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ジムを探して三千里

夏は暑い。


身も蓋もないほど当たり前のことを書き出してしまったが、一介の市民ランナーである私にとって、夏の暑さは著しく活動に支障が生じるという意味でも非常にやっかいなのだ。

なにしろ夏場は特に日中の外気温が高すぎて、走ることが可能な時間帯が極端に限られてしまう。ランニングをはじめたばかりの頃は休日にがんばって早起きして、秋に走る予定のハーフマラソンに向けて20kmくらい走ったりしていた。それでも9時を過ぎる頃には気温が30℃を超え、暑さにやられてそれ以上走ることができなくなることがたびたびあった。その後、コロナ禍の影響でマラソン大会の開催も行われなくなり、わざわざクソ暑い最中に走るなどという苦行に勤しむモチベーションを持つことはなくなって今に至る。

という経緯で、ここ数年はすっかり怠惰なランナーに堕落してしまっていたのだが、今年になってようやく大会が以前のように開催されるようになった。例にもれず、私も今年は数多くの大会にエントリーすることにした。せっかくレースに出るからには、好タイムで完走したい。シーズン最盛期は秋冬だ。となれば、夏場にしっかりと走り込んでおきたいところだ。しかし、今年の夏は例年にもまして、猛暑が襲来している。早朝に走る気すらおきないほどのモワーンとした熱気にあてられて、すっかり走る気を失ってしまう。

これでは埒が明かないので、ジムを見つけて室内で走り込もうと考えるに至った。私はよさげなジムを見つけようと、近所にあるジムを片っ端からネットで調べて体験入店を行うことにした。

① YAMAMOTO SPORTS ACADEMY

【特徴】家から最も近いジム。学生時代にアルバイトしていたステーキ店(現在はしゃぶしゃぶ屋)の地下1階。

仕事帰りに覗きに行くと、スタッフのお兄さんが出てきて色々と説明してくれた。対応がよい。これは一発で決まりか? さっそくその場で予約して、数日後の朝に体験入店を果たした。

【結果】なんとトレッドミル(ランニングマシンの正式名称)が1台しかなかった… 私が30分のタイマーを掛けて走っている後ろで、常連と思しき初老の細マッチョな男性が順番待ちをしている。もしかしたら彼は毎日この時間にトレッドミルで走ることを日課にしているのではないか? それを体験入店ごときの私が邪魔しているのではと考えると気が気でなく、走るどころではない。運動とは違う理由で流れる冷や汗を拭いながら、「違うジムを探そう」と心に誓った。ちなみに、単独利用の場合は1,000円かかるサウナは、温度も高く水風呂もキンキンに冷えていて最高だった。

② アスリエ

【特徴】家から二番目に近いジム。プールもついている。

泳ぎが苦手なので、この機会に水泳を習ってみようかしら。ネット予約を済ませて、いざ体験入店。

【結果】朝10時にスタートした時点で、館内は大混雑している。見たところ、会員の年齢層がとにかく高い。中央値は70代半ばくらいだろうか? まあ、人気があるということは信頼にあたるジムなのかもしれない。気を取り直して、私はトレッドミルの前に設置してあるホワイトボードに名前を記入し、順番待ちをした。20分待ちでようやく空きが出て、走り始める。しばらく快調に進んでいくが、10分ほどで信じられないくらいの汗が全身から一気に噴き出してきた。「暑い! 室内なのに」 それでも我慢して走り続けていると、係員の方が近くに現れて、大きな声で我々に注意喚起をした。「本日、エアコンが壊れました。皆様におかれましては、水分補給を十分に行ってください」 。オープンしてから30年以上経つジムなので、設備の老朽化が激しいのだろう。ここもちょっと遠慮しておこうかな? ちなみに、風呂は広く快適だった。

③ ジェクサー

【特徴】家から一番近いターミナル駅。駅ビルの上階にある。JRが経営しているようだ。

知人が最寄り駅のジェクサーに最近入会して週6で通っている(主にサウナ利用)と嬉々として語っていたので、興味を持った。しかも会員からの紹介だと割引があるらしい。さっそくネット予約を入れた。

【結果】休日の夕方に利用した。たまたま体験入店無料の日だった。ラッキー! 受付をしていると、スタジオの出入口からフィットネスのクラスを終えた会員たちが群れをなして、こちらに向かってきた。けっこう混んでいる。トレッドミルの数は多く、いつ来ても待つことはなさそうだ。ただ気になることが一つある。なんか雰囲気が悪いのだ。Googleの口コミを見ると点数が低く、その多くが一部の常連客の傍若無人な振る舞いへの苦言だった。ここもちょっと違うかな。ちなみに、サウナはよかった。ただし、大浴場の洗い場に常連たちが陣取っていて、なんか独特の作法に沿って使わないと怒られそうな雰囲気を感じ、早々に退散した。

④ ゴールドジム
【特徴】ジェクサーがあるのと同じ駅、逆の出口の方にある。

アスリート御用達のイメージがある。40年来のプロレスファンである私にとって憧れの存在であると同時に、なかなか敷居が高く感じてしまう。それでも、この夏は今までの弱い自分を払拭したいのだ。一念発起して、体験入店の予約を入れた。

【結果】出勤前の午前中に訪れたが、なぜか予約が通っておらず待たされた。ネット予約時に入力した個人情報その他もろもろを再度入力させられて「もう帰ろうかな」と不快な気分になっていたところで、インストラクターのお兄さんに対応を引き継がれた。お兄さんはさっきの受付の人とは打って変わって感じがよく親切だった。着替えてトレーニングスペースに出ると、フロアがだいぶ空いている。お兄さんに聞くと「サラリーマンの会員が多いので、夕方以降に混みだす」とのこと。これはいいんじゃない? そう思った。しかし、ネックが一つだけあった。すれ違う会員の方々、みんな筋肉がパンパンで怖い。二の腕がドンキーコングのハンマーのように膨れ上がっている。ちょっとここは、私の使用用途には合わないようだ。他を探そう。

⑤ ライフコミュニティ
【特徴】隣の駅から徒歩3分くらい。学生時代に付き合っていた元カノの家の近所。

私の年老いた両親が何回か利用したことがあるとのこと。利用料金は1回330円。安い!さっそく行ってみよう。

【結果】一駅だけ電車に乗るよりも歩いた方が早いと判断して、家から15分ほど歩いて向かった。気温は36℃。炎天下。到着した時にはすでに全身汗だく。自らの判断ミスを恨んだ。さっさと走り終えてシャワーで汗を流そう。トレッドミルは2台しかなかったがジムは空いており、快適に利用できた。さあ、シャワー、シャワー。更衣室に向かった。あれ? シャワーがないぞ。さすがにこれでは夏場の利用は憚られる。どうりで空いているはずだ。季節を改めて出直そう。

健康センター
【特徴】通勤経路上にある。しかもちょうど移転したばかりで施設が新しい。

安くても、さすがにシャワーなしはキツい。気を取り直して、隣の区の施設に行くことにした。利用料金は1回400円。

【結果】平日20:00、会社帰りに寄った。まさにオープン当日で建物がピカピカ。21:00閉店なので急いで入場しよう。まずは受付で会員証を作る。なんと、ポイントカードまである。ジムの中は、まあまあ空いている。トレッドミルは待ち時間なく使える。ここも区の施設だから高齢者の利用が多いのかな? ならばこの時間は快適に使えそうだ。そしてシャワーもあった。残念なポイントは、シューズを預けられないことと駅から10分以上歩くことくらいだ。

■ 結論

6月のはじめにジムを探し始めて、すでに8月末を迎えた。日中は猛暑が続いているが朝晩はだいぶ過ごしやすくなり、もちろん汗だくにはなるが屋外を走れるようになった。もうすぐ、夏が終わる…… さらば、夏。なので、今年はジム入会をあきらめることにした。一言でまとめると「時間切れ」だ。

しかし、ランナー向きのちょうどいいジムってなかなか見つからないということを認識できたのは収穫かもしれない。ランステとか銭湯と組み合わせたジムがあれば絶対に使うし、けっこう流行るのではないだろうか? などと妄想しつつ、目前に迫った大会のシーズンに向けて走り込みをはじめるのであった。


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