※この記事はフィクションであり、実在するいかなる人物、出来事とは一切関係ありません。

うぃー！おめ久しぶりだな！
車？あぁ今度子ども産まれっからカミさんに頼まれて買ったんだアルファード！いいべ？
てかわりぃタバコ一本くんね？

マイルドヤンキーってより、感じのいい土建屋の兄ちゃんだなコレ。
どうも田沼ハルです。
今日は皆さんの心の中に田舎のマイルドヤンキーを宿すお手伝いをしていきたいと思います。
セブンスターでも吸いながらご覧ください。

爆誕

あなたは地方の片田舎、電車は1〜2時間に1本来るのどかな町の病院で産声を上げます。

名前は龍也(りゅうや)です。(辰年産まれなので)

幼少期

あなたはシングルマザーの恵(めぐみ、22歳)に愛情深く育てられ、大麻みたいな形の芳香剤をぶら下げたbBに乗せられて保育園に通います。
元気いっぱいのあなたは先生に可愛がられ、仲のいい友達も出来ました。
お母さんは毎日近所のスーパーで頑張って働いています。
迎えにきてくれるのは友達が殆ど帰った夜になってからです。
お母さんは先生と親しげに会話した後、あなたを車に乗せて町の公営団地へ帰ります。

小学校

小学生になったあなたは、同じ団地に住む友達の翔くんと仲良くなります。翔くんは暴れん坊で何をしでかすかわからない子でしたが、とにかく愉快な奴です。
翔くんのお兄さんは髪が真っ赤で少しコワモテでしたが、良い人です。
よく翔くんと一緒に、彼のゴリゴリに改造した型落ちセダンに乗せて貰えました。
夜には海辺でドリフトをして貰えました。
一方勉強はからっきしダメで、宿題をやらないのでお母さんや先生によく怒られました。

中学校

中学生になったあなたは、部活(テニス部)の帰り道、後ろから女の子に声をかけられます。
振り向くと幼馴染の瑠夏(るか)でした。彼女は小さい頃からよく遊んでいた親友です。最近あなたは彼女に対し、友情とは少し違う気持ちが芽生えつつあるのを自覚していました。
2人はよく下校ルートを外れ、本当は駄目なのですがマックスバリューの中に入っているハンバーガー屋に寄って、くだらない話で盛り上がりました。
しかしそのマックスバリューはお母さんの職場だったので、たまに見つかって2人して叱られる事もありました。そんな時は大麻みたいな形の芳香剤がぶら下がったbBに乗せられて、家まで送ってもらいました。
一方大親友の翔くんは、嫌いな先生の車を殴って凹ませ、次の日全校集会が開かれました。
翔くんはしらばっくれていたので結局犯人は見つかりませんでした。

高校

あなたは翔と共に町の公立高校の定時制に入学し、昼はコンビニでバイトを始めました。
中3の夏に付き合い始めた瑠夏は別の高校に進学した為、以前ほどは一緒にいる事が出来なくなりました。
それでも休日は電車に1時間揺られ、隣町のイオンモールまでデートに出かけます。

一方高校では新しい友達が出来ます。
響(ひびき)という、少しオタク気質な男です。
彼は普段は物静かなようでいて、意外と話せば面白い事を言うのですぐ仲良くなりました。
あなたは彼にスマホのFPSゲームを勧められ、よく一緒にゲームをして遊びました。
当然翔も一緒です。彼はチートを使って荒らし行為をした為すぐBANされます。
あと翔はこの頃学校にタバコを持ってきて3ヶ月くらい停学処分を食らっていました。
停学中、彼は型落ちセダンドリフトのお兄さんの影響でギターを始めましたが、速攻で飽きて辞めました。

大人になる

高校を卒業したあなたは、翔のお兄さんの職場でもある地元の土建屋で働き始めます。
彼女の瑠夏はなんと大学に進学し、東京に行く事になりました。
遠距離恋愛は寂しいものでしたが、彼女にいつでも会いに行けるよう、あなたは真面目に働きます。
免許をとったあなたは母のbBを譲り受け、バチバチに車高を下げて乗り回すようになりました。
(ちなみに母は新たに中古のNBOXを買いました。)
翔はいつの間にやら大型の免許を取って長距離ドライバーに、高校で仲良くなった響は隣町の会社に就職して引っ越して行きました。

職場の先輩達はみんなガサツな野郎共でしたが、あなたを弟のように可愛がってくれました。
しかしそれでもあなたは、どこか寂しい思いをしながら日々を過ごす事になります。

突然

ある朝目が覚めると、型落ちセダンの翔の兄さんからLINEの通知が届いていました。
そこには一言

「翔が死んだ」

とだけ。

あなたはあまりにも現実感の無い出来事にしばし呆然とし、それでもいつも通り、平静を装って職場に出向きました。
職場に翔の兄さんはいませんでした。
別の先輩に事情を聞くと、翔は昨晩高速で事故に巻き込まれ亡くなったというのです。
翔とは久々に休みが合うので、週末に地元で遊ぼうと約束したばかりです。
あなたは人目も気にせず、その場に泣き崩れました。

それから

数年の月日が流れ、あなたは翔の墓参りにやってきました。彼女の瑠夏も一緒です。
彼女は翔の死以来ずっと沈んでいたあなたを見かねて、大学を辞めてまで地元に戻ってきていました。
そして今日、大親友の翔に結婚を報告する為、ここへやって来たのです。

あなたは線香の代わりにセブンスターに火をつけ、
持ってきたワンカートンと一緒に墓前に供えました。
瑠夏のお腹の中には、小さな命が宿っていました。

働いて貯めたお金で買った中古のアルファード。
あなたは帰り道にコンビニへ寄りました。
かつてあなたが働き、何を買うでも無いのによく冷やかしに来る翔を適当にあしらっていたコンビニです。車を降りると、軒先で見覚えのある人物がタバコを吸っていました。
小綺麗なスーツに身を包み、ぱっと見いかにも仕事の出来る営業マンという見た目のその男。
数年間に翔の葬式で会って以来、雰囲気こそ変わっていましたが間違いなく、昔は一緒にゲームをして遊んでいた響でした。
あなたは助手席の瑠夏に「わりぃ！ちょっと待っててな！」と声をかけ、彼の元に駆け寄ります。

「うぃー！おめ久しぶりだな！
車？あぁ今度子ども産まれっからカミさんに頼まれて買ったんだアルファード！いいべ？
てかわりぃタバコ一本くんね？」

やっぱマイルドヤンキーってより、マジで感じのいい土建屋の兄ちゃんだなコレ。

マイルドヤンキーの解像度を上げる為、もっと勉強してリベンジします。

龍也くんはこの後地元に家を建て、家族みんなで幸せに暮らします。恵はスナックのママとかやって欲しいな。

それでは皆さん、良いマイルドヤンキーライフをお過ごし下さいませ。