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古民家と家鳴り

 慣れない家というのは、夜一人で眠るのは怖い。一人で眠るには広く、古い佇まいの古民家となれば尚更だ。

 引っ越した初日。彼と一緒に寝ていたが、トイレに行きたくて目が覚めたときには、怖くてスマホをトイレに持ち込む始末。さらには、不気味な音が鳴っている事に気づく。1日目は気のせいか風のせいと思っていたのだが、2日目もまるで誰かが廊下を歩いているように「ミシッ」とか「バキッ」とか鳴っている……。こわっ、やっぱり幽霊屋敷だったの?いざというときのために購入にしておいたお経のCDの出番か?でもとにかく今はひたすら眠りに落ちるべきと、その日は必死になって入眠。

 翌朝、お経のCDで家を浄化しながら、家が鳴る現象について調べてみた。「家鳴り」というもので木材建築の家では珍しくない現象らしい。怪奇現象と恐れていたことは、Google先生によりあっさり解決。

 「家鳴り」は、木材の調湿作用(湿度が高いときには水分を吸収し、乾燥しているときには水分を放出すること)により、木材が軋むことだそうで、木造建築、特に無垢素材の家や冬場にはよくあることだそう。

 相変わらず家は鳴っているけど、原因がわかってしまえば何てことはない? いや、一度はそうは思ったけど、初めて一人で眠る日があり、やっぱり少し怖かった。強行手段で電気をつけたまま眠った。次の日は、部屋の電気を消し、枕元の電気だけつけて眠った。その次に一人で眠る日に、ようやく部屋の電気を消して眠れた。

 ちなみに、家鳴りはもちろん、現代にはじまったことではない。そして、昔は、妖怪や鬼の仕業だと考えられていたらしく、江戸時代中期の画家・鳥山石燕(とりやませきえん)の『画図百鬼夜行』にも「家鳴り」という妖怪が描かれており、家の鳴る音に慄いていたのは現代人だけではないのだった。

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