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アベ社長日記#22:退任まであと2日(最終話)

このシリーズは第1次安倍内閣当時の「首相動静」を基にしたフィクションです。

アベ社長日記#22:退任まであと2日

新社長はフグタさん(2007年9月24日・月)

 9月23日、わが社の新社長が決まった。アソさんではなくフグタさんだ。お父さんも社長だったから、親子二代ということになる。
 僕はと言えば、親子二代とも・・、いや、この話はよそう。

 昨日、見舞いに来てくれたヨサコイさんから、「悪いけど、最後の仕事お願いね」と言われている。イントラネットの社内報で、社長辞任の弁を動画配信したいとのこと。夕方5時からKO病院で撮影。

 「この一か月間、体調は悪化し続け、自らの意志を貫くための基礎となる体力に限界を感じるに至った。もはや社長としての責任を全うし続けられないと決断し、辞任表明に至った。多大な迷惑をかけたことを改めて深くおわびします・・」とかなんとか適当にしゃべった・・。どっちにせよ、別に僕が何を言ったところで、どうなるものでもない。
 明日25日は一応会社に出て、取締役会で正式に辞表を出せばお役御免で、26日からはフグタ新社長体制となる。僕はしばらくは静養ということにしてもらうつもり。

 6時過ぎ、そのフグタさんが奥さんと一緒に、わざわざお見舞いに来てくれた。ややうさん臭かったが社長になったのがうれしかったのだろうと思う。
病室に着替えを持ってきていた妻が、フグタさんの奥さんと楽しそうに話しているのが聞こえた。
 「富ヶ谷の家に帰ったら、少し遅くなったけど、主人の誕生日のお祝いをしようと思ってるの♪」と妻が言う。家の冷蔵庫の野菜室にシャンパンが隠してあることを、僕は知っている。誕生日は9月21日、この年は病院でケーキを食べた。 (了)


◎『アベ社長日記』は今回が最終話です。22回にわたる連載にお付き合いいただきありがとうございました。
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注:
2007年9月26日、安倍首相に代わり福田康夫氏が第91代内閣総理大臣に就任した。福田首相の父である福田赳夫氏は1976年に第67代内閣総理大臣を務めており、日本憲政史上初の親子での総理大臣就任となった。
一方安倍首相の父、安倍晋太郎氏は内閣官房長官、通産大臣、外務大臣などを歴任し、「ポスト竹下」とも言われ総理候補と目された有力政治家であった。しかし1989年にがんにより長期入院を余儀なくされ、その後1991年に死去した(67歳没)。
※『アベ社長日記#22』は、ブログ『tanpopost』に2007年9月25日 付けで掲載したものです。


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