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瀬尾まいこ 幸福な食卓 を読んで

みなさん、こんにちは。瀬尾まいこさんの「幸福な食卓」について、感想を書いていきます。

あらすじです


父を辞めると宣言した父、家出中なのに、料理を届けに来る母、元天才児の兄。主人公である佐和子がいる。それぞれの思いを抱えながら「家族という繋がりとは何か」と考えさせられるストーリーです。父親の役割を辞めた父は、塾に通い大学に行こうと踏ん張る。有名な大学に通う元天才児の兄が、突然路線を変更し、農業になると言い出す。そして、佐和子はある男の子といい感じになる。といった様々なエピソードが豊富で、家庭は崩壊寸前なのに、まったく暗く書かれていないです。思わず、クスっと笑えるシーンもあり、少しシリアスな展開になったり、感情の遊園地のような気分にさせてくれると思います。

感想です


この本を読んで、私が当時25歳の時を思い出しました。

アトピー性皮膚炎で赤くなった顔、傷だらけの身体・・・


自分に自信が持てない。「本当の原因は他人や自分への愛が足りないのではないか」と思考するのはいつも、冷静になった時でした。


アトピー性皮膚炎で毎日、私は痒みと痛みと闘いの日々が続いていました。頭の中は痒みや痛みのことで、一杯になり、瞳に映る出来事は心や皮膚に対しての刺激が強すぎて、私は目を背けていました。その影響からか、心や身体に溜まったものを剝がそうとするので、掻くことによって、スッキリしていました。言わば、薬物中毒のようなメカニズムに近かったと思います。「これを使えば治るよ」という声がして「よし」と振り向いては試したが、上手くいかない日々が続く一方でした。

「それでは駄目だ」

そう感じた私は、様々な本を手にして、アトピー性皮膚や社会に立ち向かっていきました。

コミュニケーションが上手くいく方法、雑談で困らない方法、自分を魅力的に引き出す方法

などが書かれている自己啓発本・・・、つまり身体ではなく、中身を変える。という思いを胸に、それらを読み漁っていました。仕事が終わった後や休日。友人も少なく、恋人もいないので、出かけることがなく、毎日本を読む日々を送ります。やがて頭の中で、シュミレーションをして「これで変わるんだ」と期待しましたが、現実は厳しいもので、上手くいきませんでした。

試行錯誤を繰り返して、闇雲に走っていた頃、運命的な出逢いをしました。人ではなく、本です。

それが、瀬尾まいこさんの「幸福な食卓」という本でした。

本を読み進めていくうち、ストーリーに登場する「ある人物」に親近感が湧きました。佐和子の兄である直です。

直は元天才児だと、周りの人は皆、口を揃えて言います。子どもの頃から何でも完璧にこなしていましたが、年を取るのにつれて、「ずれ」が出始めていきます。溜まった「ずれ」を元に戻そうと、「真剣さを捨てて、寿命を伸ばす」という決心をするが、それが裏目に出てしまい、直は「いけ好かない青年」になっていました。

それでも、生きることに誰よりも必死で闇雲のなかを進むその姿に、当時アトピー性皮膚の酷い状態の闘病中、私の胸の中に光を与えてくれた、数々読んだ小説の中の一人です。


直と同じく、私自身も痒みと痛みを減らすことが裏目に出て、普段の行動や考え方が「いけ好かない自分」になっていました。気がつくと、不完全な大人になっており、周りから取り残された自分がいました。時には、ぬくもりや愛情に付け込まれ、マルチ商法などに騙されたことも、ありました。孤独に陥ったり、自己価値が無くなると「私のためにやってくれるんだ」という安心感が生まれて、まんまと騙されたんだと、今になって思います。

やがて・・・

アトピー性皮膚炎を治すためなら、すべてを捧げよう

そう決意したが、結果、色々なものを失いました。


そのずれがどんどん積もり、元に戻せなくなったところ、本の中で生きている、直という人物に出逢いました。本の中にある文字たちが作り出した大きな塊によって、包まれた私は・・・

悲しんでいる暇はない。今経験していることは、何か意味があるのかもしれない

と考え始め、生きる希望が湧いてきました。

少しずつですが、自分を見つめ直しながら日々過ごした結果、様々な人にも出逢い、アトピー性皮膚炎も少しマシになりました。四年前よりも心や身体に余裕ができた気がします。


他人に嫉妬する。羨ましい。帰っても、独りぼっち。悲しい自分を嘆く。

そうなる前に、本屋や図書館に行ってはいかがでしょうか。

本は人と違って、常に自分の隣にいて、いつでも、接することができます。様々な本を読んでいくたびに「色々な世界を体験でき、知識や経験を積むことができる」という優れものです。そして、周りに流されない肝が備わるとともに生きるための教訓として、活かされると思います。

本の中に書かれている、一つ一つの文字が美しい造形や温かい風景として作られ、それが私たちの瞳の水面へ映し出されることで、誰かの背中を押したり、励ましたり、癒していくでしょう。

与えられた試練を乗り越えるために、生きていくことは大変です。それでも・・・

「試練」という壁をよじ登らなければなりません。

膝を抱える時間を減らし、今私たちができることをしていく。乗り越えた先に、運命を変える出逢いが待っているかもしれません。


読んで頂き、ありがとうございました。

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