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【推薦図書】『日蝕』など五冊

 私の趣味のひとつは読書だ。生涯に幾冊の素晴らしい本に出会えるのか分からないが、なるべく多くに触れてみたいと思う。
 noteやyoutube等、様々な媒体を通して、本をおすすめしてくださる方々は多い。それらは私の読書に大いに役立っている。本稿も誰かのお役に立てたらと思い執筆した。
 ただし、本稿はネタバレがあるためご注意ねがいたい。

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 百田尚樹『野良犬の値段』幻冬舎

 理不尽に社会からはじき出された六人の気高きホームレスは、正義の鉄槌を下すべく復讐劇を実行する。自らを人質とする劇場型犯罪だ。人質として価値のない”野良犬”に数億円の身代金を払う企業はあるのか。”野良犬の命”と”金”と”社会的評価”のどれを優先するのか。日頃、命は尊いと善人面をするマスコミや新聞社等の真なる社会的評価を問う。最後、”野良犬”たちは野垂れ死ぬことなく”英雄”となり得るのか!


 山田風太郎『甲賀忍法帖』講談社

 家康は跡継ぎをどうすべきか悩む。愚鈍なる長男か、利発なる次男か。どちらを選んでも両派閥の争いは避けられない。争えば築き上げてきたものすべてが、内部から瓦解してしまうだろう。そこで、永らく平和協定を結んでいた「伊賀」と「甲賀」を争わせ、伊賀が勝てば長男、甲賀が勝てば次男と決めたのだ。
 「伊賀」と「甲賀」、精鋭忍者十名対十名の死闘である。凄惨極まりない闘いの勝者はいかに!

 本作は漫画にもなっており『バジリスク』というタイトルらしい。ご存知ない方もいるかもしれないが、漫画『グラップラー刃牙』『ジョジョの奇妙な冒険』『NARUTO』等が好きなかたは、小説である本作も間違いなく楽しめるはずだ。強者VS強者のぶつかり合いである。


 平野啓一郎『日蝕』新潮社

 中世、パリで神学を学ぶひとりの学生が、ヘルメス文書をもとめてフィレンツェへ旅立つ。その道中のとある村が本作の舞台である。奇形の男や聾唖の少年、錬金術師など奇妙な人物ばかりの不気味な村だ。そして、その学生は錬金術の秘密に深入りし過ぎたようだ。両性具有者は魔女として焚刑に処されるが、そのときに起こる奇蹟の数々!
 不気味で奇妙な世界観を独特な文章表現で綴る傑作である。衒学的な文章表現に賛否両論あるそうだが、私は大いに感銘をうけた。

 他『一月物語』や長編の『葬送』もおすすめだ。


 萩原浩『明日の記憶』光文社

 主人公の佐伯は、五十の若さでアルツハイマーと診断された。広告代理店で働く彼は、営業部長としての勤めを全うできなくなる。徐々にむしばまれていく機能。離れていく同僚。病気をうけいれていくことの困難。そして、若年性アルツハイマーは発症から数年で亡くなってしまう不治の病だ。残された命は少ない。妻や娘と過ごせる時間はあとどれくらいか。
 しかし、佐伯の周囲はいつも愛にあふれていた。彼の生涯は永遠に失われない”記憶”として歴史に刻まれたのだ。当事者でなければわかりえないことを多く教えてくれる感動の長編。


 葉室麟『蜩ノ記』祥伝社

 豊後羽根藩の藩士・檀野庄三郎は、ある村に幽閉されている元郡奉行の戸田秋谷の監視役を命じられる。戸田秋谷は千代藩主側室との不義密通の罪により”十年後”に切腹と決められている。その十年は家譜の編纂に要する時間―最後の仕事をやり遂げてから死ぬことを命じられているのだ。
 監視役である檀野庄三郎は、戸田秋谷と共に過ごすうちに、本当に罪を犯したのか疑問をもつようになる。それほどの人格者なのだ。しかし、陰謀だったとわかったところで覆すことはできない。
 残酷にも、切腹の日は迫る。戸田秋谷と氏を取り巻く人々の清く美しい生き方に心打たれる長編。

 羽根藩シリーズは本作に続き、『潮鳴り』『春雷』『秋霜』『草笛物語』と全五作である。

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