら、目をつぶった。

しばらくして、まだトンネルの中にいることに気づいた。

そのトンネルは前にも何回か通ったことがあった。だからどれくらいで出るか、だいたい知っているはずだった。

おかしいと思った。

体全体が妙に重くて、腕を上げることも、目を開けることもできなかった。

母の手が髪をさわった。

そしてもう片方の手が頬を。

そして耳元で囁いた。

ケンちゃんは、どの出口から出たい?

おどろいて目を開けると、母は運転席でまっすぐ前を向いて、ハンドルをにぎっていた。

まわりをキョロキョロ見まわしていると、天井がとぎれて、あかるい青い空がフロントガラスのむこうに広がった、

母が、どうしたのか、と聞いてきたが、うまく答えられなかった。

夢ね、の一言ですまされてしまった。

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