見出し画像

SF小説-民営自衛隊㈱ #5:海外派遣専門会社

Chapter5:海外派遣専門会社


 民営自衛隊の海外派遣を専門に行う別会社、『JDAワールドワイド(略称:JDAW)』を設立する。自民調がまとめた自衛隊分割案、いわゆる『NTT方式』の最後に記された事項である。
 従来の自衛隊(国営)では、国の自衛権解釈の問題があり、日本国内以外の活動には大幅な制限が加えられる。つまり国軍が出て行くことは、憲法の「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使」につながる可能性が高い。したがって従来の海外派兵では、最小限の武器の携行のみ認められていた。

 今回、自衛隊が民営化することで、状況は一気に変わる。民間企業のビジネスとしての海外展開である。憲法の制約を受けることはない。「国権が発動しない」からである。
 JDAWは、クライアントからの要請により、当該地域での軍事サービス事業を行うことを目的とする。クライアントは、国連(安保理)、日本国政府、海外当事国政府。さらに民間企業(例えば国際石油企業、電力会社、海運・航空会社など)からの依頼請負も想定する。

 具体的な活動は主に、派遣当該地域の治安維持、警備活動、重犯罪の防止である。
 例えばインドネシア政府・マレーシア政府などの要請によって、マラッカ海峡の治安維持・タンカー警備を行う。派遣装備は、旗艦となるヘリ空母及び、イージス艦、掃海艇、偵察用ヘリなど。必要であれば沿岸警備の陸上部隊も投入するが、実際には水際までで、陸上は現地警察・軍隊に任せることになろう。
 国連及び日本国政府の要請によって、中東地域で国連軍の一員としての業務に就くことも視野に入れる。国の集団的自衛権行使ではないので、活動範囲が制限されることはない。あくまでビジネスなのである。
 装備については、JDAWが自前で揃えるのは合理的でない。すべてJDA東日本・西日本からのリースとする。現場人員についても同様、各事案ごとにJDAからの出向派遣で対応する。

 もちろん国際的な災害救援活動も営業重点項目の一つである。将来的には太平洋上、沖ノ鳥島周辺に災害救助専用基地を置き、超音速救難機(TB1)、多目的救難援助機(TB2)及び有人警戒衛星(TB5)などによるスピーディな救難活動を図りたい(いわゆるサンダーバード計画である)。

>>第6話へつづく
<<第4話に戻る
<<第1話からお読みになりたい方はこちらへ

※この記事は2005年5月19日にブログ『tanpopost』に掲載したものです。
内容はフィクション(SF)であり、実在の団体・人物等とはまったく関係ありません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?