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SF小説-民営自衛隊㈱ #6:法案整備

Chapter6:法案整備


 自民調(自衛隊の民営化に関する調査委員会)により自衛隊民営化の骨格は固まりつつあったが、もう一つ厄介なことは法案整備である。内閣法制総務局は大泉総理から直の指示を受けた。
 「急がんこともないんやけど・・」 こういう大阪弁はむずかしい。
 「急かすようで悪いなあ」「ま、よろしゅう頼むわ」 要は「早よせえよ!」ということだった。

 現状の自衛隊は『自衛隊法』という法律に基づいて存在している。ちなみに『自衛隊法』をはじめ、すべての法律は憲法に基づいて存在する。すなわち「憲法に違反する法律はない」のである。したがって「自衛隊は合憲である」と、こういう理屈となる。
 しかし、この『自衛隊法』。元々1954年に制定された(昭和29年6月9日・法律第165号) もので、時代の変化に伴い、あっちをさわりこっちをさわりで、かなりガタが来ている。自衛隊法自体を一旦チャラにして、完全に新法に切り替えたいがそんな事をしていると時間がかかりすぎる。
 多少無理はあるが、現行の「自衛隊法改正」の線で作業にかかることとなった。
 まず現行の第1章総則第1条(目的)、
 「この法律は、自衛隊の任務、自衛隊の部隊の組織及び編成、自衛隊の行動及び権限、隊員の身分取扱等を定めることを目的とする」 から見直しを始める。

◎自衛隊法改正案
 第1条(目的):この法律は、商法で定める株式会社としての自衛隊(以下、自衛隊株式会社という)の業務、組織、運営及び自衛隊株式会社の権限、社員の身分取り扱い等を定めることを目的とする。
 第2条(定義): 略
 第3条(業務):自衛隊株式会社は、地球の平和を守り、かつ安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対し、当該国・地域を防衛することを主たる業務とし、必要に応じ災害救難活動及び、公共の秩序の維持等に当るものとする。
 第4条(自衛隊の旗)、第5条(表彰)、第6条(礼式)・・以下、略。

 改正の主旨は、自衛隊が民間機関であること、日本国以外での(地球上すべての地域、宇宙を含む)業務ができることを明示することである。
 改正(というより、結果的には新法作成に近い労力がかかった)は、業務の範囲、指揮監督権、社員の身分保障、罰則規定など多岐にわたる。さらに将来の株式公開をにらみ、外資出資の制限、TOBの排除なども成文化するか検討の必要があった。

>>第7話へつづく
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※この記事は2005年5月19日にブログ『tanpopost』に掲載したものです。
内容はフィクション(SF)であり、実在の団体・人物等とはまったく関係ありません。

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